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1862
八甲田山 消された真実(山と渓谷社) 伊藤薫

八甲田山 消された真実
筆者は青森県生まれの元自衛官で、第5普通科連隊や青森地方連絡部などで勤務をした方で、青森の地勢や、時代は違えど軍隊の規律や習性などを熟知した方です。

著者が所属していた自衛隊でも、過去の失敗から学ぶことを大事にしていて、様々な事件の分析をおこなっていたようです。

1902年(明治35年)に起きた総勢210名中199名が一度に凍死するという世界で最悪の集団凍死事件「八甲田雪中行軍遭難事件」については、新田次郎著の「八甲田山死の彷徨」や、それを原作とした映画「八甲田山」が有名で、私も映画を子供の頃に見て、割と最近、9年前に小説を読みました。

2016年9月前半の読書と感想、書評(八甲田山死の彷徨)

その小説の影響もあり、7年ほど前の夏に青森へ行ったとき、幸畑墓苑や八甲田山雪中行軍遭難資料館、歩兵第五連隊第二大隊遭難記念碑 (八甲田山雪中行軍遭難後藤伍長銅像)など訪問しました。

この新田次郎氏の作品は1971年までに判明していることをなぞりながら、あくまで小説として出版されましたが、それ故に、著者の創作が加わり、時が経ってから新たな証言などが発見されたりしたことで、小説や映画で描かれた内容とは少し違う点が露わになってきています。

この書籍は2018年に出版され、そうした新たな発見や証言から事件について真実を突き止めようとするノンフィクションです。

事件の真相に迫るため使われた資料や証言は多岐に渡っています。事件後すぐに陸軍大臣に提出された大臣報告や、2ヶ月後にあらためて陸軍大臣に提出された顛末書が公式文書としてあり、さらに関係者の談話や、生存者からの聞き取り記録、その他地元の新聞東奥日報や河北新報、全国紙の記事などです。

機密保持が厳格な明治時代の軍隊の中で起きた事件で、さらに責任を回避するため画策したり、ミスを死者に押しつけたりしようとする上官や関係者がいても不思議ではありません。

数名の生存者がいながらもなかなか真実が表面化しない側面があり、真実はどうしてもある程度は想像や推理するしかありません。

本書でも「・・・だろう」という表現がかなり多く見られます。また著者がある程度自信があることやそう信じていることについては「・・・である。」という表現で書かれています。小説ではなくノンフィクションという形態ながら、様々な資料や聞き取り、自分の経験から著者の思い込みも含め、推定以外のなにものでもありません。

それだけに本書のタイトルにあるように「消された真実」が、どこまで真実なのかは未だによくわかりません。

なかなか読み応えのある作品でしたが、著者が元自衛官と言うことで、専門用語や軍隊用語が多く、ある程度は知っている人向けの研究本のような感じなので、先に軽めの小説「八甲田山死の彷徨」を参考に読んでおくほうがより理解がしやすいかなと思いました。

同様に事件を元にした小説で伊東潤著「囚われの山」も、内容はやや大雑把でエンタメっぽいですが、これもそこそこ興味深かったです。

2024年5月後半の読書と感想、書評(囚われの山)

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

四人組がいた。(文春文庫) 高村薫

四人組がいた。
2014年に単行本、2018年に文庫化された連作短篇集です。「四人組、怪しむ」、「四人組、夢を見る」、「四人組、豚に逢う」など、12篇のコミカルな短篇が収録されています。

長野県の過疎の村(現在は合併で市)の郵便局兼集会所に毎日集う、元村長、元助役、郵便局長、近所の老婆の4人が主人公です。

有川浩著「三匹のおっさん」や、加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス」のような、高齢者が主役のコミカルな短篇集かと思っていたら、それらよりはファンタジーやホラーなどの要素も加わり、なんだか哲学書を読んでいるかのような難しさと眠けを感じました。

したがって、笑い転げる小説ではなく、どんな突飛な内容でも黙って許せる心の広い人向けで、あまり内容を深く考えたり、突っ込みをいれたりするようなものではありません。

また、高齢化し消滅しそうな地方の村落という問題を提起する社会性があるものでもなく、四つ足のタヌキやクマがエプロンして預かった幼児のおむつ交換をし、キャベツが行進し、ヤマメやウサギと会話するというなんだかよくわからない(それが哲学的)内容で、真剣に読むものではありません。

特に頭が固くなってしまった高齢者(私を含む)には、著者の初期の作品「マークスの山」(1993年)や「レディ・ジョーカー」(1997年)のような本格的なサスペンス小説や、重厚な内容の短篇集の「地を這う虫」(1993年)をイメージして読むと、「なんなんだこれは!」と叫んでしまいそうです。

★☆☆

著者別読書感想(高村薫)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来(朝日新書)

人類の終着点
サブタイトルに「戦争、AI、ヒューマニティの未来」「世界最高の知性による未来予測」「われわれを待ち受けているのは、黙示録か福音か」とうるさいぐらいに盛られています。

朝日新聞社が主催するシンポジウム「朝日地球会議」で、マルクス・ガブリエル、フランシス・フクヤマ、エマニュエル・トッド、スティーブ・ローへのインタビュー、そしてメレディス・ウィテカー、安宅和人、岩間陽子、手塚眞、中島隆博各氏の座談会などで構成されていて、特定の著者というものはありません。

個人的には子供の頃からずっと朝日新聞を読んできたので、この人選については朝日らしさを感じますが、違和感はありません。しかし読売新聞社や東京新聞社、ニューヨークポストが主催のシンポジウムなら、ゲスト陣はまったく違ったものになるのでしょう。

そうしたことから、マスメディアは知ってか知らずか中立とは言えない偏向した思想や考え方を読者や視聴者に植え付けていきます。ずっと昔からそれを続けてきたので今更っていう話しですけど。

それはともかく、2023年の話なので、まだトランプ大統領が2024年に再選される前で、アメリカがそれまでの路線から大きく舵を切る前の話です。

テーマは、政治やAI、戦争の行方など、近未来の話題が中心で、2年経った現時点でも特に時代遅れではなくリアリティがあります。

気になったのは、フランス出身の歴史学者エマニュエル・トッド氏は「アメリカは有事が起きても日本を守る気はないので、安全保障をアメリカに頼るのはリスクが高く、日本は核武装して自衛するしかない」「日本にとって自国で国民生活のすべてまかなえるロシアや中国はたいして問題ではなく、一番危険なのは自国だけで完結できないアメリカだ」ということ。

繰り返しますが、アメリカは民主党のバイデン大統領だった頃の発言で、同盟国に異常な貿易関税を一方的にかけてくるトランプ大統領に代わる前の話です。

また、マルクス・ガブリエルの「右派と左派を単純化すれば、左派は自由、連帯、平等の理念を大事にし、右派はヒエラルキー(権威主義)と国境(排外主義)を大切にする」という言葉は、昨今の日本含め世界状況を見ているとまったくその通りだなぁと思います。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

凍原(小学館文庫) 桜木紫乃

凍原
2009年に単行本、2012年に文庫化された著者の作品では珍しい女性刑事が主人公の人間ドラマ小説です。

釧路の湿原である若い男性の絞殺死体が発見され、これが終戦前後の樺太へのソ連侵攻と住民避難へ遡り、壮大な歴史ドラマが始まります。

割と短い小説(文庫で344ページ)ながら、登場人物が多く、しかもそれが戦後から70年近く経った時代まで関係してくるので時々誰が誰とわからなくなることも。

舞台となるエリアも、一部はマップが掲載されていましたが、釧路市内の他、川上郡標茶町、戦前の南樺太、札幌、小樽、留萌、室蘭などが出てきます。北海道の土地勘がないと、どれほどの距離があり、文化的にどう違うのかなどはわかりにくいでしょう。

主人公の女刑事は子供の頃に弟が湿原で行方不明となり、沼地の中にある壺状の穴、谷地眼(やちまなこ)にはまってしまったのでは?とされています。

そのトラウマを引きずりながら、別の殺人事件に取り組みますが、一緒に捜査する相方が、弟の事故の時のベテラン担当刑事で、このコンビがなかなかのもので面白いです。

そう言えば、谷地眼に落ちて死亡する小説に、内田康夫著「釧路湿原殺人事件」というのがありました。しかし実際は過去に谷地眼で人が亡くなったという事故は記録にはないそうです。

★★☆

著者別読書感想(桜木紫乃)

【関連リンク】
 10月前半の読書 十五少年漂流記、シンセミア(上)(下)、私の流儀、残像に口紅を
 9月後半の読書 女のいない男たち、ものごとに動じない人の習慣術、流星の絆、風神雷神(上)(下)
 9月前半の読書 続高慢と偏見、夢幻花、うれしい悲鳴をあげてくれ、君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい

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1861
健康診査案内健康診断は、小学生の頃から毎年1回は受診するものと身体に染みついていました。児童や学生の頃はほぼ強制的に受診させられ、会社に勤務中は、これまたほぼ強制に近い案内で受診してきました。

年齢に応じて、また時代の変化で受診する項目も変わってきましたが、特に考えることなく、費用負担もなかったので、「お得だし、こんなものだろう」と受けてきたというのが実態です。

勤めをやめてからは市から国民健康保険の「特定健康診査(こくほの検診)」の案内が毎年ゆるやかに送られてくるようになりました。

最近は「健康診断」ではなく、「健康診査」という表現なんですね。知りませんでした。調べると、意味はほとんど同じです。

2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6% 過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】(保健指導リソースガイド 2025年06月27日)
2023年度の集計対象保険者数は3,358保険者。特定健診の対象者は約5,210万人で、そのうち約3,123万人が受診したことにより、実施率は59.9%。前年度から1.8ポイント上昇した。
特定保健指導の対象者は約519万人で、そのうち指導を終了した者は約143万人。実施率は27.6%となり、前年度から1.1ポイントの増加となっていた。

2023年の原則就業中の人が加入している組合健保の特定健診受診率が82.9%に対し、市町村国保の特定健診受診率はわずか38.2%となっています。出典:厚生労働省「特定健診・特定保健指導の実施状況について(2023年度)」

つまり、仕事をリタイアしたり、自営業などで市町村の健保に加入している人で、年1回国保の健康診査を受診しているのはおよそ3人にひとりということになります。

この「特定健康診査(こくほの検診)」の検査内容は、狭い範囲の「生活習慣病の早期発見」と「メタボリックシンドローム」の予防に限られたものです。

検査内容は、問診(服薬歴、喫煙歴など)、身体計測(身長、体重、腹囲、BMI)、血圧測定、血液検査(脂質、血糖、肝機能など)、検尿です。

現役時代の組合健保で受診していたときの健康診断(1日人間ドック)では、上記の検査以外に胸部と胃部のX線、腹部超音波、心電図、視力、眼底、眼圧、聴力検査、検便などが加わりもう少し幅広いものでしたから、それと比べると「こくほの検診」の検査項目はかなり見劣りします。

企業などに所属していると、総務部からの強い受診指示があり、それが受診率が高い一番の理由でしょうけど、検査内容の違いもあって、上記のような受診率に大きな差が出ています。

私も、リタイア後の特定健康診査(こくほの検診)は、一度も受診をしていないクチです。

健康診断や人間ドックについて、このように指摘する医師もいます。

人間ドック受けない方が健康のため?利益より害大きく(医師 大脇幸志郎 2021年5月7日 朝日新聞)
2019年に報告された、過去の研究17件のデータをまとめた解析結果では、「健康診断は全死亡率、がん死亡率に影響がないか、あってもわずかであり、おそらく心血管死亡率にも影響がないか、あってもわずかである」とされ、結論には端的に「健康診断に利益がある可能性は小さい」と記されています。
一般的な健康診断でさえ、有効と言えるだけのエビデンスがありません。人間ドックはさらに検査を広げていますから、利益が少しでもあるかどうかはより不確かです。と言うより、利益がないことがほとんど確実です。

個人的には年1回の健康診断自体に有用性がまったくないとは思いませんが、それで得られる大きなメリットもないというのが実感です。

「無料の検診だから行かないと損」という真面目な貧乏性でもなければ、煩わしい電話予約をとり(たらい回しにされたり予約する時期を指定されたりして何度も手間がかかる)、様々な病原菌が蔓延している病院の待合室で長時間待たされて検査を受けるのも苦痛でリスクが高いです。

ただ一般検診には含まれず、別途自己負担(一部公的補助される)でおこなわれている「がん検診」については、早期発見、早期治療が治癒には有効ですので、多少のお金ならかけても良さそうに思います。

がん検診は健康診断とセットで案内されることが多く、その場合、特定健診とは別に市町村指定のがん検診をうけることができます。70歳以上は無料で、それ以下の人の費用も補助があり安くなっています。

検査項目は、肺がん、大腸がん、胃がん、子宮がん、乳がん、骨粗しょう症とに別れていて、検査内容は胃カメラやX線検査、検便などで割と簡易なものです。自己負担する費用は数百円から3千円ぐらいです(自治体によって違う)。

最新のがん検査では身体の負担がほとんどない、全身MRI検査のDWIBS(ドゥイブス)や、血液1滴で多種類のがんを検出するマイクロRNA検査、尿からがんを検出する検査キットなどがありますが、公的な機関ではまだ採用されていないようです。これらは全額自己負担で検査を受けることができます。

費用はいずれも自由診療なので保険適用や自治体の補助はなく、DWIBSが5~8万円、マイクロRNA検査の簡易キットで2万円程度、尿からがんを検出する検査キットは2~7万円ほど(検査項目による)などとなっています。

早くこれらの簡易な検査が自治体指定の検査となり、千円~数千円程度で検査ができると楽でいいですね。

しかし検診で小銭を稼いでいる医者も多いでしょうから、既得権益が侵害される強大な圧力団体の反対を押し切れる政治家や官僚はいないでしょう。

そんなわけで、まだ60歳代の今年も健康診断(特定健康診査)は受診せず、70歳を過ぎてから民間のがん検診でも受けようかなと思っています。

【関連リンク】
1677 健保と健康診断
1542 退職後初の健康診断は残念な結果に
1220 人工股関節手術6ヶ月検診

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1860
十五少年漂流記(新潮文庫) ヴェルヌ

十五少年漂流記
フランスの作家、ジュール・ヴェルヌが1888年に発表した少年向けの冒険小説で、原題は「Deux Ans de Vacances」で、「2年間の休暇」という意味です。

私も子供の頃に絵本で読んだ記憶がありますが、今回小説で読んでなんとなく思い出しました。

ニュージーランドにある少年が学ぶ学校の夏休みの行事で、帆船でニュージーランドを一周する旅行があり、前日の夜から子供たちは船に滞在していたところ、舫いが外れ勝手に動き出してしまい、嵐の中、太平洋へ出て漂流します。

運悪く、深い霧の中で他の商船と接触したとき、船尾に付けられていた名板が外れ、その後それを見つけた捜索隊は「沈没した」と判断してしまいます。

1880年代という時代の物語なので、現代の感覚とはだいぶん違ったところもあります。

遭難したのは8歳から14歳までの少年ばかりで、無人島に漂着したのち船から荷物を持ち出しますが、その中にブランデーなど酒類も含まれます。最初は怪我をしたときの消毒に使うのかな?と思っていたら、自分たちで飲むためのものでした。、

また積まれていた銃器や大砲まで持ち出し、それを14歳以下の子供が自在に扱っているところなんて今では考えられないでしょう。

そして、島では銃を撃ち、落とし穴で捕まえた鳥や獣を、当たり前に食料としていますが、時代なのか、今の少年に鳥の羽をむしり、動物の皮をはぎ、腹を割いたりと、処理をする技術やたくましさはないでしょう。

無人島ものの小説や映画は好きで、特にお勧めなのがトム・ハンクス主演の映画「キャスト・アウェイ」です。これは見て損はありません。

日本でも無人島サバイバルものはあり、吉村昭著の実話を元にした小説「漂流」や、須川邦彦著の実話「無人島に生きる十六人」は秀逸です。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

シンセミア(上)(下)(講談社文庫) 阿部和重

シンセミア
2003年に単行本、2006年に朝日文庫、2013年に講談社文庫として文庫化された長編小説です。

舞台となっているのは、著者の出身地で、すでに既刊となっている「ニッポニアニッポン」(2001年)や「グランド・フィナーレ」(2005年)と同じ、実在する山形県東根市神町(じんまち)です。

タイトルのシンセミアとは、スペイン語の「sin」(ない)と「semilla」(種)に由来しており、直訳すると「種がない」という意味で、一般的には「種なし大麻」という意味で使われ、その「種なし」は男根とつながる比喩的なものとされています。

この神町は、古くは日本陸軍の基地があり、戦後はアメリカ進駐軍とその後の自衛隊の基地ができて栄えた歴史があります。

そうした戦後の混乱期からこの神町を仕切っていた有力者が代替わりしていき、様々な問題をはらんでいきます、

特に主人公というのはなく、汚れ仕事を任されていたパン屋の2代目と、それに反発して若い盗撮グループに加入している3代目、中学生と交際しているロリコン警察官、戦後のヤクザで現在は2代目の次女が不動産企業や建設企業を傘下に置き仕切っている興業企業、その親戚の落ちこぼれで盗撮グループのリーダーをやっている甥など、それぞれの視点で物語が語られ進行していきます。

その神町で、産廃事業反対運動のリーダーだった高校教師が不可解な鉄道事故で死亡、続けて桃の農家の老人が謎の失踪しその後の洪水被害で殺害された姿で発見、幽霊が出ると噂のあった道で自動車整備士が橋の欄干に激突死、さらに洪水発生時に身元不明の死体と続けさまに事件や事故が相次ぎます。

さらに放火や、盗撮、コカイン、リンチ、暴力事件など、かなりハードな場面が多くあり刺激的な内容です。

それまで表も裏もキッチリと仕切ってきた町の有力者仲間の関係にヒビが入ってくると、それまでは隠されてきたなにかとブラックなところが突然表沙汰になってくるものです。

当初文庫版が発刊された時は(1)から(4)まで4冊に分かれていたそうです。この講談社文庫版は上下の2冊にまとめられましたが、上巻487ページ、下巻501ページとボリュームがあり読み応えがあります。

そのため1日1時間程度の読書だと長いあいだ読んでいることもあり、だんだんとあたかも自分が神町に住んでいるかのような気がしてきます。

しかしこのようなアウトローやアブノーマルな住人が多い町に住むのはなんか嫌だなぁ、、、

★★☆

著者別読書感想(阿部和重)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

私の流儀(新潮文庫) 吉村昭

私の流儀
1998年に単行本、2001年に文庫化された幕末頃から戦中戦後の近代歴史小説が多い著者のエッセイ集です。

テーマは、
(1)小説を書く
(2)言葉を選ぶ
(3)人と出会う
(4)酒肴を愉しむ
(5)旅に出る
(6)歳を重ねる
の6章からなっていて、それぞれの思ったこと、感じたこと、身の回りで起きたことなどユーモアを交ぜながら描かれています。

詳細は不明ですが、週刊誌か雑誌などに掲載されたエッセイを上記のテーマごとに集めたものと思われます。

そのため、本来なら連載雑誌で何ヶ月後かに繰り返される同じ話が、このエッセイ集では続けて何度も出てきます。そういうのは書籍化するときの編集段階で修正しないのかな?

面白かったのは、東西酒豪作家がなにかの雑誌に載り、東の横綱に著者が選ばれ、西の横綱が藤本義一氏だったという話しや、取材旅行では、編集者などと一緒に行くと旅費などの費用が相手の出版社もちになるのが嫌で取材旅行は基本ひとりで行くという話し。

その他にも馴染みの居酒屋で編集者と「廃刊」という言葉を連発していたら、居酒屋の店主が、配管工事の職人と間違えられ、店を改装するためその配管工事を依頼されたり、など。

なにげない日常の話しが多く、作家の仕事というのがよくわかるエッセイでした。

★★☆

著者別読書感想(吉村昭)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

残像に口紅を(中公文庫) 筒井康隆

残像に口紅を
1989年に単行本、1995年に文庫化された「言葉遊び」を取り入れた変わり種の長編小説です。

今から35年以上前の小説ですが、ロングセラーを続けていて、今年2025年には寺田浩晃画の同名漫画が出ています。

どういう内容かというと、主人公のベテラン作家と大学教授で評論家の友人同士が、思いつきで日本語の言葉をひとつずつなくしていった先の小説はどうなるのだろう?ということから、1章ずつ50音+濁音、半濁音などの言葉を1つずつ(時々2音)消えていく内容です。

例えば人名になくなった言葉が含まれているとその人は消えていなくなり、使うこともできません。「ち」がなくなれば「父親」という言葉は使えず、この小説では「自分を産んだ男親」という言い方に変えられています。

そして全66章で、順番にあまり使われない言葉から消えていきますが、消えた言葉が半分ぐらいに達するとかなり厳しい物語になっていきます。

ストーリーは、作家自身の日常生活や、友人の大学教授のリクエストで濡れ場シーン、子供の頃の思い出として、戦争中に疎開していた話しや、子供の頃には漫画を描くのが好きだったとかなどは、この主人公が著者自身という想像もできます。

今ならパソコンのワープロやプログラムを使えば、消えた言葉を回避して別の言葉に置き換えたりすることは容易でしょうけど、執筆された1989年と言えばようやくワープロが一般に普及していた頃で、個人でミスをチェックするのは大変だったと思います。

それでも出版後に、本文中の5箇所に消えたはずの言葉が使われているのが発見されていて、それは巻末に様々なデータと共に書かれていました。

こうした作家さんの実験的小説や変わった手法の小説もたまには気分が変わっていいものです。

言葉遊びではないですが、京極夏彦氏のひとつの文章がページをまたがらない独特の手法や、杉井光氏の「世界でいちばん透きとおった物語」のような驚天動地の手法、小説の中に事件の謎を説くための別の小説があるアンソニー・ホロヴィッツ著「カササギ殺人事件」など、いずれも嫌いじゃありません。

★★☆

著者別読書感想(筒井康隆)

【関連リンク】
 9月後半の読書 女のいない男たち、ものごとに動じない人の習慣術、流星の絆、風神雷神(上)(下)
 9月前半の読書 続高慢と偏見、夢幻花、うれしい悲鳴をあげてくれ、君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい
 8月後半の読書 エアー2.0、警告、日本史の探偵手帳、あなたならどうする

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1859
少し前ですが、保育園の倒産や撤退が相次いでいるというニュースが流れていました。

保育園の倒産件数が過去最高ペース…てぃ先生「もうどうしようもない状況」 親側も“質”を選ぶ? 経営と優先すべきは(ABEMA Prime 2025/07/20)

小学生
待機児童ゼロを目標に、保育施設の増加や無償化が進んだ一方で、加速し続ける少子化。9割近い自治体で待機児童問題は解消し、保育園同士が園児を奪う時代に突入した。さらに給食の材料高騰や、保育士不足で受け入れ定員数を埋められず、経営を圧迫する事態になっている。

待機児童ゼロを目指して、国や自治体が税金をつぎ込み支援しているにもかかわらず、少子化+材料高騰+保育士不足の3重苦で保育園の経営がままならなくなってきているという話しでした。

具体的には、帝国データバンク調べでは、倒産、休業、解散をした保育園の件数が、1-6月比較で2025年は22件あり、これは3年連続して増加しているということでした。

今回は、保育園の経営についての話しではなく、保育園が閉鎖したりつぶれていくということは、数年後には間違いなく小・中学校、十数年後には高校や専門学校、短大、大学の運営や経営にも大きな影響が出ると言うことです。

小学校、中学校、高校、大学(短大含む)の50年間校数推移(出典:文部科学省 学校基本調査
50年間校数推移

50年前の1975年は小学校が24,650校、中学校が10,751校、高校が4,946校、大学(短大含む)が933校ありましたが、2025年には小学校が18,607校(▲6,043校、25%減少)、中学校が9,827校(▲924校、9%減少)、高校が4,761校(▲185校、4%減少)と減少し、大学(短大含む)は逆に増え続けていて1,104校(+171校、18%増加)です。

現時点(2025年)では、すでに小学校が全体の1/4、25%もの減少という大きな影響が出ています。

児童数(小学生生徒数)と小学校数の推移をグラフにしてみました。

児童数(小学生生徒数)と小学校数の推移

児童数は、2010年から2024年の14年間で約105万人(15%)減少しています。学校数は同時期3,178校(14%)の減少です。決して学校の減少が児童の減少を上回っているわけではなさそうです。

中学校以降はこれから数年後に、大学は今はまだ大丈夫でも10数年後には小学校と同様の影響が広がっていくことになるのでしょう。その他にも塾や教材、文房具、学生服の業界にも影響が出てきます。

高齢者だけでなく若い人にもいま移住がブームとなっていますが、地方ほど老朽化した道路や橋、上下水道、電気、ガスなどの生活インフラ問題や、子供がいる世帯にとっては地域内の学校閉鎖や学校の通学という問題がついて回りそうです。

政治家には、外国人問題の前に、海外の良い事例などを参考にし、少子化対策を加速し有効な対策を打ってもらわなければ様々なところへ大きな影響を及ぼすことになりそうです。

【関連リンク】
1129 子供の教育費にはいくらかかる?2017年度版
1190 学校の無償化について
934 子供の教育費にいくらかけますか?

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1858
女のいない男たち(文春文庫) 村上春樹

女のいない男たち
2013年から2014年に文藝春秋などに掲載された短・中篇小説をまとめたもの(1篇のみ書き下ろし)で、2014年に単行本、2016年に文庫化されました。

その中の中編「ドライブ・マイ・カー」は、濱口竜介監督、西島秀俊、三浦透子などの出演で2021年に映画化されています。

カンヌ国際映画祭で日本映画初となる脚本賞を含む計3部門を受賞し、アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞しています。

公開時に映画の予告編がCMで流されていたので気になっていましたが、まだ見ていません。

収録されている小説は「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」の6篇で、最後の「女のいない男たち」だけ書き下ろしです。

ドライブ・マイカー内容は、男性視点での女性との別れや死別、離婚などがテーマとなっています。

タイトルから容易に想像できそうな「全然モテずに女っ気がまったくない独身中年男性の哀れ」という内容ではありません。

前書きに、あまり好きではないという短篇を今回出した理由や、出版社等に頼まれて書くことはないのに書いた1篇のことなど、面白くこの短篇集の背景が書かれています。そういうのって珍しいですね。

その中ではやはり映画にもなった文庫で51ページある中編「ドライブ・マイ・カー」が良かったのと、「木野」はタイトルが主人公の名前ですが、ちょっとホラーだったのが意外で面白かったです。

★★☆

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ものごとに動じない人の習慣術 冷静でしなやか、タフな心をつくる秘訣(KAWADE夢新書) 菅原圭

ものごとに動じない人の習慣術
同姓同名にシンガーソングライターがいてややこしいですが、こちらの著者はコピーライターや出版社勤務を経たフリーのライターさんで、「努力する人は報われない」など多数の著書があります。

実は1年半前にも同じ書籍を購入し読んでいました。情けない、読み終わって整理するまで気づかないというのは痴呆寸前かもです orz,,,

この新書は2020年に出版されています。購入した理由は、まさにタイトル買いで、今更ながら「ものごとに激しく動じてしまう自分をなんとかできるのか?」と思ってのことで、前にも購入していたということは、このことが気になって仕方がないのでしょう。

1年半前に読んだ時に感想を少しだけ書いています。

2024年3月後半の読書と感想、書評 (ものごとに動じない人の習慣術)

★☆☆

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流星の絆(講談社文庫) 東野圭吾

流星の絆
2008年に単行本、2011年に文庫化された長編ミステリー小説です。

タイトルに記憶があったので「すでに読んだかな?」と思いましたが、調べると読んでなく、2006年9月から2007年9月まで週刊現代に連載されていたということで、それを見たことがあったのでしょう。

2008年には二宮和也や戸田恵梨香が出演するテレビドラマが製作されています。

ストーリーは、三兄妹がまだ幼かった頃に、自宅で食堂を経営していた両親が何者かに殺されてしまい、その時効がくる直前の14年後に、成人した三兄妹が偶然犯人の手がかりを見つけます。

三兄妹は親が亡くなったために、施設に預けられ、大きな苦労を味わいます。そして生きていくためにと、三人で詐欺行為を生業として、世の中の不条理に向き合って生きています。

しかし手がかりと行っても確証がなく、警察に知らせても相手にしてくれないだろうと考え、知らせず3人だけで犯人と思われる容疑者を追い詰めていくことになります。

推理小説でもありますが、事件の謎は最後の最後でないとわかりませんでした。なかなか複雑に凝っています。でも読み応えがあり面白かったです。

★★☆

著者別読書感想(東野圭吾)

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風神雷神(上)(下)(講談社文庫) 柳広司

風神雷神
2017年に単行本、2021年に文庫化された国宝「風神雷神図屏風」で有名な江戸時代初期の謎が多い絵師、俵屋宗達筆の伝記的小説です。

数多くある作品の中でも晩年に描いた最高傑作に近い、風神雷神図屏風は現在京都国立博物館に所蔵されています。

私も本物かレプリカかは不明ですが、同博物館で見た記憶があります。

ストーリーは、子供の頃、京都の扇屋に養子として入った俵屋宗達(子供時代は伊年)は、商売よりも絵を描くことが好きで、本業でもある扇の絵はもちろん、頼まれれば屏風や絵巻物、水墨画、書籍などにも絵を提供しています。

風神雷神図屏風

中でも書道家でもあった本阿弥光悦との合作で、多くの屏風絵などを残しています。

しかし実際は俵屋宗達のことは墓所や生誕年含め、わかっていないことが多いそうですが、小説の中では著者の相当の想像力と創作が大胆に散りばめられています。

実際に交流があった公家の烏丸光広や文化人本阿弥光悦との出会いと共作、福島正則からの依頼で平家納経の修復、町の絵師としては異例の法橋の位が授けられたことなど事実も、小説の中にも盛り込まれ、タイトルの風神雷神図など、現在も残る彼の代表作が次々と出てきます。

もう少し時代背景を取り入れた深い内容であれば、蔦重よりもNHK大河ドラマの原作にふさわしいネタだっただけに、読みやすく現代風にアレンジした軽めの作品だけにちょっと残念だったかも。

★★☆

著者別読書感想(柳広司)

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