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遠野物語 (集英社文庫) 柳田國男

柳田國男氏は明治8年生まれの民俗学者だった人で、島崎藤村や田山花袋、国木田独歩、南方熊楠などとも交流があり、埋もれてしまいがちな日本の各地に残るスピリチュアリズムを広く紹介した初めての人かも知れません。

その中でもこの「遠野物語」は有名で、岩手県遠野出身の民話蒐集家佐々木喜善氏が語る遠野に伝わる民間伝承を筆記・編集し、1910年に350部余りを自費出版したのが最初です。文庫にはこの「遠野物語」の他、「女の咲顔」「涕泣史談」「雪国の春」「清光館哀史」「木綿以前のこと」「酒の飲みようの変遷」などが収録されています。

内容は天狗、河童、座敷童子など日本の古くから伝わる妖怪にまつわる話しから、山人、マヨヒガ、神隠し、山霊、古くから伝わるしきたりなど多岐に渡り、極めて短い簡潔な文章で全部で119話あります。ただ119話といっても1話で完結するものばかりではなく、2話、3話でひとつの話しとなっているものもあり、読んでいるとどこまでが前の話と関わっているのか、全然関係ない話しなのかわからないときがあります。

もちろん今でも文庫として販売されていますが、すでに著作権は切れていますので、青空文庫で無料で読むことも可能です。

「遠野物語」の一部を大胆に引用してみましょう。

一七
旧家にはザシキワラシという神の住みたもう家少なからず。この神は多くは十二三ばかりの童児なり。おりおり人に姿を見することあり。
土淵村大字飯豊の今淵勘十郎という人の家にては、近きころ高等女学校にいる娘の休暇にて帰りてありしが、或る日廊下にてはたとザシキワラシに行き逢い大いに驚きしことあり。
これは正しく男の児なりき。同じ村山口なる佐々木氏にては、母人ひとり縫物しておりしに、次の間にて紙のがさがさという音あり。
この室は家の主人の部屋にて、その時は東京に行き不在の折なれば、怪しと思いて板戸を開き見るに何の影もなし。しばらくの間坐りて居ればやがてまた頻《しきり》に鼻を鳴らす音あり。さては座敷ワラシなりけりと思えり。この家にも座敷ワラシ住めりということ、久しき以前よりの沙汰なりき。この神の宿りたもう家は富貴自在なりということなり。

三一
遠野郷の民家の子女にして、異人にさらわれて行く者年々多くあり。ことに女に多しとなり。

三二
千晩ヶ岳は山中に沼あり。この谷は物すごく腥《なまぐさ》き臭のするところにて、この山に入り帰りたる者はまことに少なし。昔何の隼人という猟師あり。その子孫今もあり。白き鹿を見てこれを追いこの谷に千晩こもりたれば山の名とす。その白鹿撃たれて遁げ、次の山まで行きて片肢折れたり。その山を今片羽山という。さてまた前なる山へきてついに死したり。その地を死助という。死助権現とて祀れるはこの白鹿なりという。

五七
川の岸の砂の上には川童の足跡というものを見ること決して珍しからず。雨の日の翌日などはことにこの事あり。猿の足と同じく親指は離れて人間の手の跡に似たり。長さは三寸に足らず。指先のあとは人ののように明らかには見えずという。

八四
佐々木氏の祖父は七十ばかりにて三四年前に亡くなりし人なり。この人の青年のころといえば、嘉永の頃なるべきか。海岸の地には西洋人あまた来住してありき。釜石にも山田にも西洋館あり。船越の半島の突端にも西洋人の住みしことあり。耶蘇教は密々に行われ、遠野郷にてもこれを奉じて磔になりたる者あり。浜に行きたる人の話に、異人はよく抱き合いては嘗め合う者なりなどいうことを、今でも話にする老人あり。海岸地方には合の子なかなか多かりしということなり。

九十
松崎村に天狗森という山あり。その麓なる桑畠にて村の若者何某という者、働きていたりしに、頻《しきり》に睡くなりたれば、しばらく畠の畔に腰掛けて居眠りせんとせしに、きわめて大なる男の顔は真赤なるが出で来たれり。若者は気軽にて平生相撲などの好きなる男なれば、この見馴れぬ大男が立ちはだかりて上より見下すようなるを面悪く思い、思わず立ち上りてお前はどこから来たかと問うに、何の答えもせざれば、一つ突き飛ばしてやらんと思い、力自慢のまま飛びかかり手を掛けたりと思うや否や、かえりて自分の方が飛ばされて気を失いたり。夕方に正気づきてみれば無論その大男はおらず。家に帰りてのち人にこの事を話したり。その秋のことなり。早池峯の腰へ村人大勢とともに馬を曳きて萩を苅りに行き、さて帰らんとするころになりてこの男のみ姿見えず。一同驚きて尋ねたれば、深き谷の奥にて手も足も一つ一つ抜き取られて死していたりという。今より二三十年前のことにて、この時の事をよく知れる老人今も存在せり。天狗森には天狗多くいるということは昔より人の知るところなり。

一〇三
小正月の夜、または小正月ならずとも冬の満月の夜は、雪女が出でて遊ぶともいう。童子をあまた引き連れてくるといえり。里の子ども冬は近辺の丘に行き、橇遊《そりっこあそ》びをして面白さのあまり夜になることあり。十五日の夜に限り、雪女が出るから早く帰れと戒めらるるは常のことなり。されど雪女を見たりという者は少なし。


一七は座敷童
三一は山男
三二は山の霊
五七は河童(カッパ)
九十は天狗
一〇三は雪女

とまぁこのような内容が訥々と書かれています。


傍聞き《かたえぎき》 (双葉文庫) 長岡弘樹

「迷走」「傍聞き」「899」「迷い箱」の各短編小説を集めた作品です。どの作品もピリッとひと味もふた味も効いていてなかなかのショートストーリーに仕上がっています。うまいですねぇ。

「迷走」は逆恨みによって刺された検事を病院へ運ぶ途中、救急隊員が、なぜか病院へ搬送するのではなく、その周囲の道を迷走させた理由とは?「傍聞き」とは「かたわらにいて、人の会話を聞くともなしに聞くこと」の意ですが、その手法を使うと、話しが例え嘘でも真実味を帯びて聞こえることをうまく利用したトリックです。

「899」は近所のアパートに住む女性に恋する消防士が、その女性部屋で消火活動をするときの心理状態と意外な行動を。「迷い箱」は受刑者が社会復帰するまでの更生保護施設の施設長の女性と、そこを退寮していった元受刑者の気持ちを描いた作品となっています。

各編主人公は救急隊員、女性刑事、消防士、更生保護士と公務を職業とする人達ですが、これらの小説には多くと言うかほとんどの小説に登場してくる便利な精神異常者などは出てこず、なにげない日常に起きているテーマでうまくショートストーリーにまとめてあります。

そうしたショートストーリーでは、古くはサキの「サキ短編集」や、「賢者の贈り物」や「最後の一枚の葉」などを書いたO・ヘンリ短編集、比較的最近ではジェフリー・アーチャーの「十二の意外な結末」や「十二枚のだまし絵」などが秀逸な短編集です。

この著者の作品は今回始めて読みましたが、今後もチェックしていきたいと思います。


九月が永遠に続けば (新潮文庫) 沼田まほかる

著者沼田まほかる氏(65歳)の経歴は変わっていて、団塊世代の女性らしく早く結婚するものの、やがて離婚、得度して僧侶になったかと思えば、建設コンサルタント会社の経営をし倒産。その後57歳で出したこのデビュー作「九月が永遠に続けば」が、道尾秀介氏「背の眼」に勝ってホラーサスペンス大賞を受賞するという快挙を得ました。

ストーリーはある事情で離婚した女性が主人公で、その主人公の高校生の息子がある日、神隠しにでもあったように忽然と行方を消してしまいます。その消えた長男を探し出す物語となっています。

主人公は別れた元夫が再婚した女性の連れ子と交際している男性と知り合い、やがて深くつき合うようになりますが、その男性が事故か事件か不明ながら駅のホームから転落して死亡します。それが長男の行方不明とタイミングが同じだったので、息子がなにかの事情でその男を突き飛ばして殺したのではないかと疑い始めます。

この小説でも、レイプ事件の被害者や、近親相姦に悩む姿など現代の精神的病巣についての話題が登場してきます。先日読んだ直木賞受賞作品、村山由佳氏の「星々の舟」でもそうでしたが、女性作家はこうした創作設定を比較的軽く扱い過ぎてヘキヘキしないでもないです。もちろん女性作家だけでなく売れっ子の東野圭吾氏の「白夜行」などでも、主人公の敵が次々とレイプされる設定などもありますから、女性作家特有のものではないのでしょうけど、なにか軽薄すぎて嫌な感じがします。

最近のミステリー小説、特にホラーというジャンルでは精神異常者やレイプ犯罪、幼いときの虐待の心的外傷後ストレス障害(PTSD)などが、お約束のように必須となっているとはいえ、そういうものに頼らない本格的なミステリー小説はないものかなと心待ちにしているところです。

この文庫の解説を読むと「登場人物はみなどこにでもいる普通の善良な人」と書いてありましたが、善良はともかく、子どもの頃から何度もレイプされたり、大人になってからもその時と同じような設定でしか夫婦の営みがもてないなんて普通の善良な人々ではないでしょう。

あと、主人公を支える近所の関西弁男が女性の恋愛心理を表すのに「遠野物語」から引用していてびっくり。しかし出ていたその内容「村の娘が栃の木に恋してしまい、舟を造るために伐採された木を追いかけて一緒に滝壺へ・・・」というお話し、同時に読んでいた「遠野物語」にはなく、似たような話しで「飼っていた馬に恋し、やがてその馬と結婚した娘さん」の話しはあったけどなぁと思って調べてみたところ、「遠野物語」の続編にあたる「遠野物語拾遺」にその引用された話しが出ていました。


瑠璃を見たひと (角川文庫) 伊集院静

この作品は1992年に初出ということで、同年に直木賞を受賞した「受け月」の前後に書かれたものと推察がされます。また同年には篠ひろ子と再婚し(最初の妻夏目雅子さんは1985年に死去)、同氏にとっては絶頂と言える時期だったかもしれません。

主人公は神戸の名門資産家に嫁いだものの、満たされぬ思いを感じてある日突然夫を捨てて出奔します。そして亡き父親の遺言にあった「なにか困ったことが起きたときにここへ電話をしなさい」というの実行します。

そこには父親と若くして亡くなった母親の知人で、謎の中国人女性が待っていて、何も聞かずに住む場所や仕事を提供してくれます。そしてその女性に頼まれ、それを対で持つと富と権力が手に入るという伝説の彫刻を探しに香港、フランス、ベルギーへと旅立つことになります。

そこまでもなにかあり得そうもない不思議なストーリーですが、ここから後半にはいるとさらに中国マフィア、ナチの残党、囚われの身となったままでシルクロードへの旅、ジンギスカンに滅ぼされた西夏文明の遺跡と、奇想天外、斬新奇抜、空前絶後、荒唐無稽な話しがジェットコースターのように進んでいきます。ちょっと待ってくださいよねぇ、と言ったところです。

本のタイトルにもなっている瑠璃色とは「やや紫みを帯びた鮮やかな青」ということで、このストーリーでは探し求めるタオティエという彫刻に使われている翡翠の色と、北京の西千キロほどにあった西夏の都の遺跡に残る伝説の瑠璃色に光る湖などを現しているものと思われますが、読む前はもうちょっとロマンティックな物語を想像していました。

この小説の中には日本人はほとんど登場せず、主人公を含め日本に住む中国系、または華僑など外国に渡った人、元ベトナム難民などアジア系の人達ばかりです。悪役で日系ドイツ人などは出てきますが、ちょっと毛色の変わった登場人物ばかりでそこのところは面白く読むことができました。


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