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1882
桜
一般的なことですが、年をとってくると興味や関心が、ことごとく質や量ともに減少してきます。

まぁそれは必ずしも年齢的なことではなく、性格や人生観など様々な影響で左右されているのかもしれませんが、年齢は大きな要素です。

年をとると守りに入り新しいことにチャレンジしなくなるというのはよく言われることですが、それ以上に以前は関心や興味があったことでも、年齢を重ねていくにつれ、その関心度が一気に下がってしまうということをいままさに経験しています。

具体的には、以前なら政治や選挙については、人並み以上に高い関心がありましたが、今はまったく興味はなくなり、テレビで女帝に成り上がったかのように振る舞う政治家や、顔中シミとアザだらけの強欲の昭和オヤジというイメージの政治家、口先三寸で軽薄そうな政治家が次々出てくるのは見ているだけで鬱陶しく感じ、そういうテレビはすぐ消し、新聞は閉じてしまうようになりました。

もう政治にはなにも期待していないし、選挙権は行使するとしても、その結果や政策になんの興味も関心もなくなりました。

また印象操作と思えそうな北の将軍様とそれを称えるハイテンションなニュース映像と、繰り返し放送される共産国の派手な軍事パレード、寒い国で何十万人の戦死者を出しても好き勝手に軍事活動を続ける独裁者、自分の発言以外はすべてフェイクと決めつけ、それでいて自分の発言はデタラメと朝令暮改ばかりという愚かな大国のリーダーなど、それを詳しく知っても今の私には意味も興味もありません。

よく悩み相談なんかで、「自分の力でどうにもできないことを心配したり、クヨクヨ嘆いても仕方がない、無駄なだけ」というアドバイスが語られますが、確かにその通りで、日本政治や国際関係など自分の力でどうにもできない以上、なにも真剣には考えないのが正しい選択でしょう。必死になって政治家の応援をしたりSNSで過激な政治や戦争の行方の議論をしているのを見るとアホばっかりと思ってしまいます。

オリンピックシーズン中は日本人選手の活躍はどこのチャンネルでも、やれ家族との絆や、怪我との戦い、恩師との美しい師弟関係など、(テレビ局がそう思っている)感動シーンを目一杯に盛り込み、何度も繰り返しやっているので、以前ならこの時期は仕方ないとあきらめて眺めていましたが、最近はアナウンサーや解説者、キャスター達の大げさでハイテンションなしゃべりに嫌気がさして、オリンピック中継やそのニュースが流れるたびにテレビは消してしまいます。

つまり政治やスポーツ中継(落ち着いた静かな中継をしてくれるNHK BSのMLB中継は除く)は、結果だけわかればそれでよく、テレビも新聞もネットも必要を感じなくなり、これも年をとって様々なことからの興味が失われていくひとつだなぁと思いました。

情報が少なく貴重だった昔はそうじゃなかったんだけどなぁと思いながら、残り少なくなってきた人生で、自分に残された時間の使い方の取捨選択に拍車がかかってきたということです。取捨に拍車というのは韻を踏んでます。

この2月は、衆議院選挙があり、さらに続けて冬季オリンピックがあり、もうテレビを付けるとギャハハと下品に笑っているだけのくだらない売れない芸人を集めたバラエティ番組以外はそればかりやっていて、結局テレビを付けるのは、朝昼晩のニュースと天気予報以外には、過去に録画しておいた趣味の番組と(政治やスポーツ以外の)ドキュメンタリー、古い映画ばかりになってしまいました。

50歳以下の人には「まだテレビや新聞なんか見ているの?」と笑われそうですが、60代以上の人にとってテレビと新聞は唯一(唯二)と言って良い(正確かどうかは別にして)世の中で起きている大切な情報源であり、難しい話をわかりやすく短時間で伝えてくれるもので、なくてはならないものです。えぇ昭和に多くの時間を費やし、それが習い性となっているものですから。

リタイアするとやることがなくなり精神的に不安定になったり、暇なだけに妻に様々な面倒をかけるようになって熟年離婚という事態に陥ったりという話は、小説やドラマでよく出てきますが、私に至っては今のところ「やることがない」「暇を持て余す」ということはまったくありません。

妻はパートで今でも働いているので、できるだけ負担を分散し、現役中はやってなっかった家事もできるだけやり、その他の時間は趣味に没頭したり、ブログを書いたり、30~40年前に仕事で毎日歩いていた街の変貌を見るためカメラを持って歩いたりして楽しんでいます。虚勢ではなく本当に日々の時間が足りません。

また、リタイアする前に「やりたいことリスト」を作っておきました。これが意外と効果を発揮します。

これは映画「最高の人生の見つけ方」(2007年)で出てきた「棺桶リスト(Bucket List)」を模したもので、死ぬまでにやりたいことをリスト化しておいたものです。これが日々の目標にもなるので、リタイア前に作っておくことをお勧めします。

映画では「スカイダイビングをする」とか、「ピラミッドを見る」とか、「マスタングでレースに出る」とか、かなりハードルの高い、しかも自分の楽しみを中心とした「やることリスト」でした。

しかし私の場合は、そうした旅行など楽しみに加え、質素で現実的なあれこれ、「買って使わなかった家電やツール、趣味のモノをヤフオクに出品し売る」とか、「家のリビングのフローリングをDIYで張り替える」「BSアンテナをDIYで交換する」「18箇所近くある網戸をDIYで張り替える」など、実用的な「やることリスト」で、リタイア時には全部で20ほどのリストを作り、すでに8つほどは完了しています。

また、サラリーマン定年リタイア組の先輩、勢古浩爾氏が書いた「定年後のリアル」は、定年後にはこうなるというリアルな実態がよくわかり、定年前、現役引退前に読んでおくといろいろと参考になります。

日課としているウォーキングは、元々歩くのが好きで、現役中は歩いているときが一番頭が冴える時間で、仕事のアイデアや工夫などは歩行中に思いついたことが多かったです。

現在のウォーキングは、元々人工股関節手術の後に始めたリハビリの延長で、健康のために歩いていますが、ブログのネタはウォーキング中に考えたり思いついたものがたくさんあります。

関心事が減少してくることは、年をとると自然なことなので、それを少しでも遅らせるために、好きなことを無理なく続けたり、「死ぬまでにやることリスト」をひとつずつ消していく楽しみを課したり、家族のために自分が何ができるかを考えて実行したり、身近なことで残りの余生を楽しむので良いのではないでしょうか。

【関連リンク】
1715 リタイア後3年経過した今の状況は
1447 ビジネス界からリタイアした
1394 あと半年に迫ったリタイア準備

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1881
カウントダウン(新潮文庫) 佐々木譲

カウントダウン
2008年から2009年にかけて雑誌連載されていた「二度死ぬ町」を加筆修正し、2010年に単行本、2013年に文庫化された長編小説です。

夕張市が財政破綻したのが2006年で、そうした厳しい北海道の自治体と地方政治を舞台として、やがて北海道に限らず、日本の多くの自治体が陥るであろう財政破綻について予言的な内容となっています。

選挙をテーマとした小説はよくあり、若い主人公が様々な老害や既得権益受益者からの妨害を受けながら奮闘していくというものばかりですが、この小説はそれだけでなく、夕張市を引き合いにした地方都市ならではの問題を突いています。

主人公は夕張市と双子市と言われている架空の地方都市で、亡くなった父親から引き継いだ司法書士事務所で働きながら1期目の市会議員として財政破綻の心配をしている男性。

二十年の長きにわたり取り巻きを増やし独裁的に振るまっている市長の6選を阻止すべく、主人公が立ち上がるわけですが、そのきっかけとなったのが、著名なやり手選挙コンサルタントが突然事務所に現れたことで、破綻寸前の市の市長になったところで、なにができるのか?と悩みながらも一歩踏み出す物語です。

過去の箱物行政や、市長の息子が経営する第三セクターのせいで、市町村の赤字が膨らみ、借金が財政の20%を超えると財政再生団体に指定され、国や都道府県の自治体から厳しい指導下におかれ、公共工事の停止や公共施設の廃止、住民税の増額、職員などの減数などがおこなわれます。

現在(2026年)までは夕張市だけですが、やがて日本の多くの市町村でこうした財政破綻が起きてくるのではないか?という問題提起でもありますが、夕張市の場合は、北海道庁とグルで負債を長く隠していたと言われていて、なかなか表面化しづらく住民にとっては寝耳に水ということもあります。

今後、高齢化した人口が大きく減少していく中で、老朽化した公共インフラの改修や、昔作った贅沢な公共施設の維持費など、すでに破綻が間近に見えている市町村もありそうで、そうしたところは、平成の大合併で生き残り策をとりましたが、今後はもしかすると都道府県単位での合併、つまり道州制などの導入も検討することになるかも知れません。

いずれにしても、北海道の地方都市の問題というだけでなく、未来の日本国全体の縮図として読むと背筋が凍るような思いがする小説です。

★★☆

著者別読書感想(佐々木譲)

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斬に処す 甲州遊侠伝(小学館文庫) 結城昌治

斬に処す
1971年に週刊アサヒ芸能で連載され、1972年に単行本、その後文庫化された時代小説です。

個人的には江戸時代の任侠ものや博徒についてはまったく詳しくないので、清水の次郎長などは名前ぐらいしか知らないので、その敵役で、この小説の主人公、黒駒勝蔵という博徒も当然知りませんでした。

通常は清水次郎長は強きをくじき弱きを助ける善玉の侠客で、敵対するヤクザの親分達は大悪人と相場が決まっていました。

しかし著者が調べたところ、幕末の混乱していた時代、要領よく立ち回った次郎長にうまくやられてしまったという図式で、侠客を名乗りつつ、やることは博打の元締めや時には役人の手先となって敵方のみならず仲間も平気で裏切りお縄にしたり謀殺しています。

結局は、どっちもどっちで、次郎長だけが善良とは言えず、逆に胡散臭そうではないか?という疑問から、この次郎長を敵役とした小説ができたそうです。

他にも、この主人公、黒駒勝蔵を称えるような小説があり、同様に考えて大悪人とされていた黒駒勝蔵の名誉回復に寄与した歴史家や作家は多そうです。

しかし結局は、江戸時代の博徒の時の殺人が、明治に変わった後に尾を引き、幕府を倒す新政府側の小隊長として功績を挙げながらも、タイトルにあるとおり「斬に処す」刑罰が下り、40歳の生涯を閉じます。

一方の敵役で要領の良い次郎長は、明治26年、当時としては長命の73歳で天寿を全うします。

★★☆

著者別読書感想(結城昌治)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

嫉妬/事件(ハヤカワepi文庫) アニー・エルノー

嫉妬/事件
著者は1940年生まれで元中高校の文学教員をしながら小説などを執筆してきたフランスの作家で、2022年にはノーベル文学賞が与えられています。

本著は、2000年と2004年にフランスで出版された中短編小説を合わせ、2004年に日本語翻訳版として出版されたものです。

他の作品を読んでいないので、他はどうなのかはわかりませんが、この収録2作品は、小説と言うより著者自身の実体験を元にした内容となっているそうです。

つまり、「嫉妬」は、40代の著者が主人公で、30代の愛人が別れを告げて別の女のところへ行ってしまったことをネチネチとストーカーじみた感情を吐露しつつ、相手の女性に嫉妬を募らせていくという話し。

もうひとつの「事件」は、著者がまだ学生だった時代、親元から離れ奔放な寮生活を送っていましたが、妊娠してしまいます。

しかし当時、1960年代のフランスでは中絶は違法で、本人も処置をした医者も罪に問われ懲役が科せられる重い犯罪でした。

そのため、闇で処置をしてくれるところを探し求めていくというかなりプライベートな話で、当時の日記をもとにして、当時の感情の動きや、心理描写が迫真に迫っています。

こうした自分のプライベートで、ナーバスな問題を作品のネタにする作家は時々見かけますが、ここまであけすけに、しかも創作ではなく当時の日記に書いていたことを元にしてリアル(っぽい)話の作品は初めてです。

性生活にオープンなフランス人独特の価値観などもあるでしょうけど、まず日本人作家(男女関わらず)は恥ずかしくてとても書けそうもない、つまり読むことはできそうもない新鮮な作品でした。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」(朝日新書) 野口悠紀雄

昔若いビジネスマンだった時代(1990年代)には「「超」整理法シリーズ」などの実務で役立つ書籍でお世話になっていました。すでに85歳と言うことですがお元気そうでなによりです。

本書は2023年に出版された新書です。タイトルからわかるとおり、この数十年間の日本経済と政治の低落ぶりを各種のデータを元にこれでもかと披露しこの先を憂慮しているってことです。

2023年の刊行なので、コロナ禍があけてまもない今から3年以上前の日本の話ですが、それでも急速な円安や物価高、実質賃金の低下、国際競争力の劣化、高度専門家の海外流出、中国との関係、弱体化を進める補助金ジャブジャブなど、予言的な話もあり、なかなかジワッと身にしみてきます。

特に著者が批判をしているのがアベノミクスで、これが今の貧困大国のすべての元凶だったというような内容になっています。

私は違いますが、アメリカのトランプ大統領同様、安倍元総理の熱狂的な支持者やファンは日本には多そうなので、この新書で多くの敵を作ってしまったことでしょう。

今年にはそのアベノミクスの後継者を自認している新総理が誕生したので、著者もヤレヤレといったところでしょう。もちろん批判するばかりではなく、ちゃんと経済学者としての処方箋も書いてあります。

★★☆

著者別読書感想(野口悠紀雄)

【関連リンク】
 2月後半の読書 幕末紀 宇和島銃士伝、大還暦 人生に年齢の「壁」はない、殺しのライン、この国のかたち(1)
 2月前半の読書 騙し絵の檻、日本のタブー3.0、日御子(上)(下)、この闇と光
 1月後半の読書 マーチ博士の四人の息子、美食探偵、嵐が丘、こちら横浜市港湾局みなと振興課です

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1880
奇跡のシンフォニー(原題:August Rush) 2007年 米
監督 カーステン・シェリダン 出演者 フレディ・ハイモア、ケリー・ラッセル

奇跡のシンフォニー
孤児院で暮らしていた少年が、音楽の才能に目覚め、施設を飛び出してニューヨークの町へ出てきます。

そこで路上ライブで日銭を稼いでいた男に見いだされ、名前をタイトルのオーガスト・ラッシュとして売り出されますが、あくまで路上ライブで得た金は巻き上げられるという貧しい生活です。

しかし少年の特異まれな才能に気がついたジュリアード音楽院の教官が、特待生として受け入れその才能を磨いていきます。

路上ライブを仕切っていた男との関係、そして、やがて彼が孤児院へ入ることとなった理由などが明らかになり、その親達との再会が、、、というまさにアメリカンドリームでハッピーエンドストーリーです。

不幸な生い立ちの少年が、周囲の良心的な大人達に助けられて成長していく物語は160年前にヴィクトル・ユーゴーによって書かれた「レ・ミゼラブル」(1862年)などに代表されるように数多く作られてきました。人はこうしたどん底からはい上がっていく成長物語が好きです。

実は少年の母親はプロのチェロ奏者で、子供は死産したと親から伝えられていて、父親のロックシンガーとはプロ演奏家として活躍する邪魔になるという判断で無理矢理に引き離されています。

そうした少年の両親にまつわる話しも合間にはいり、家族というテーマもうまく入り込んできます。

クライマックスでは、視聴者を泣かそう泣かそうという効果や場面がみえみえで、涙もろくなっている私でさえ涙は出てきませんでした。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

新解釈・三國志 2020年 映画「新解釈・三國志」製作委員会
監督 福田雄一 出演者 大泉洋、賀来賢人、橋本環奈

新解釈・三國志
日本のお隣中国の歴史なのに、日本人の多くがよく知っているのがこの三國志というある程度の事実を元ネタにした物語です。

紀元前70年頃、漢(後漢)が倒れ、中国全土がいくつかの勢力で支配されますが、その中でも大きな勢力を持つ魏、蜀、呉の三国が血で血を争う中国の戦国時代の物語です。

日本で有名になったきっかけは、娯楽が少なかった太平洋戦争中に新聞で連載され、その後出版された吉川英治著の「三国志」が大きな役割を果たしています。

その吉川英治著の「三国志」の元ネタとなっているのは、明時代に作られた歴史小説「三国志演義」です。

そうした真面目な歴史小説から大きく解釈を変え、かなりふざけた内容で、笑いを取るためにここまでするか?という内容で、歴史ファンが見ると、冒涜とみるか、軽薄なコメディとみるか微妙なところです。

ある意味監督(=脚本)がエンタメを自由勝手に表現したもので、その中に時代考証や当時の歴史に対して敬意をいだくようなものはなにもありません。

で、笑えたかな?と聞かれると、「まったく」と答えるしかないものでした。せっかく著名な俳優を多く使っているのに残念な結果です。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

スターゲイト(原題:Stargate) 1994年(日本公開1995年) 米・仏
監督 ローランド・エメリッヒ
出演者 カート・ラッセル、ジェームズ・スペイダー

スターゲイト
20世紀初頭にエジプトの砂漠で発見された巨大な輪っかの周囲に書かれていた文字を解読できなかったアメリカ政府は、ある異端の考古学者に頼むとそれを簡単に解読してしまい、それが古代に地球外生命が設置した地球と他の惑星を行き来できる星間移動装置であることが判明します。

そこで、その装置を使って別の惑星へ行き、調査をする特別チームが編成され、命をかけて実行に移します。

特別チームが到着した惑星では、地球と似た環境で、古代に地球から連れ去られた人類が奴隷として使役させられている古代エジプトのような砂漠の中の世界に到着します。

言葉がまったく通じない中、状況を把握し、その惑星を支配する全能の太陽神と、調査チームが対決することになります。

当時80億円以上の製作費をかけただけあり、大掛かりな撮影セットも立派な作品ですが、この時代はまだCGやVFXはほとんど使われなかった頃だけに、そのSF効果場面の苦労が偲ばれます。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE 2021年 『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』製作委員会
監督 木村ひさし 出演者 松本潤、香川照之、杉咲花

99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE
2016年からテレビドラマ化されている「99.9-刑事専門弁護士」の初の映画化です。

元々のテレビドラマのほうはまったく見ていないので、映画に出てくる主人公の過去のことや、テレビドラマから続いている他の出演者との関わり合いなどはわかりませんでしたが、それでもなんとなく楽しめるアイドル映画です。

ただ、出演者の演技がセリフを棒読みしているだけの素人っぽく、やたらテンションが高く、見ていて学芸会の延長のような気分になります。ま、元々そういうお茶の間ドラマなのでしょう。ツッコミどころは満載ですが、そういう見方をしちゃいけない映画なのでしょう。

ずっと無罪を主張しながらも死刑判決を受け収監中に死亡した元死刑囚のえん罪を証明するため、弁護士が探偵よろしく犯行の謎に挑んでいきます。

決して裕福そうではない若いピアニストの女性しか遺族がいない中で、どうやって誰がめちゃ高そうな弁護士費用を工面したのか謎です。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

閉ざされた森 (原題:Basic) 2003年 米
監督 ジョン・マクティアナン
出演者 ジョン・トラボルタ、コニー・ニールセン

閉ざされた森
監督は「プレデター」や「ダイハード」などのアクション映画の監督として有名なマクティアナンですが、この映画は、アクション映画ではなく、黒澤明監督の「羅城門」(原作は芥川龍之介の「藪の中」)のインスパイアー的なサスペンス映画です。

パナマにあるアメリカ軍のレンジャー部隊が訓練のためにジャングルにヘリコプターから降下しますが、その訓練中に起きた仲間同士の殺し合いが発覚し、救出された2名の隊員にどうしてそうなったのかを別々に尋問をおこないますが、2名の話しがまったくかみ合わず、なにかを隠していると謎が広がっていきます。

その尋問中に救出された1名が毒殺され、新たにこの問題に関わっていた医師などが明らかになっていきます。

とにかく途中で何が何かよくわからなくなるほどに、謎が次々と出てきて、ストーリーが何度も反転し、ややこしいことこの上ないです。

見る人には優しくない映画で、脚本の問題なのでしょうけど、ここまでひっくり返さなくても良いのにと思ってしまいますが、作った人達は満足しているのでしょう。

戦闘場面は、雨降りの夜間で、雷鳴が光ったときだけ見えるという映像効果で、これも鬱陶しいこと甚だしいです。

トラボルタ主演のノー天気なアイドル映画だ!と言ってしまえばそうなんでしょうけど、かなり話しには無理がありそうな内容です。

★☆☆

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キャメラを止めるな!(原題:Coupez!) 2022年 仏
監督 ミシェル・アザナヴィシウス 出演者 ロマン・デュリス、ベレニス・ベジョ

キャメラを止めるな
2017年の日本映画「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)のリメイク作品です。原題のタイトル「Coupez!」は撮影の区切りを付ける「カット!」という意味です。

30分間のカットなしの長回しでゾンビ映画を撮影することになり、出演者が2名交通事故で来れなくなったり、役者の名前をすべて日本人名で呼び合うこととなったり、様々なアクシデントに見舞われながら生中継で30分間のゾンビ映画を撮りきるというストーリーです。

最初に流れる30分間の映像がそのライブ映像で、謎解きとして、後半でその撮影の模様が映し出されるのはオリジナルと基本同じです。

日本のオリジナル版で出演していた竹原芳子が、本作にはうるさ型の日本のスポンサー役として出演しているのが笑えます。

★☆☆

【関連リンク】
2025年11~12月に見た映画 サンセット大通り(1950年)、メカニック:ワールドミッション(2016年)、インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア(1994年)、マッド・シティ(1997年)、黒蜥蜴(1968)、1917 命をかけた伝令 (2019年)、アフタースクール(2008年)、ダンケルク(2017年)

2025年9~10月に見た映画 日の名残り(1993年)、コルドラへの道(1959年)、炎の人ゴッホ(1956年)、ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(2012年)、激動の昭和史 沖縄決戦(1971年)、127時間(2010年)

2025年7~8月に見た映画 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年)、コラテラル(2004年)、殿、利息でござる!(2016年)、めし(1951年)、ディファイアンス(2008年)、プレイス・イン・ザ・ハート(1984年)、地上より永遠に(1953年)、雪風 YUKIKAZE(2025年)


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1879
幕末紀 宇和島銃士伝(光文社文庫) 柴田哲孝

幕末紀
2021年に単行本、2023年に文庫化された、幕末の伊達宇和島藩で藩主の密偵として活躍した著者自身の高祖父を主人公とした小説です。冒頭には「創作ではあるが登場人物は実在していて、挿話も事実を元にしている」ことが書かれています。

著者の小説は、主に現代のハードボイルドタッチの小説が多かったですが、今回初めて江戸時代の小説と言うことで、しかもそれが著者自身の家系に関係するものというのが新鮮です。

伊達家が当主というと独眼竜伊達政宗の仙台藩が思い浮かびますが、正宗の側室の子で後を継げなかった伊達の庶子伊達秀宗が大坂冬の陣で手柄を上げ、徳川家康に宇和島藩を与えられ、その後明治の廃藩置県まで伊達家の代々世継ぎが四国宇和島を治めていたということです。

著者の先祖は、元々仙台の伊達家の弓組の重鎮でしたが、伊達秀宗が宇和島へ移ったときにともに移った武士でした。弓組はやがて幕末に近づき鉄砲組(部隊)に変化していきます。

幕末の頃は薩摩藩第11代藩主島津斉彬や土佐藩第15代藩主山内豊信(容堂)とともに幕末の四賢侯と言われていた伊達宗城が宇和島藩主で、著者の高祖父柴田快太郎が仕えていた頃の話になります。

この柴田快太郎は当時の日記や手紙など文書が多く残されているものの謎多き人らしく、坂本龍馬が土佐藩を脱藩した時期とほぼ同じ頃に宇和島藩を脱藩したかと思えば、江戸や京都で起きた様々な出来事や情勢を、藩主へ報告していたことがわかっていて、さらに常識では考えられない柴田家の墓が藩主伊達家の墓所の一角に作られているなどの謎があります。

脱藩と言えば、敵前逃亡と同じで普通は藩に捕らえられれば打ち首は必至の重罪ですが、その後もなにかと宇和島藩のために尽くしていることから、表向きは脱藩ということにして、その実は藩命の密偵として江戸や京都で自由に動き回っていたのでは?ということです。

それにしても、桜田門外の変や、坂本龍馬の脱藩、寺田屋事件、池田屋事件、蛤御門の変など幕末の多くの事件や騒動が主人公の目前で次々と起こり、西郷隆盛や五代友厚、勝海舟、高杉晋作、近藤勇、グラバーなどとも交流があったとされる内容にはちょっとひいてしまいます。

幕末の有名人と言えば上記の人達、勢いのあった勢力は薩摩藩や長州藩、土佐藩などですが、四国の小藩だった宇和島藩の動きや、一歩引いた地方から見た幕末の激しい攻防戦はまた違った見方ができて面白いです。

さらに、黒船のペリーや長崎で手広く商売をしていたスコットランドの商人グラバーなどから、フリー・メイソンの支配という謎かけもあり、ダイナミックな時代小説となっています。

★★★

著者別読書感想(柴田哲孝)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

大還暦 人生に年齢の「壁」はない(ちくま新書) 島田裕巳

大還暦
著者は宗教学者として多くの著書を出版しています。この著書は2023年に出版されています。

本文の中にも何度も「詳しくは○○(著者の既刊書)に書いているが、…」という、この著書自体が過去の自著作品の広告にもなっているようです。新書の場合はそういうケースが多いですが、これほど何度も出てくると読んでいて不快です。

その代わりに、事件を起こす前のオウム真理教を擁護したり、教祖を自分の講演会に呼んで学生に紹介したことで勤めていた大学をクビになったりしたことも正直に本著で伝えていることは評価できます。ご本人にとってはさぞかし大きな出来事だったのでしょうけど、一般読者はそんな昔のことは興味も関心もないのでどうでも良いことですけど。

それはさておき、大還暦とは、還暦が60年(歳)ならその倍を生きたとして120年(歳)を大還暦と呼ぶ風習があり、それが最近の長寿命化で、現実的になってきていること、そういう社会変化で起きていることなどがわかりやすく説明されています。

例えば、戦後にお墓を建てることがブームになったものの、今は墓じまいが急増していることから、もうお墓が必要ではなくなってきている現状や、それに合わせたゼロ葬(火葬後に遺骨をもらわない)システムを著者自身が提案されたりしています。

いろいろツッコミどころはありますが、著者自身のお考えなのでそれは良いとして、本文の「はじめに」に、「幸若舞の敦盛にある人間五〇年、下天のうちを比ぶれば…」を引き合いに出して「この時代の認識では、人間の寿命は五〇年とされていたわけです」と書かれていますが、これは現代の解釈では当然の誤りです。人の寿命を現しているのではなく天界の1日が人間界の50年という意味です。

また、終盤には出雲大社の本殿西側(本殿の正面は南側)に遙拝所が設けられていることに対し「なぜ、西側からなのでしょうか。」と書いておきながら、その意味は書かれてなく意味不明な説明が後にダラダラ続けられています。

正解はお茶の間のクイズ番組でもよく出てきて簡単な問題で、著者も当然知っているのだと思いますが、「本殿の正面は南向きですが、御祭神の大国主大神は西向きに座っているから」です。

敦盛の中に出てくる「人間五〇年」の実際の意味や、なぜ出雲大社本殿の西側に遙拝所が設けられているかはちょっと調べれば誰でも簡単にわかることですが、著者はなぜかそれをしない、また編集者や校正者はなにも言わないのが不思議です。

そのような明らかな間違いや誤解が出てくると、この著者の話は話半分で読むのがよいのかなと思えてしまい残念に思うところです。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

殺しのライン(創元推理文庫) アンソニー・ホロヴィッツ

殺しのライン
探偵役の元刑事と、ワトソン的な作家のコンビ、「ホーソーン&ホロヴィッツ シリーズ」の3作目で、2021年に出版され、日本語訳版は2022年に出版されています。原題は「A Line to Kill」でほぼ直訳です。

シリーズ第1作目の「メインテーマは殺人」(2017年)はすでに読みましたが、第2作目の「その裁きは死」(2018年)はまだ読んでいません。

それぞれ事件は独立したものなので、どれから読んでも問題はないですが、徐々に寡黙なパートナー(元刑事)の謎がわかってくることなど、できれば最初から読んだ方が面白く読めそうです。

今回も難事件に二人で挑み、その事件を小説には向きそうもない面白みのない解決で終わりそうなところ、実はという展開です。

ストーリーは、有名な作家などを呼び、講演会など様々なイベントを開催する文芸フェスが英国領の離島「オルダニー島」でおこなわれることとなり、二人で参加することになります。

そうした本のPR活動にはまったく興味のないパートナーの元刑事は断るだろうと思っていたら、意外に乗り気なことに驚きます。

その理由は、元刑事が事故の責任をとって警察を退職するきっかけとなった元犯罪者がその島に住んでいるからです。

元犯罪者は護送中に階段から転落し大怪我をしましたが、刑事がその男を突き落としたのではないかと噂されています。

そうした一癖も二癖もある登場人物が10名ほどいる中で、隔離された離島で殺人事件が相次ぎ発生し、いったい誰がどういう方法で殺したのか?という犯人当て推理小説です。

ヒントはところどころに散りばめられていますが、そう簡単に真犯人にはたどり着けそうもありません。

私からのヒントとしては、こうした犯人当ての場合、もっとも犯人らしくない登場人物が一番怪しいということが常道だということです。

★★★

著者別読書感想(アンソニー・ホロヴィッツ)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

この国のかたち(1)(文春文庫) 司馬遼太郎

この国のかたち(1)
数多くの戦国時代から幕末、明治時代までの実在人物をモデルとした歴史小説を書いてきた著者が、そうした時代に培われてきた日本と日本人について思うところを書いたのが、このシリーズもののエッセイです。

これらのエッセイは雑誌文藝春秋に連載されていて、この(1)が単行本にまとめられたのが1990年、文庫版は1993年に出版されています。その後もこのエッセイは、第6巻(1996年)まで続きます。

著者はいわゆる戦中派の方で、陸軍の戦車部隊で満州国境付近で国境警備をしていましたが、戦況が悪化しつつある時に本土決戦のために内地に呼び戻された直後に、満州国境で日本軍がソ連軍にコテンパンにやられたノモンハン事件が起きます。偶然とは言え命拾いされています。

本当なら、そうした経験をもとにした太平洋戦争、中でも満州戦線などの小説を一番に書きそうなところ、著者の思いとしては敗戦の昭和20年までの昭和時代の日本人は狂っていたとしか思えない時代と解釈していて、その時代の話題や人物は著者の作品には登場してきません。

したがって著者の興味は、日本人の性格をよく表しているという戦国時代や江戸時代、明治時代の人物や事件に集中しています。

またその時代の日本人の肉体的精神的な根幹となっている古代中国や朝鮮半島などにも興味が広がっていった作家さんです。

ただ、雑誌連載という形式から、同じ話が何度も繰り返されることがよくあります。1冊にまとめたときには、そうした部分はカットするとか編集すれば良いのですが、そのまま載っているので、「またその話か・・・」というところがあり、そうしたところは出版社の編集の方でうまく処理してもらいたいものです。

著者の著書の多くに共通する深いテーマがわかる、この本のあとがきに書かれていた話を転載しておきます。

「終戦の放送をきいたあと、なんとおろかな国にうまれたことかとおもった。(むかしは、そうではなかったのではないか)と、おもったりした。むかしというのは、鎌倉のころや、室町、戦国のころのことである。やがて、ごくあたらしい江戸期や明治時代のことなども考えた。いくら考えても、昭和の軍人たちのように、国家そのものを賭けものにして賭場にほうりこむようなことをやったひとびとがいたようにはおもえなかった。」

★★☆

著者別読書感想(司馬遼太郎)

【関連リンク】
 2月前半の読書 騙し絵の檻、日本のタブー3.0、日御子(上)(下)、この闇と光
 1月後半の読書 マーチ博士の四人の息子、美食探偵、嵐が丘、こちら横浜市港湾局みなと振興課です
 1月前半の読書 貴族探偵、ナオミとカナコ、日本のこころ、阿修羅のごとく

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人工股関節私が初めて人工股関節の置換手術をおこなったのは今から10年前の2016年(右側)と、反対の右側がそれから1年後の2017年です。

この人工股関節置換手術法とインプラント(人工部品)は日進月歩で進んでいます。

元々、人工股関節の先進国だったアメリカでは、人工股関節置換手術が年間約20万件を超えていると言われています。日本国内では5万件ほどなので、人口対比で見ると10倍以上の大きな差があります。

アメリカでこれほど人工股関節手術が多い理由は、合理的な考え方で、痛くなると様々な行動が制限されることになるので、年齢やインプラントの耐久性のことは考えず、我慢せずに早々に手術をおこなう(勧められる)ことが多いからです。

日本では、インプラントの耐久性と寿命を考えて、60代以上に勧められることが多いです。つまり働き盛りの40代や50代で股関節痛が発症しても、なかなか医師は手術を勧めてくれません。痛いかもしれないが保存療法で我慢しろってことです。

確かに40代や50代で手術をすれば、骨や筋肉がもろく弱っている70代や80代で再置換手術となるケースが多くなり、その手術やリハビリが難しくなってくるので、医者の言うこともある程度は理解できます。

しかし、せっかく働き盛りの時で、子育て中が多い40代や50代で、歩くのさえ苦痛になる痛みを抱えながら、良い仕事ができるはずもないし、家族と一緒に旅行したり、外で遊んだりすることができなくなるのはもったいないことです。

まれに、「人工股関節を入れると様々な問題があって歩くのもつらいんじゃないの?」と思っている人がいますが、一例で言えば、プロテニスプレーヤーの英国のマレー選手は、人工股関節手術を受けた後、ワールドツアーに復帰し、東京オリンピックにも英国代表としてプレイしています。

同様に、人工股関節を入れたプロゴルフ選手や、フィギュアスケーター、市民ランナーなども多くいます。最近では、長嶋一茂氏が2024年に人工股関節を入れて、その後極真空手に復帰し、今年2026年には大会に出場する予定です。

そう言えば、高市総理も関節リウマチを発症し人工股関節を入れている人ですが、横須賀の空母を表敬訪問したときアメリカ大統領の隣でピョンピョン飛び跳ねていたシーンは印象的です。

つまり、アメリカ人と同様に、合理的に、そして前向きに考えるなら、痛みを抱えながら騙し騙しの日常を送るより、さっさと人工股関節手術を受け、元気だった日常に早く戻ったほうが、自分にもそして家族など周囲にも良さそうということです。

インプラントの性能も、耐久性が10年とか15年と言われていた20~30年前頃と比べると、格段と進歩していて、「25年以上経過しても90%以上が良好」と言われていて、最近のものは30年以上の耐久性も期待できます。というのも10年前のインプラントが30年、40年持つかどうかはあと20年、30年以上経過してみないとわかりません。

歩いたり、走ったり、しゃがんだりするのは骨やインプラントの力ではなく、本質的には筋肉の力なので、その筋肉を鍛えるには、若い時のほうが断然有利です。

それゆえ人工股関節を入れてそれでおしまいではなく、リハビリで人工股関節の周辺の筋肉を鍛え、それによって人工股関節の寿命も延ばせそうです。

せっかく人工股関節を入れたのに、筋肉が弱ってあまり動けず寝たきりだったら、これはせっかくの手術が無駄になります。

私が手術後にリハビリ室で歩く練習をしていた時、近くに座ったままで一歩も歩こうとしない高齢女性がいました。理学療法士が優しく歩く練習を促しますが、「私は車椅子でいいから」と言って頑として応じません。

それを見たら、やはり元気で、しかも歩くことに強いモチベーションがあるうちに手術をするべきだなぁと思った次第です。

 ◇   ◇   ◇

インプラントの性能向上とともに、置換手術の方法にもこの10数年で格段の進歩があります。

makoすでに股関節手術が多い病院では、執刀医を支援するため、CT画像から作成した3Dモデルで予定通りに人工関節を正確に設置できるロボットアームと手術支援システムが導入されています。

これにより、筋肉を切らない(低侵襲)手術が容易となり、短時間(30分程度)の手術で患者の負担が少なく、早期回復が可能となっています。

少し前までなら、術後1ヶ月近くを病院でリハビリをしてから退院ということがありましたが、最近は長くても術後1週間程度で退院が可能です。

上記の長嶋一茂氏はなんと術後3日後に退院(木曜日の手術で日曜日に退院)しています。(おそらく想像ですが極めて薄味の病院食が口に合わず、わがままと無理を言って、強引に退院したような気がします)

そう遠くない先には、人工股関節手術など日帰り手術も可能になってくるのかも知れません。それぐらい進歩は早いです。

これが痛みを長く我慢して(その間に運動をしないため筋力はどんどん落ちてくる)、高齢になってから手術をするより、ずっと先進的な医療が可能となっているはずの30年先40年先の再置換手術のことは考えずに、若い内に早く痛みを取って制限のない日常生活に戻るほうが良いだろうと思う要因でもあります。

あと最新ニュースで「変形性ひざ関節症の治療に「エクソソーム」 国内初臨床研究」(NHK)というのがありました。
50歳以上の2人に1人がなるとされる「変形性ひざ関節症」の治療に、組織の再生を促す働きがあるとされる「エクソソーム」という物質が有効かを確かめる国内初の臨床研究を、神奈川県にある病院の研究グループが始めました。(中略)エクソソームは細胞から分泌される物質で、動物実験で軟骨を修復したと報告されるなど、組織の再生を促す働きがあるとされています。

もし膝関節で軟骨が再生するのなら、それを応用すれば股関節の軟骨も再生できるようになるかも知れません。

そうなれば軽度の変形性股関節症であれば、10数年後には人工股関節の置換手術の必要がなくなる可能性もあります。まだ当分先のことで、なにも確実なことはわかりませんので、すでに症状が出ている人は待ち続けるのはかなり無理があるとは思いますが。

【関連リンク】
1630 人工股関節置換手術のリアル
1175 人工股関節手術のその後とまとめ
1049 変形性股関節症の人工股関節置換手術まとめ

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