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「老後資金にいくら必要か?」というお題は限りなく多くの人がそれぞれの回答を示していますが、「もらう人の前提条件があまりにも違いすぎて答えになっていない」というのが実感です。

年金は現役世代の頃に納めた厚生年金や国民年金の月数や、その金額などに応じて、移行期間はあるものの65歳から支給されるものですが、昭和の専業主婦と終身雇用の時代とは違い、フリーターや転職、独立起業、夫婦共稼ぎ、生涯独身など様々な働き方、生活の仕方があり、年金制度がそれに追いついていないということがあります。

例えば、よく年金の支給額に所得代替率という言葉が使われます。この所得代替率とは、「年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すもの」とされています。

つまり政府が目指しているというモデル世帯の代替率50%(実質はもっと低くなる)として、現役世代の年間所得が平均して500万円の人なら250万円(月20.8万円)、800万円の人なら400万円(33.3万円)となります。年金年収が250万円の世帯と400万円の世帯では生活のレベルが大きく違ってきそうです。

またモデル世帯と比べて収入が多かった人(=年金をたくさん支払ってきた人)は、代替率は下がり(つまり減る)、少ない人は代替率が上がるとされています。つまり現役世代の年間所得によって、もらえる年金額をグラフ化するとそのグラフは直線ではないということですね。

多く稼いだ人がより多い所得税を支払う累進課税のような感じで、税を払うときも、そして年金を受け取るときも、より多く稼いだ人は(割合的には)損な役回りをすることになります。これが富の再分配ってやつでしょう。

そしてここで出てくるモデル世帯にちょっと違和感があります。昭和の中頃の高度成長期に考えられた仕組みなのでしょうが、ここでいう標準のサラリーマンモデル世帯とは、

・40年間厚生年金に加入し、その間の平均収入が厚生年金(男子)の平均収入と同額の夫と、 
・40年間専業主婦の妻がいる世帯


とされています。

40年と言うと、22歳で学校を卒業すれば62歳まで厚生年金に加入できる場所で働き続けるということです。

一見すると普通に見えますが、これから中高年世代になる人の中には、途中で起業をして数年間個人事業主となったり、リストラなどで一時的に厚生年金に加入していないパートやアルバイトで数年間働いている人、転職を繰り返してその間厚生年金に入っていない時期がある人も数多く出てきそうです。

なので今までは高卒や大卒で終身雇用が当たり前だったかもしれませんが、今後40年間厚生年金に加入しているというケースは敷居が高そうです。

それに加えて65歳の時点で40年間専業主婦だったという配偶者がいったいどれほどいるのか実態調査をしてもらいたいものです。仮に女性が結婚した後は専業主婦だったとしても、女性の結婚平均年齢は29歳ですから36年間にしかなりません。それに現在は共稼ぎと専業主婦の割合は半々で、今後は政府の方針もあり共稼ぎの世帯の割合が増える(生産年齢人口において)と思われます。

つまりほとんどありもしないモデル世帯で65歳から年間250万程度の年金がもらえますよという話しだけを聞いても、実態と違いすぎて、それでいったい自分の場合はどうなのか?とピンときません。

また他の「老後の蓄えはいくら必要か?」の前提条件として、大きく違ってくるのは、持ち家か借家かで、年間の支出額が違うのが普通です。住まいの地域によっても変わってきますが、ここでは大都市の郊外という設定にします。

ローン返済が終わっている持ち家だと、固定資産税や修繕費、火災保険、マンションなら管理費など含めだいたい年間20~30万円程度の負担でしょう。老朽化による建て替えや大規模リフォームが発生する場合は別途必要になりますが、ここではカウントしません。

借家であれば、家族構成にもよりますが、夫婦だけの世帯でも、管理費や2年毎の更新費など含め年間150万円~180万円程度が必要でしょう。よく借家なら「固定資産税や修繕費を支払う必要がない」というアホなこと言う人がいますが、単に大家が代わりに支払っているだけで、それを負担するのは借りている人、つまり家賃や管理費にしっかりと上乗せされているだけのことです。

借家のいいところは夫婦二人になれば、もっと安いところに住み替えられるというメリットがありますが、よほど不便な場所へでも引っ越さない限り、家賃が今までの半分になることはないでしょう。それに高齢になるとエレベーターのない3階とか4階の安い部屋は無理で、逆にバリアフリーが整った高い家賃のマンションへ引っ越しをしたくなる欲求が高まるかも知れません。専有面積は狭くなっても家賃は変わらないってことも考えられます。

年金年収が例え年間300万円あっても、持ち家で年間30万円(住居費比率10%)の負担で済む人と、借家で年間150万円(同50%)負担する人とでは、老後に必要な貯金額は大きく違ってくるでしょう。

そうした前提条件の違う人達をひっくるめて、「老後には貯金がこれだけ必要!」と書かれているわけですから、いろいろ読んでみると、いったいその試算はどういう根拠で?って思ってしまいます

結局は自分の想定年金額を調べ、同時に年間でかかる費用(水道光熱費、食費、修繕補修費、税金、保険代、医療費など)を12で割って、毎月平均いくらかかるのか?同居している子供がいれば年間どれだけ家にお金を入れさせるのか?など計算してみないと必要貯金額なんてわかりっこなさそうです。

今年59歳になる私のように中途半端な世代だと、63歳からもらえる年金と65歳から支給されるものとに分かれていて、本当に計算がややこしくて困ります。

つまり63歳で年金が出るなら引退できるかって言うと、その時にもらえる年期が年間数十万円で、とてもやっていけず、結局はフルにもらえる65歳までは、年金以外に収入が必要ということです。

もちろん60歳定年時に多額の退職金がもらえる人であれば、年金がフルにもらえるようになる65歳までそれを使ってしのぐことができますが、やはりそれだけでは心配でしょう。

最近になってようやく年金定期便の内容をチェックし、それとは別の企業年金基金の積み立てについても直接聞いて想定年金額を出してもらったりと、ようやく関心が高まってきました。

ちょっと遅すぎた感はありますが、老後に惨めな思いをしたくなければ、早めの計画が必要なのかも知れません。


【関連リンク】
888 火事と高齢化社会の因果関係
834 高齢者向けビジネス(第4部 ボランティア編)
769 相続税の税率を上げると言うこと
680 サラリーマンなら関係ないが、国民年金の滞納率
617 人口減少と年金受給者増加
546 年金受給年齢の引き上げと高齢者雇用




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