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1761
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


今年も読書感想から1年がスタートです。芸がなくてすみません。


グレイヴディッガー(講談社文庫) 高野和明

著者の作品としては初期のもので2002年に単行本、2004年に文庫化されています。今年2023年には「踏切の幽霊」で直木賞候補になり、面白そうなので、早く文庫が出版されるのを待っています。

タイトルの「グレイヴディッガー」は、中世ヨーロッパの宗教裁判によって殺された死者が蘇って、審査した者を殺して回るという伝説に出てくる殺人者の名前ということです。ただこれらは作者の創作だと解説で知りました。

麻薬の売人だった男がトラブルからナイフで刺されて連れ去られます。目撃者の証言からひとりの麻薬中毒で売人から麻薬を買っていた男が捕まり、殺害した犯人を示す数多くの証言と証拠があります。

それとはまったく関係のないところで、主人公は小さな詐欺などを繰り返してきたワルですが、人生を変えたいと思って白血病患者に髄液を提供するドナー登録をし、適合する患者がいることがわかり翌日に病院へ行くことになっています。

その主人公が、金欠で病院へ入院する前に小銭を借りようとホストをやっている知人の東京都北区赤羽にあるマンションに行きますが、そこでその知人が惨殺されているのを発見します。

その知人とは、お互いにそれぞれに自分名義でマンションを借りて、実際に住むのは入れ替わって住むという、犯罪者の悪知恵を使っているため、自分の(名義の)部屋で知人が惨殺されているということになります。

さらにその部屋で呆然としている時、3人の男たちが強引に入ってきたので、殺人者が戻ってきたと思い、窓から逃げだします。

この時から何者かわからない男たちと、部屋に残された知人の死体のため警察の二つから追われることになります。そして翌日には大田区六郷にある病院に入院して全身麻酔で髄液を抜かなくてはそれを待っている患者の命に関わることになります。

東京近郊の地理に詳しくないとわかりませんが、北区赤羽は23区の最北部、病院のある大田区六郷は23区の最南部でもっとも距離があり、通常なら赤羽から京浜東北線で品川、品川から京浜急行で六郷土手という乗車時間約1時間のルートになります。

しかし逃げる主人公はお尋ね者で、タクシーに乗ると逃亡犯の情報提供を求める無線が隠語で入ってきたり、電車では駅の監視カメラに映り込むのと、すでに緊急指名手配となっていて警官がいる駅には近づけないので様々な工夫をしながら、また捕まりそうになりながらも逃げて逃げて・・・

こうした逃亡者が数々のピンチを切り抜けて逃げ回るというのは「逃亡者」(テレビドラマ1963年、映画1993年)が有名ですが、私は子供の頃に見たアメリカのコミカルな連続ドラマ「逃げろや!逃げろ(Run Buddy Run)」(1966年)が一番記憶に残っています。

追いつ追われつドキドキするのが普通ですが、この主人公はなにか天然っぽい感じで、詐欺師らしく人の裏をかこうとフラフラとしていてあまり緊張感がありません。エンタメとしては楽しめますが、逃亡中に携帯電話を何度も使うというのはこの時代だからでしょうね。今ならすぐに場所が特定されます。

★★☆

著者別読書感想(高野和明)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

駐車場のねこ(文春文庫) 嶋津輝

1969年東京生まれで、2018年に短編「駐車場の猫」を雑誌に、2019年にデビュー作「スナック墓場」を単行本で出版をしたというぐらいしか情報の少ない作家さんですが、本著はそれらの短編作品をまとめたもので、文庫化にあたりタイトルも変更されています。

収録されているのは、「ラインのふたり」「カシさん」「姉といもうと」「駐車場の猫」「米屋の母娘」「一等賞」「スナック墓場」の7編でそれぞれ独立した作品です。

日常のさりげない風景や人間関係を独特の視点で切り取った作品集で、どれも肩肘を張らないで気楽に面白く読めます。

印象が強かったのは、「ラインのふたり」と「姉といもうと」で、「ラインのふたり」は、ロマンチック街道と交差するドイツのライン川のほとりで恋人たちが、、、というような話ではなく(そういうのは宮本輝さんにおまかせ)、工場のラインで働く中年女性達の話で、「姉といもうと」は幸田文の「流れる」に触発され女中に憧れを持って家政婦をしている姉と、ラブホテルで働く妹の話です。

女性作家さんらしく、女性の日常や感情の機微、そしてたくましさがうまく文章で表現されていて、読み込むほどジワーと味がしみてきます。

内容的には中高年男性にはあまり向かないかもしれませんが、のんびりと頭をリセットしたいときに読めばスッキリするように思います。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

平凡すぎて殺される(創元推理文庫) クイーム・マクドネル

アイルランド出身の作家さんのおそらくデビュー作品で、原題は「A Man with One of Those Faces」です。元本は2016年に出版されましたが、日本語翻訳版(本著)は少し遅れて2022年に出ています。

アイルランド出身の作家さんの小説では過去にアーナルデュル・インドリダソン著の「湿地」と「緑衣の女」を読みましたがどちらも秀逸でした。また石持浅海著の「アイルランドの薔薇」は、アイルランドを舞台にした小説でした。

映画では「シング・ストリート 未来へのうた」や「デビル」などがアイルランドが舞台となったものでした。

本著はアイルランドのダブリンに住む20代の無職男性が、亡くなった叔母の遺言で遺産の一部を手に入れるためボランティアの社会貢献活動として病院の認知症患者や身寄りのない入院患者の話し相手をしています。

あるときいつもの病院で、看護師の女性に頼まれ話し相手として謎の老人の部屋へ行ったとき、突然誰かと間違われてナイフで刺されるという事件に遭います。どこにでもある平凡な顔をしていることが原因だと思われます。

そしてそれだけならともかく、老人は刺した後に心臓麻痺で亡くなり、殺人の疑いや、その謎の老人が実は過去に大きな話題となった未解決の誘拐事件に関与した疑いのある犯罪者だったことから、その誘拐事件の関係者から秘密を知ってしまったと思われて殺し屋を送られます。

先に読んだ高野和明著の「グレイヴディッガー」は東京で追いつ追われつの逃亡劇小説でしたが、こちらはダブリンやその近郊での逃亡劇小説でした。執拗に追われる秘密がクライマックスで明らかになるなど、なにか似ています。

こちらは比較的書かれた時代が新しいため、携帯電話で位置情報がバレるからと早々に破棄したり、誰も知らないボランティアで知り合ったお金持ちの老婆の家に逃げ込むなど現代的です。

そして未解決だった誘拐事件の真実が明らかになっていきますが、最後は荒唐無稽な感じで、やや興ざめしてしまいました。それでもまったく馴染みのないダブリンの街での追跡劇は楽しめました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

鬼統べる国、大和出雲 古事記異聞(講談社文庫) 高田崇史

鬼棲む国、出雲」、「オロチの郷、奥出雲」、「京の怨霊、元出雲」に次ぐ「古事記異聞シリーズ」第4弾の作品で2020年に新書が出版、2022年に文庫化されています。

出雲と奥出雲についてはすでに読んでいますが、京都はまだ読めていません。できれば順に読んだ方が良かったと後になって後悔しています。

既に2022年に次の第5作目「古事記異聞 陽昇る国、伊勢」が新書で出版されています。来年には文庫で出てくるかな。

しかし「出雲」という1つのテーマで島根県の出雲、奥出雲、京都、大和(奈良)、伊勢とよくぞ引っ張ります、お見事。

元々は、2023年に島根の松江や出雲へ旅行するため、関連する小説を探していて読んだところからスタートしましたが、その後もこのシリーズにすっかりはまってしまいました。

ほとんどの日本人は、「出雲」と言えば、山陰の島根県にある出雲大社を思い浮かべると思いますが、京都や奈良にも出雲を名乗っていた地や出雲地方で重要とされている神々を祀っている神社が多くあり、それはどうして?というのが第3弾と第4弾のテーマです。

実は京都に住んでいた頃、近所に加茂川にかかっている「出雲路橋」というのがあり、旧山陰道ではなく、どうしてこんな場所(京都市内の北部の鞍馬口近く)に出雲路?ってずっと不思議に思っていました。

その謎が明らかになるのは、まだ未読のシリーズ第3弾「京の怨霊、元出雲」ですが、今回の第4弾「大和出雲」にもその理由の一部が出てきました。

そのように、シリーズを飛ばして読んでもそれなりに物語は楽しめますが、やはり順を追って読む方が理解が進みやすそうです。

しかし、古代の神々や皇族、有力者の名前や、それが時代で変形していくなど、素人が入っていくには難解で難易度が高い内容ですが、主人公を女子大学院生として、できるだけわかりやすく解説(推理)されているところが上出来です。

ただ、このシリーズ、文庫カバーのキラキラなカワイコちゃんを描いたアニメチックな絵だけは、おそらく若い人にも気軽に手に取ってもらおうという出版社なりの理由がありそうですが、歴史ミステリーを扱うには中身が軽薄そうに見えるのと、中高年男が手に取るには敷居が高そうです。

★★☆

著者別読書感想(高田崇史)

【関連リンク】
 12月前半の読書 葬式組曲、ちえもん、夜市、歴史探偵 忘れ残りの記
 11月後半の読書 こちらあみ子、戦国武将、虚像と実像、極東動乱、二人のクラウゼヴィッツ
 11月前半の読書 忍ぶ川、定年バカ、二千七百夏と冬(上)(下)、長く高い壁 The Great Wall


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1758
葬式組曲(文春文庫) 天祢涼

1978年生まれの推理小説を得意とされる作家さんの作品で今回初めて読みました。この作品は2012年に単行本、2015年に文庫化されましたが廃刊後、2022年に別の出版社から再び文庫が出版されています。

内容は連作短篇小説で、「父の葬式」「祖母の葬式」「息子の葬式」「妻の葬式」「葬儀屋の葬式」の5篇からなっています。

従業員は4人だけの小さな葬儀屋が舞台で、タイトル通り様々な人の死に関わりながら、一般人にはあまり馴染みがないお葬式の実態や、そこで働くこと、そしてそれぞれの死にまつわる謎や葬儀の遺言などをドラマ化しています。

葬式というと厳かで静謐とした雰囲気がありますが、当然ながらビジネスとして成り立っていて、葬儀屋や僧侶はこのときばかりと失意に打ちひしがれている遺族に対してアレもコレもとお金を使わせることに専念していきます。

葬儀屋の仕事は如何にして他社よりも早く、死亡者とその遺族の元へ駆けつけるかというのが一般的な手法ですから、死亡者の情報が一番早い病院や警察と利権で深くつながっている葬儀屋も少なくありません。

そういうところは病院や警察への謝礼の分だけ割高になるので、できれば亡くなる前に本人があらかじめ葬儀の内容(想定参列者数や家族葬にするとか)を考慮し、ネットの評判も調べて(サクラも多いが)決めておき、もし亡くなったらここに電話をして依頼をすると決めておくのが良さそうです。

私も学生時代に、葬儀屋ではなかったものの、葬儀でよく使われる竹材を扱う店でアルバイトしていたことがあり、発注先や納品先(葬儀場)へ竹飾りをよく配達、設置していたことを思い出しました。タダみたいな汚い竹を私がもみ殻で必死に磨いたものが、葬儀場では何万円にも化けていました。

主人公はその葬儀社を父親から継いだ若い女性社長、葬儀のことに詳しい胡散臭い雰囲気の中年男性、ただひとりの身寄りの祖母を亡くしたばかりの若い男性などです。

1話完結のミステリー小説ですが、驚いたことに最後の「葬儀屋の葬式」でちゃぶ台のひっくり返しがおこなわれますので、それまでの短篇にいくつもの伏線が敷かれているのがユニークで楽しめました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ちえもん(小学館文庫) 松尾清貴

今回も初めて読む作家さんの作品で、2020年に単行本、2022年に文庫化された長編小説です。著者は1976年生まれで、2004年にデビュー、現代物もありますが、歴史物がお得意のようです。

本著は江戸時代に実際に生きた貧しい漁村に次男として生まれ、その後才能を生かして商人になっていく名もなき男をモデルにした歴史小説です。

前半から中盤は、かつて山口県の瀬戸内にあった小さな漁村櫛ケ浜(現周南市櫛浜町)で廻船問屋に生まれ、病弱で次男ゆえ本家の厄介者と言われていた少年が、仲間内では体力では負けるが知恵で勝負とばかりに頭角を現していきます。

そして商才を発揮し、生まれ故郷を離れて長崎の香焼島(こうやぎしま、現長崎市香焼町)に新たな漁場を開き、役人達の命令で本意でないものの唐や南蛮との抜け荷の脱法行為をしながらも事業を拡大していきます。

鎖国中の当時は、幕府が認めた輸出入以外、外国船との抜け荷は重罪で、見つかれば関係者全員が市中引き回しの上で斬首と厳しくなっている頃です。

そしてクライマックスは、長崎で座礁し沈没したオランダの商船引き揚げ法を考え提案します。そのオランダ商船とは抜け荷をおこなう予定になっていて、他人事ではなかったこともあります。

表向きは、余所者の身でありながら漁場を開くことを許してくれた長崎にお礼をしたいということと、なにかと因縁をつけてくる地元の有力者の排除です。

ちえもんと村人から呼ばれて信頼を集めていきながらも、子供の頃から仲が良く未来を語り合った親友を海で亡くしていて、その想いを引きずりながら、再び生まれ故郷の海へと戻ってくるラストは泣かせます。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

夜市(角川ホラー文庫) 恒川光太郎

1973年東京生まれの作家さんで、32歳の時にこの作品でデビューされました。この作品は日本ホラー小説大賞を受賞し、さらに直木賞の候補作にも入る新人離れした作品と言われています。ジャンルとしてはホラー小説がお得意のようです。

個人的には怖がりなのでホラー作品はあまり好きではありませんが、本作品はホラーというより、ファンタジー小説または幻想小説と言えるもので、特に背筋が凍るような思いはしません。

本作品は2005年に単行本、2008年に文庫化されていて、表題の「夜市」と「風の古道」の中篇2篇が収録されています。

この2作品はまったく別物ですが、内容的には非常に近く、人間がすぐ近くにある異世界へ入り込むことによって様々なことが起きていくという話です。欧米風のファンタジーというよりは、水木しげるの妖怪の世界に近いかも知れません。

「夜市」では昔、弟と一緒に入り込んだ異世界で、何かを買わないと元の世界に戻れないことから、人さらいに弟を売って戻ってきた青年の苦悩と贖罪、「風の古道」では、友人とともに冒険のつもりで入り込んだ異世界の古道で、その古道で産まれたために戻れず放浪を続ける青年と一緒に旅をする話しです。

どちらもハッピーエンドとは言えませんが、それでも嫌な感情が湧いてくるものではなく、やっぱりホラーとは思えない異世界幻想小説というものでしょう。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

歴史探偵 忘れ残りの記(文春新書) 半藤一利

著者は一昨年2021年に90歳で亡くなっていますが、ジャーナリストとして、また作家として少年時代に自身戦争を体験したことや、戦争に関わった人を仕事で取材した経験などを生かした作品を多く残しています。

本著も、様々な雑誌や広報誌などに書いたエッセイをまとめたもので、かなり繰り返しで重なっている部分がありますが、戦争中の貴重な話がいろいろと参考になります。

過去に読んだ「日本のいちばん長い日」と「ノモンハンの夏」の感想は、著者別読書感想(半藤一利)にまとめてあります。

また著者の配偶者が夏目漱石の孫ということもあり、夏目漱石に関連した作品も数多くあります。

この2021年に出版されたエッセイ集では、著者が戦前の下町の向島生まれで、戦争中の浅草や銀座、そして東京大空襲で逃げ惑った話など、貴重な体験談が読めます。

またこのエッセイ集シリーズには「歴史探偵 昭和の教え」と「歴史探偵 開戦から終戦まで」(いずれも2021年刊)の続編があります。機会があればまた読んでみたいです。

★★☆

著者別読書感想(半藤一利)

【関連リンク】
 11月後半の読書 こちらあみ子、戦国武将、虚像と実像、極東動乱、二人のクラウゼヴィッツ
 11月前半の読書 忍ぶ川、定年バカ、二千七百夏と冬(上)(下)、長く高い壁 The Great Wall
 10月後半の読書 にぎやかな未来、凪の光景、コブラ(上)(下)、百万のマルコ

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1756
こちらあみ子(ちくま文庫) 今村夏子

2010年に発表したデビュー作「あたらしい娘」がいきなり太宰治賞を受賞し、タイトルを「こちらあみ子」に改題し、別の短篇を追加した単行本を出版した2011年には三島由紀夫賞を受賞しています。

2014年に文庫版が出版され2022年に大沢一菜、井浦新などの出演で映画化されています。

この2014年に文庫が出てからはしばらく休筆状態でしたが、2016年以降、主として短篇集がポツリポツリと発表されています。

そして2019年に出版した「むらさきのスカートの女」で芥川賞を受賞しています。

広島出身の著者で、その子供の頃の思い出やエピソードがうまく使われている小説です。したがって登場人物の口調は広島弁です。

女性の子供の頃のイメージは、妹や姪など近しい女の子が周囲にいなかったこともあり、私にはイマイチ実感がありませんが、小中学生の頃の主人公あみ子の自由奔放な行動やぶっ飛んだ思考パターンはアルアルなのでしょう。変わり者には違いないでしょう。

タイトルは、まだ小学生の頃にトランシーバーを買ってもらい、「こちらああみ子、応答せよ!」と語るところからつけられています。

実は自分も小学生の頃にオモチャのトランシーバーをクリスマスだったか忘れましたが親にリクエストをして買ってもらったことがあり、小説と同じく、最初は兄とやりとりし、次第に誰も相手をしてくれなくなり、ザーザーと音を立てるトランシーバーに向かってひとりで喋っていた記憶がよみがえってきました。まるで、そのシーンは自分の子供の頃を見ているようで驚きました。

子供とは言え、人の感情や思考に深く入り込んだ内容の小説は、純文学的でもあり、自叙伝的でもあり、読書でしか拡げることができない(と思っている)、他人の感情の流れや生き方をまざまざと見せつけられ、様々な考えが頭の中をよぎっていきます。

著者の狙いではないかも知れませんが、そうした読者に考えさせることができる文学というのは読むとなにかお得感がいっぱいな気がします。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

戦国武将、虚像と実像(角川新書) 呉座勇一

著者は1980年生まれとまだ若い歴史学者さんですが、すでに多くの書籍を書いておられ、テレビでもNHK BSの「英雄たちの選択」などにもゲスト出演し、学者にしては野心を強く感じる方です。

ちょうど10年先輩の歴史学者磯田道史氏(慶応大出身)の後釜を狙っているような気がします。

東大卒の著者としては学者として負けたくはないでしょう。

タイトル通り、巷で知られている戦国武将の真の姿とは?というテーマで、様々な古い文献や資料から読み解いています。

ただその記述が正しいのか間違っているのかはあくまで著者の想像でしかありません。

本著で取り上げられている戦国武将は、お馴染みの
1.明智光秀
2.斎藤道三
3.織田信長
4.豊臣秀吉
5.石田三成
6.真田信繁(真田幸村)
7.徳川家康
の7人です。

歴史小説やドラマ・映画では、作家や脚本家が作り上げた想像上の戦国武将が登場しますが、時代によってその姿は大きく変わってきます。

特に戦国時代の後の江戸時代では、神君・徳川家康を英雄視し、徳川家を持ち上げ忖度した内容の記述が多くなり、江戸時代が終わったあとの明治時代は一転して尊皇派や主君への忠義者が名誉挽回を果たし、大戦前には尊皇はもとより、国家のためなら命を投げ出し、朝鮮や中国への侵攻した武将が高く評価されます。

そして戦後にはまたガラリと変わり、革新や進取、合理主義、部下思いなどが優れた武将とされていきます。

我々、平成や令和に生きる人達は、多くは昭和時代以降に書かれた小説を読み、それを元にしたドラマや映画を見ることになりますので、本著で触れられている戦国時代や江戸時代、明治時代に書かれた書籍や資料で現される戦国武将の姿は違ったイメージとなります。

そうした時代ごとに、評価がどう変わっていったのかという話しがメインで、本当はどうなの?というのは結局よくわかりません。

そりゃそうです。その時代に生きたら現在とは価値観も社会情勢も物事の善悪すらも違っていて、さらに小説や記録を書いて残した人の立場や思想によっても変わりますから、それで400年以上前の武将達の性格を知り、評価をするのは難しいものです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

極東動乱(ハヤカワ文庫) デイヴィッド・ブランズ&J・R・オルソン

2019年に米国で出版された本作の原題は「Rules of Engagement」で、直訳すると「交戦規定」となります。著者は二人で、ふたりとも海軍兵学校出身の元海軍士官という変わり種の作家さん達です。日本語版は2022年に発刊されています。

そういう職業軍人だったことから、本著で重要なポイントとなる軍事シミレーション、特に軍隊用の最新ネットワークシステムや世界中の軍隊が躍起になっているハッキング合戦など、リアリティのある内容となっています。

内容はタイトルで表現されている通り、北朝鮮に亡命している天才的テロリストが、ロシアの軍需産業マフィアから極東に軍事的な緊張をもたらして欲しいという依頼があり、中国人民軍、日本の自衛隊、そしてアメリカ海軍のネットワークに自立型のウイルスを仕込むことに成功します。

そして公海上を飛ぶ米国海軍の哨戒機や、自衛隊の護衛艦などに対し、ニセの指令で中国空軍が突然ミサイルを撃ってくるという事態が発生し、全面戦争に陥る前に天才テロリスト対アメリカの若き士官候補生チームとの電子戦が始まります。

もちろんアメリカ人が書く大衆受けを狙った戦争小説ですから、最後はどうなるかは言うまでもないことです。

現代の戦争は、ウクライナやガザで起きている従来型の大砲やミサイル、戦車、歩兵などを使ったものが現実としてありますが、この小説では、あくまでもスマート?に、電子戦で優位に立てば戦争に勝てるという綺麗事のような内容にちょっと現実離れした話しで気持ちが乗っていきません。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

二人のクラウゼヴィッツ(新潮文庫) 霧島兵庫

1975年生まれの著者の小説は今回初めて読みますが、過去にはいくつか時代物の作品を書いておられます。そしてなぜかは不明ですが、今年2023年から名前を野上大樹に変えると発表されています。

文庫の解説に書いてありましたが、著者の前職は自衛官で、陸上自衛隊で攻撃ヘリAH-1S(通称コブラ)に乗っていたというから、著者の描く戦記物には独自の視点や発想があるのだろうと思います。

本著は、タイトルでもわかるとおり、「戦争論」で有名な19世紀前半に活躍したプロイセン王国の陸軍軍人カール・フォン・クラウゼヴィッツを描いています。

2020年に「フラウの戦争論」として単行本が出版された後、2022年にタイトル名を変更して文庫化されました。「フラウ」とはクラウゼヴィッツの妻の名前(愛称?)です。

小説では、フランスの皇帝ナポレオンから侵略され、何度も激突するプロイセン王国の軍人として活躍している時代と、もうひとつは、ナポレオンが失脚し流刑されてフランスとの戦争が終わり、左遷に近い兵学校の校長として余生をおくりつつ、ナポレオンとの数々の戦争を元にした「戦争論」の論文を書いている時代との2つが交互に出てきます。

その兵学校の校長として勤務中は、その仕事に鬱々としながらも妻と一緒に平和に暮らしながら論文をまとめていますが、隣国のポーランドで暴動が起き、再び戦争の危機が訪れて参謀として出征することになります。

しかしその戦争中にコレラが流行り、1831年にあっけなく戦地で病死してしまいます。

そして時代が過ぎて、妻のクラウゼヴィッツが夫の残した「戦争論」を出版するために駆けずり回ることになるという物語でした。

小説の中では、日本人にはほとんど馴染みがない18世紀初頭に起きたナポレオンと欧州諸国との戦争、イエナ・アウエルシュタットの戦い、アイラウの戦い、ボロジノの戦い、グロースゲルシェンの戦い、ライプツィヒの戦い、リニー、カトル・ブラの戦い、ラ・ベル=アリアンスの戦い(通称ワーテルローの戦い)が詳細に地図入りで説明されています。

ちょうど今、リドリー・スコット監督の大作映画「ナポレオン」が公開されていて話題になっていますので、先にこの本を読んでから映画を見ると双方からの視点で見ることができてよくわかるかも知れません。

聞き慣れない地名や名前が多くて読むのはたいへんですが、1820~1830年頃というと日本では江戸時代で天保の大飢饉(1832年)などが起きた鎖国時代の真っ只中で、そのような中で欧州ではこのような激動が起きていたということを知れて歴史ファンは大いに楽しめると思います。

★★★

【関連リンク】
 11月前半の読書 忍ぶ川、定年バカ、二千七百夏と冬(上)(下)、長く高い壁 The Great Wall
 10月後半の読書 にぎやかな未来、凪の光景、コブラ(上)(下)、百万のマルコ
 10月前半の読書 太陽は気を失う、ジャイロスコープ、一億円のさようなら、七人の暗殺者


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1753
忍ぶ川(新潮文庫) 三浦哲郎

著者の小説を読むのは今回が初めてですが、1961年の芥川賞受賞作「忍ぶ川」を含む同年に単行本が出版された短篇集です。単行本とその後に発売された文庫版とでは収録作品に違いがあります。

著者は戦前の1951年生まれで自伝的小説が多い青森出身の作家さんですが、年が離れた6人兄弟の末っ子で、まだ幼い頃に二人の姉が相次いで自殺、二人の兄は失踪し行方不明という過酷な子ども時代を過ごしています。

表題作の「忍ぶ川」を含め「初夜」「帰郷」「団欒」「恥の譜」「幻燈畫集」「驢馬」の7篇が収録されていて、1961年から1934年に発表された小説で、その多くが自伝を元にした内容です。

タイトルの忍ぶ川はどこか地方の川の名前か愛称かと思っていたら、大学生時代に東京で下宿をしていた時に、貧乏なのに酒の勢いで行った少し高級な料理屋の店名でした。

「忍ぶ川」では、忍ぶ川で仲居の仕事をしていた女性を見初め、収入のない学生時代に結婚するという無茶なことをします。

貧困と、差別や因習が残る田舎の中で、血のつながった家族の自殺や失踪という実際に経験してきたことを元にして書かれているので、時代が違うとは言えリアリティがあります。

「初夜」と「帰郷」はその続編という扱いで、東京の大学を休学して実家の青森に戻り、身内だけのささやかな結婚をして近くの温泉へ新婚旅行へ出掛けます。その後、東京で仕事が見つかり妻と子を呼び寄せて暮らしますが、父親が危篤となり帰郷することになります。

最後の作品「驢馬」はこれらの中では全く異質のもので、太平洋戦争中に満州から留学生という扱いで青森にやってきた満州生まれの主人公が、狂っているとしか思えない日本人に、追いつめられて自分が狂ったフリをする必要に迫られるという内容で、一番読み応えがありました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

定年バカ(SB新書) 勢古浩爾

過去に「定年後のリアル」(2010年)、「定年後7年目のリアル」(2014年)を読み、自分の定年後を見ているようで、また考え方について参考になることが多く、ファンになりました。

2018年12月後半の読書と感想、書評(定年後のリアル)

2019年7月前半の読書と感想、書評(定年後7年目のリアル)

著者はすでに50冊近い書籍を出版されていて、それだけでも凄いなと思いますが、大ヒットしてその後続々と出て7冊にも達する「定年」本で、しっかりと印税生活をされているような気がします。羨ましい限りですが、機を見るに敏で能力がある方なのでしょう。

本著は2017年に出版された柳の下狙いの「定年」本ですが、これがまた面白くて、学者や評論家などが書いた「定年本」を徹底的にこき下ろしています。リアルな定年後を知らない奴が勝手なこと言うなとばかりです。

それらのこき下ろされた定年本のいくつかは私も過去に読みましたが、著者の定年本に比べるとリアリティがなく、薄っぺらで読んだそばから記憶には残っていませんが、著者の「定年のリアル」はいつまで経っても記憶に残っています。そういうことが言いたかったのでしょう。

だいたこうした定年本を書いている人(著者)は、一流大学を出て一流会社に就職し、その後は独立してカタカナの事業をしている人か、世の中をまるで知らない学者先生と相場が決まっていますので、中身は空疎で机上の理想論が上滑りしている感じです。

読者の年齢や年収、健康状態、雇用延長、年金金額、配偶者の収入、資産、居住地など様々なので、定年前後に「あーしろ、こーしろ」というのは難しく、どうしても自分が考える理想の定年後を述べるという形になるのでしょう。

その点、著者の定年本に書かれているのは、「自分の定年後はこうだった」というリアルな姿で、それを知って「自分ならこうする、こうしたい」という思慮を導いてくれるという点で優れています。

サラリーマンを長く勤め上げ、定年で辞めたというホワイトカラー限定の定年実例と言えるので、それに近い定年を迎えた人やまもなく迎える人の参考にはなりそうです。

余計なお世話ですが、出版社SBクリエイティブにはまともな編集者や校正者がいないようで、ミスがそのまま残っているのが目立ちます。著者は悪くないです、出版社がプロの仕事をしていないだけです。

57ページ 誤「なにもするこがなく」→正「なにもすることがなく」
137ページ 誤「なくせばい」→正「なくせばいい」
189ページ 誤「告別式は・・」→正「送別会は・・・」

など、素人がサクッと読んでいて3つも見つかるので、プロの校正者が校正すればその何倍かの誤字や誤用が見つかると思います。名門出版社の岩波文庫や新潮文庫では、プロの校正者や編集者が仕事をやっているので誤字や誤用はほとんど見つかりません。

SBCさん、安く使える校正者がいないのなら、特別な訓練を受けていない素人ですけどやってあげますよ。って私のブログも誤字誤用だらけで信用はないでしょうけど。

★★☆

著者別読書感想(勢古浩爾)

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二千七百夏と冬(上)(下) (双葉文庫) 荻原浩

2014年に単行本、2017年に文庫が出版された長編歴史小説です。歴史と言っても現代(2011年)と縄文時代の終盤近い2700年前とのふたつの時代が舞台です。

主人公は、現代は新聞社の北関東と思われる地方局に勤務する若い女性記者と、2700年前は石器を使って狩猟をメインとしている小さな村の少年です。

縄文時代というのは歴史の中ではすごく長く、諸説あるものの現在から1万6000年ほど前から2500年前までの1万3500年ほどが続きました。縄文時代の特徴は、石器だけではなく土器や竪穴式住居、弓矢などが特徴です。

1万年以上続いた縄文時代から、渡来人の影響で食糧生産の稲作や鉄器などが特徴の弥生時代へ変わるタイミングは、なにかのきっかけで一気に生活風習が変わってしまうというものではなく、おそらく何百年もそれぞれの時代が並行していたはずです。

著者はそこに目をつけて、狩猟主体の縄文部族と、海を渡ってやってきて、農耕を始め米を主食とする農耕部族のふたつが交わる瞬間をドラマ化していています。これがまるっきりの創作だというのは当然ですが、まるで見てきたような描き方で読み応えがあります。

前半部分は縄文時代の少年の話が長く続きますが、そこで使われる言葉が現代の日本語と共通する部分があり、著者の苦心の跡が読み取れます。例えば「イー→イノシシ」「ヌー→犬」「クムゥ→熊」「カァー→鹿」「クヌコ→キノコ」など。誰もそのことを証明したり反論できません。

ちょっと前半部分で間延びして、しかも意味のわからない縄文時代の言葉が出てきて読みづらいですが、慣れてくる中盤頃からは感情移入ができてサクサク読めるようになります。ちょっと我慢が必要ってことです。

現代の新聞記者が出てくるのは、ダム工事現場で、縄文人と弥生人が手をつないでいるような人骨が発見され、その時代を超えた二人のことを考えるという流れです。

前・中盤の密度の濃い内容と比較すると、最後はちょっと淡泊な感じでしたが、面白かったです。

★★★

著者別読書感想(荻原浩)

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長く高い壁 The Great Wall(角川文庫) 浅田次郎

著者の作品はかなりの数を読んできましたが、おそらく初めてではないかと思われる犯罪ミステリーで、ホームズ役の探偵作家と、ワトソン役の東京帝大出の文系エリート将校という組み合わせで事件を解決?する話です。

小説雑誌「野性時代」に連載後、2018年に単行本、2021年に文庫化されています。

単に戦場ミステリーだと「日輪の遺産」(1993年)なんかはそれに近いかも知れませんが、探偵が事件の謎に迫るというのは初めてのような気がします。

タイトルの「長い壁」とは、万里の長城を指していて、時代は日中戦争が泥沼に入りつつある1938年秋の北京から物語は始まり、万里の長城に駐屯し、匪賊や共産党軍の攻撃に対処していた日本陸軍の兵士10名が、何者かに殺されてしまうという事件が起きます。

単に敵に攻撃を受けて戦死した状態ではなく、血の一滴も流さず銃器の使用跡もなく、見張り番をしていた全員が同じような謎多き死に方です。

そこへ通称ペン部隊として新聞社の嘱託として北京へ来ていた探偵小説で人気作家の主人公が、護衛兼見張り役として軍の検閲班長と一緒にその事件現場へ向かうことになります。

ミステリーなので詳細を書くのは野暮というものですが、ヒントはこの万里の長城で守備を任されたのは、本隊の足手まといになるならず者だったり犯罪者などで、指揮官も士官学校を出たばかりで実戦経験がない若い見習士官だということ。

主人公達は、事件現場近くにいた軍隊の警察を担っている憲兵曹長とともに、殺された10名以外の他の分隊長らから聴取をおこない、事件の謎に迫っていくことになります。

舞台のバックボーンをもう少し書いておくと、1930年代に満州を併合した日本は、1937年には中国北東部の盧溝橋事件が発端となり支那事変(日中戦争)が起き、その後全面戦争へと発展していきます。

武力衝突後に首都北京を攻略後も、中国政府(中国国民党軍)は南下して戦い続け、北京周辺や北東部では日本軍に反抗する中国共産党が組織だってゲリラ攻撃をしかけ、また広大な満州から中国北東部にかけて発生した抗日武装集団(匪賊)がいて、日本軍はそれらに悩まされ続けます。

本著に出てくる張飛嶺は架空の場所ですが、調べると現在も昔のまま残っている司馬台長城周辺がモデルのようです。

角川書店のサイトにも、司馬台長城を見学した時の著者の写真が載っていて、長城の巨大さがよくわかります。

万里の長城を舞台に、従軍作家が日本軍の闇に挑む。浅田次郎作品初の戦場ミステリ(カドブン)

★★★

著者別読書感想(浅田次郎)

【関連リンク】
 10月後半の読書 にぎやかな未来、凪の光景、コブラ(上)(下)、百万のマルコ
 10月前半の読書 太陽は気を失う、ジャイロスコープ、一億円のさようなら、七人の暗殺者
 9月後半の読書 見捨てられた者たち、日傘を差す女、信長の血脈、「脱・自前」の日本成長戦略


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にぎやかな未来(角川文庫) 筒井康隆

1960年代に雑誌等で掲載されたショートショートを1冊にまとめたもので、最初は1968年に出版され、その後、文庫などが何度か再版された今や大御所となった著者のデビューまもない時期の作品集です。

基本はSFやファンタジーもので、ブラックユーモアの効いたものあり、刹那的な話あり、ディフォルメした未来をよく表しているものもあり、また意味不明なものもあったりと結構楽しめます。

各作品の感想はとにかく数が多くて(41篇収録)いちいち書けませんが、書籍のタイトルにもなっている「にぎやかな未来」の内容だけ少し触れておくと、マスメディアが力を持った未来の話しで、テレビやラジオの放送中にはCMばかりが流れ、買ったレコード(当時はまだCDなんかなかった)にも曲の途中にCMが挟まれようになり、さらに聞きたくないと思っても、法律で常時ラジオをつけておかなければならないと決められ、世の中、どこへ行っても広告の嵐の中におかれます。

これを読んだとき、今テレビをつける度にいつも思うのが「いつもどのチャンネルもCMばかり」で、測ったわけではありませんが、番組のおよそ半分はCMではないかなと思います。公共放送で受信料も払っているNHKですら、自局の放送予定の番組案内や、局の取り組み活動などのCMを流し続けています。

高い料金を支払う有料ネット放送でもCMが入ると嘆いている人がいましたし(私は有料がバカらしいので加入してないから知らない)、とにかくテレビでもラジオでもネットでもつなぐと視聴者は広告の大波にのまれてしまいます。

60年以上前に書かれた近未来のブラックコメディSF小説が、いよいよ現実化しつつあるのだなぁとこの小説を読んで感心しきりです。

★★☆

著者別読書感想(筒井康隆)

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凪の光景(文春文庫) 佐藤愛子

著者は大正生まれ、今年99歳の大御所で、1969年に「戦いすんで日が暮れて」で直木賞を受賞されています。戦前生まれの方にしてはかなり奔放でユニークな方のようで、ご自身の人生も波瀾万丈の中で生きてこられたという感じです。

今回の作品は、1987年から1988年まで朝日新聞に連載された長編小説で、2022年に文庫が発刊されています。1990年と1992年にはテレビドラマが作られています。

小説の中では作者と同じ、戦前生まれの老夫婦と、同じ敷地に住む息子夫婦の二組の夫婦がそれぞれ語り部となり、日々の生活や仕事などが描かれています。

教師生活を定年で辞め隠居生活をしている夫は、碁会所の友人へ後妻の世話をしようと奮闘したり、その妻でわがままし放題で横暴な夫と距離を置いて自由を手にしたいと考え、息子は自動車販売会社で売上ノルマと部下の管理に悩み、その妻はキャリアウーマンとしてバリバリ働く一方、子育てにはあまり関心がないという状態です。

老夫婦の妻は、隣に住むハンサムな浪人生にほのかな恋心をいだき、また長く横暴な夫に仕えてきたことに疑問を感じて離婚や別居を考えるようになり、息子は職場で受付の若い女性の悩みの相談を聞いていたことからやがて深い関係に陥ったりと、著者のリアルと同様に波瀾万丈な展開となっていきます。

それにしても内容はタイトルの「凪」とはまったく逆で、二つの夫婦関係にヒビが入り、それぞれの人生を考え直すことになっていきます。

朝日新聞を購読している読者の多くは、私を含めて中高年夫婦というパターンが多そうですから、身につまされるような内容で、心穏やかに読めない人も少なくなかったでしょう。

ただ一箇所、え!?と思ったのは、40年間教師や校長として奉職してきた男性が受け取っている年金が月30万円というのにはビックリ。

教師だと平均年収もそれほど高くはなかったと思いますが、1980年代にはそんなにもらえたのでしょうか?今だと40年間勤め上げてもその半分ぐらいでしょう。

いずれにしても広い敷地に自宅がある恵まれた環境で、有り余る年金をもらって息子夫婦や孫に囲まれ悠々自適の老後生活をおくる主人公達で、今の若い世代からすると、どこかよその国の話?と思ってしまいそうです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

コブラ(上)(下)(角川文庫) フレデリック・フォーサイス

2011年に前作の「アフガンの男」を読んで以来、12年ぶりのフォーサイスです。本作「The Cobra」は2010年に出版され、日本語版は2012年に単行本、2014年に文庫版が出版されています。

アベンジャー」(2003年、日本語版2004年)で主役だったベトナム帰りの弁護士デクスターと因縁深かったCIA捜査官(通称コブラ)がタッグを組んで、コロンビアのマフィアが支配するコカインの欧米への密輸ルートをアメリカ大統領命令でおこなうという痛快ドラマです。

米国と英国がタッグを組み、無人機を使ってコカインの密貿易の海路や空路を見つけ出して断ち、不正を働く税関官吏を罠にはめ、さらにコロンビアのマフィア幹部同士が誰かが情報を漏らしていると疑心暗鬼に陥るよう仕組んでいきます。

こうしたコロンビアマフィアを悪者にしてアメリカが叩く作品はいくつかありますが、ずっと以前に読んだトム・クランシー著「いま、そこにある危機」(1989年)にも詳しく書かれています。それらを最新の戦術でアップデートさせた内容でした。

しかしすべてが予定通りにうまくいきすぎて、そんなに簡単じゃないだろ?と思わなくもありませんが、そこは単なるエンタメフィクションということで納得しておくしかありません。

ヒヤヒヤ、ドキドキすることもなく、あっさりと麻薬戦争は勝利に終わりますが、最後にちょっとだけ意外な展開が待ち受けているのは読んだ人だけのお楽しみと言うことで。

★★☆

著者別読書感想(フレデリック・フォーサイス)

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百万のマルコ(集英社文庫) 柳広司

1篇を除いて2002年から2005年に小説すばるに掲載され、1篇だけ割と最近の2022年にweb集英社文庫に掲載された歴史物連作短編小説集です。

基本構成は、「東方見聞録」のマルコ・ポーロ(1254年頃~1324年)が、アジアへの旅の後にベネチアに戻ってからの話しが中心(1篇だけ東方への旅に出る前の話しが出てきます)で、ジェノバとの戦争で捕虜となり、ジェノバの収容所に閉じ込められている時(実話)の話しです。

実際にマルコ・ポーロには、イル・ミリオーネ(百万男)というあだ名がつけられていましたが、その理由は様々で定かではない(Wikipedia)ものの、本著では「ほら吹き男」という意味で使われています。

1話1話が、マルコが東方の地、大都(現在の北京)で権勢を振るう大ハーン(クビライ)に謁見後、相談役として仕えていた頃の驚くべき話し、言い方を考えるとホラ話のような話しを、戦争捕虜としてなにも楽しみがない娯楽の一つとして、同じく捕虜になっている僧侶や貴族、労働者などに話しをしていくという流れです。

現実にも、商人の息子マルコ・ポーロは、父親と叔父とともに東方へ商売のために訪問し、謁見したクビライに気に入られしばらくそこで過ごし、またクビライの依頼で近辺の国へ使節として訪問しています。そして故郷ベネチアへ帰ってきたら、敵のジェノバ軍に捕まり戦争捕虜として収容所に収監されています。

東方見聞録は、その捕虜収容所でマルコが語った小話を、同じく収監中の作家ルスティケロ・ダ・ピサが話しをまとめて出版したものが大ヒットしました。

したがって、小説とは言え、ある程度は歴史上の人物や出来事をうまくフィクション化していて、面白い内容です。

こうした歴史上起きた様々な事実や実在した人物を主人公としたり題材に使った作品は結構好きで、著者の作品「新世界」(2003年)では原爆の開発者オッペンハイマーが登場します。

今回の本著はややコミカルな要素があって少し違っていますが、著名人を用いた作品として浅田次郎氏の「終わらざる夏」(占守島守備隊)、「一刀斎夢録」(新選組の隊員だった斎藤一)、松岡圭祐氏の「黄砂の籠城」(北京駐在武官・柴五郎)、「ヒトラーの試写室」(特殊撮影・円谷英二)、服部まゆみ氏の「一八八八切り裂きジャック」(エレファントマン、森鴎外など)、原田マハ氏の「暗幕のゲルニカ」(ピカソ、ドラ・マール)などの小説が面白かったです。

ただ、短篇の頭に繰り返して出てくる前置きは、雑誌に掲載されるときは仕方がないでしょうけど、あらためて文庫化するときには、端折ってくれると(実際は読み飛ばしましたが)読者に優しいなと思いました。

★★☆

著者別読書感想(柳広司)

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