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氷の華 (幻冬舎文庫) 天野節子

著者は、幼稚園教諭や幼児教材会社で勤め上げ、定年の60才になってから小説家デビューしたという異色の小説家です。しかもこのデビュー作「氷の華」は当初自費出版と言いますから、おそらくは応募や持ち込みされたと思われる出版社も、見る目がなかったと言うことでしょうか。

同じように持ち込みされながらも多くの出版社からケンホロで追い返された百田尚樹氏の大ヒット作「永遠の0」などの例もありますからそういうことは珍しいことではないのでしょう。

同作品はその後2008年には米倉涼子主演でテレビドラマ化され、続く第2作目の「目線」も仲間由紀恵主演でテレビドラマ化され、まだ作品数は少ないですが、一躍ヒットメーカーとなりました。

私はそうではありませんが、若いときに小説家や文筆業になる夢が破れ、それでもいつかは小説家デビューしたいと思いながら畑違いの仕事を続けている40代50代中高年にとっては、天野氏が60才になってデビューしたという実績を残してくれたおかげで、俄然やる気が出てきた人も多いのではないでしょうか。

前置きが長くなりましたが、この小説、デビュー作とは思えないほど、しっかりと考えられて作られています。主人公は警視庁殺人課の刑事と、夫の不倫相手を毒殺した妻のふたりです。

内容は詳しくは書きませんが、こうした殺人事件の小説では設定にかなり無理があるなというものが多いのですが、この作品では詳しく描かれる双方の心理描写に納得できるところが多く、ぐいぐいと物語の中へ引き込まれていきます。

現実の世の中では、一般人の殺人事件に関して言えば、直情径行型の犯行が大半を占めていると思われますが(根拠なし)、こうした小説やドラマの中では当然それだけで終わるわけもなく、読者にも十分推理が可能なようにしながら、刑事がふと感じた違和感の理由を突き止めていくというストーリーです。


終わらざる夏 (集英社文庫)(上)(中)(下) 浅田次郎

前から読みたかった作品がようやく文庫化されましたので、私の夏休みの大きな宿題、いや、楽しみとして、さっそく買ってきて猛暑の中、エアコンの効いた部屋で静かに読みました。

この小説の舞台にもなっている太平洋戦争終戦後に突如ソ連軍が北方領土攻撃してきた話しは、池上司著「八月十五日の開戦」や、戦前までは日本領だった南樺太を描いた映画「樺太1945年夏 氷雪の門」、その映画のクライマックスとなった悲しい「霧の火-樺太・真岡郵便局に散った9人の乙女たち- [DVD]」のドラマなどで知っていました。

割と最近にもNHKで占守島の守備隊の話しを当時の関係者の証言で検証した番組が放映されていました。

なので、このテーマ自体には目新しさはないのですが、泣かせの次郎が本領を発揮する、重苦しく切ないテーマでの長編作でもあります。

知らない人のためにこの北方領土の戦いについて少しだけ触れておくと、8月15日は終戦の日と信じて疑わない日本人がほとんどですが、この終戦の日前後の北方領土では日ソ中立条約を一方的に破棄して樺太や満州、千島列島などへなだれ込んできたソ連軍との自衛戦争開戦の日でもあるのです。8月15日以降はほとんど抵抗をしなかった満州や南樺太と違い、千島列島の最北にある占守島では8月15日以降も激しい戦いが続きました。

太平洋や南方でこてんぱんにやられた日本軍は、実はアメリカ軍が北のアリューシャン列島から千島列島へ島伝いに、そして北海道へ攻めてくることを想定し、強力な部隊を千島列島などに配備をしていました。結局アメリカは沖縄など南方からの攻撃だけで同時に北方へ戦力を分散することはありませんでした。

一方、ソ連軍は戦後の占領後体制を考えると冬でも凍らない北海道の不凍港を手に入れることがヨーロッパのドイツ分断と同じくアメリカに対抗する上で重要でした。なので、南樺太や千島列島を制圧し、そのまま一気に北海道まで占領しようと目論みましたが、アメリカと戦ってもう戦力は残っていないはずの日本軍に、千島列島で思わぬ反撃を受け、甚大な損害を出すことになります。

しかし結局はポツダム宣言を受諾した日本はやがて反撃を中止し、樺太はもちろん、千島列島もすべてソ連に占領されることになりましたが、千島列島の守備隊が命を賭けてソ連の侵攻を阻止したおかげで、ソ連軍が北海道に上陸することはなく占領されることはありませんでした。

さて、小説ですが、長編小説と言うこともあって、同時並行で複数の主人公が描かれますが、それぞれの運命と言える必然により、占守島へと集まってきます。

徴兵の年齢が上限近く、もう徴兵されることはないだろうと思っていた丙種合格の翻訳本編集者、過去3度の兵役で金鵄勲章をもらう活躍をして、同時に3本の指を無くしたため銃の引き金も引けない元鬼軍曹、事情のある人には徴兵検査で不合格を出し続けてきた良識ある若い医師、南方で死線をくぐり抜けてきた船舶兵、元大本営の参謀ながら、現地視察と称し、なぜかこの島に居座ってしまう謎多き将校、ドイツとの戦いに勝利し、これでやっと故郷へ帰れると思っていたら、シベリア鉄道でそのまま極東の島へ命を捨てに送られてきたソ連兵士などなど、、、

また豊富な海洋資源を生かし、日本国内や兵士に貴重なタンパク源を提供してきた日魯漁業の社員や勤労動員の女性達、銃後を守る兵士の妻や疎開先の学校、殺人で刑務所に入れられていたものの、赤紙が来て故郷の連隊へ向かおうとしているヤクザなども描かれていますので、ちょっとひとつの小説の中で、描かれる人物が多すぎ、ちょっとばかしとっ散らかってしまったような感じです。

しかし、この小説では占守島の戦いそのものや、戦争の悲惨さや不条理だけを訴えかけるのではなく、あの時代の狂ってはいない日本人にスポットライトをあて、小説として著者の考えや思いを読者に伝えたかったのだろうなぁと。

登場人物はすべて架空の人達で、あえて実在の人をモデルにはしなかったようです(たぶん)。それだけに、歴史的事実を元にしたドキュメンタリー小説とも言えず、またソ連の侵略を食い止めたという英雄譚でもなく、したがってエンタテーメント的なものでもありません。

強いて言うなら、太平洋戦争末期の狂っていた日本の軍部と、それを冷静に受け止めていた一部の庶民とを対比して、どんな理由があろうとも戦争することの愚かしさや、一旦動き始めてしまうとそれを停めることの難しさなどを浅田流の小説で示したものでしょう。

今まで「壬生義士伝」や「日輪の遺産」「天国までの百マイル」など多くの作品で泣かされてきましたが、この作品では決してハッピーエンドではないものの、まったく涙は出てこず、著者の意図とは違うかも知れませんが、淡々と始まり淡々と終わってしまった感があります。


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