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岸辺露伴 ルーヴルへ行く  2023年 「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会
監督 渡辺一貴 出演者 高橋一生、飯豊まりえ、長尾謙杜

岸辺露伴 ルーヴルへ行く元の原作は荒木飛呂彦氏のコミック「ジョジョの奇妙な冒険」からスピンオフした「岸辺露伴は動かない」シリーズで、NHKがテレビドラマ化をしていますが、その製作メンバーで映画化されたものです。

NHKはドキュメンタリーが好きな私なのですが、連続ドラマは時間がかかり面倒なのであまり見ないため、このシリーズもまったく見ていませんでした。

漫画も読まず、ドラマも見ていない状態で、いきなり映画を見て理解できるかな?と思いましたが、問題なく楽しめました。

ルーブル美術館の中でロケが行われ、おそらく閉館後の人がいない時間帯にモナリザやニケなどの作品の前で撮影がおこなわれています。普段は有名な作品の前はものすごい人でゆっくり見られないと聞いたことがあります。

オークションで手に入れた作品の裏に「ルーブルで見た黒」という意味のフランス語が書かれていて、その謎を調べるためルーブルへ向かいます。

露伴「ルーブルへ行く」
編集者「え?ルーブルってフランスの?」
露伴「ルーブルと言えばそれしかないだろ?」

という会話がなされますが、作者はご存じなかったのか、ルーブルはフランス以外にもあります。私はその三重県にあるルーブルへ行ったことがあります。

ルーブル彫刻美術館
ルーブル彫刻美術館

ま、これは半ばジョークみたいな感じですが、運営者はいたって真面目なだけにそれなりに楽しめます。ただロゼッタストーンがデンと置いてあり、それは大英博物館だろ?とツッコミたくなります。

映画は江戸時代の絵描きが殺された妻の無念を真っ黒な絵に怨念を込めて描いた作品が海外に渡り、その後人知れずにルーブルの倉庫の中で見つかり、それを見た人間が次々と過去の妄想に襲われるといういたって漫画に向いた内容です。

贋作とか、怨念とか発狂とか、よくルーブルが撮影協力したものですが、過去からいろいろと協力関係のあるNHKの依頼だと断れないでしょう。

そういえば小説原作の映画「ダ・ヴィンチ・コード」はルーブル美術館の中で館長が謎の死を遂げるという刺激的な内容でした。この映画は良かったです。

★★☆

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ハドソン川の奇跡(原題:Sully) 2016年 米
監督 クリント・イーストウッド 出演者 トム・ハンクス、アーロン・エッカート

ハドソン川の奇跡2009年1月にUSエアウェイズ1549便(機種エアバスA320)が離陸してすぐ鳥の集団の中に入ってしまい、2機のエンジンが両方とも停止してしまい、極寒のハドソン川に不時着させ、乗客乗員155人全員が無事に救出された実際に起きた航空機事故の映画化です。

バードストライクで両エンジンの出力が急速に低下という過去に例がない事態に遭遇し、連絡した管制塔からは空港へ引き返すか別の空港へ向かうよう指示されますが、そこまで飛べないと判断した機長と副機長は、真下に見えたハドソン川に着水することを決定します。

姿勢を崩さずうまく着水しますが、真冬のハドソン川で、長く水に浸かっていると凍死を免れず、機体が沈む前に乗員乗客は全員が主翼の上や脱出用スライドの上に避難し、救助に駆けつけてくれたフェリーボートや観光船に次々救助されていきます。

その判断に、航空機事故調査委員会の公聴会では、コンピュータシュミレーションや人間が操縦するフライトシュミレーターでも空港へ引き返すことが十分に可能だったのではないかと機長の判断ミスを指摘します。

しかし今回のように離陸と同時に両エンジン停止という過去に例のない事態で、異常が発生してからエンジンの再始動を試みたり、補助エンジン始動など、緊急時ハンドブックを見ながら様々な行動や判断をしなければならず、乗客の命の責任を負わず、単に異常が発生してすぐに空港へ引き返す練習を何度もしたフライトシュミレーターの結果だけでは比較にならないことを主張します。

実際に、バードストライクが起きて様々な判断や検討に要する35秒後に空港へ戻る飛行をシュミレーターでおこなった場合、滑走路手前で墜落することがわかり、機長の判断が正しかったことが証明されます。

英雄を称えた映画ですが、脇には家族の話や乗客の絆など、また機長の若き頃の経験なども挿入され、なかなか見どころの多い映画でした。

★★☆

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ケイン号の反乱(原題:The Caine Mutiny) 1954年 米
監督 エドワード・ドミトリク 出演者 ハンフリー・ボガート、ホセ・フェラー

ケイン号の反乱タイトルの「ケイン号」とは、太平洋戦争中のアメリカ海軍が保有しているかなり老朽化した駆逐艦の名称で、その艦船で起きる新任艦長と部下たちの葛藤のドラマです。

前任の艦長は、規則にあまりうるさいことを言わなかったため、服装などの乱れが日常的にありました。

新任でやってきた新艦長は規律にうるさく、些細なことでも大げさに問題化するものの、自分のミスを部下の責任に押しつけることなどがあり、乗組員たちに疎まれます。

そんな中、小説家志望の通信士官が艦長は偏執症で異常行動があるので、もしそうなった時には副長が艦長から指揮権を取り上げて代わりに指揮を執るように副長に提案します。

そんな中、航海中に嵐に巻き込まれ、まともな判断ができなくなった艦長に代わり副長が指揮権を取り上げて適確な操艦指示を出し転覆の難を逃れます。

しかしこれが艦長の命令に従わず逆に解任して勝手に操艦した反乱罪にあたると軍法会議にかけられることになります。

そしてみんなを煽ってきた小説家志望の通信士官は、我が身を守るため軍法会議においてもそうしたいきさつの証言をせず、副長は追い詰められていきます。

人気スターのハンフリー・ボガートがその勇敢でまともな副長役かと思いきや、なんと悪人役で精神疾患のある新任の艦長役でした。その傲慢さと小心な神経質さを併せ持った複雑な演技力はさすがとしか言いようがありません。

しかし、ノー天気な終わり方ではなく、軍法会議は証人として呼ばれた艦長の自滅で勝利することになりますが、経験豊富で優秀だった艦長に最初から臆病者、偏執症と決めつけ精神的に追い詰めたのはその通信士官の行動ではないのか?という印象的なシーンがあります。

映画が製作されたのは太平洋戦争が終わってまだ10年も経たない戦争の記憶が色濃く残っていた時期ですが、悲惨で派手なドンパチドラマではなく、こうした軍隊の中の鮮やかな人間ドラマを描いているのはさすがとしか言いようがありません。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ゴールデンカムイ 2024年 映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
監督:久保茂昭 出演者:山﨑賢人、山田杏奈、玉木宏、舘ひろし眞栄田郷敦

ゴールデンカムイ原作は言うまでもなく野田サトル作の漫画「ゴールデンカムイ」で、その第1巻から第3巻の前半までを実写映像化した作品です。

時代は明治末期で、舞台は冬の北海道です。北海道では江戸時代以前には金の鉱脈があちこちで発見され、江戸幕府や明治政府から差別され虐待されてきたアイヌ民族が民族として自立するための資金とするため集めた多くの金塊がありましたが、その金塊を奪い、どこかに隠したのちに殺人犯として捕縛され網走監獄に収容されています。その隠された埋蔵金を探すというのが大まかなストーリーです。

主人公は日露戦争の二〇三高地で重傷を負いながらも生き延びて帰国しましたが、訳あって大金が必要になって北海道で金を掘り当てようとやってきますが、網走監獄からの脱走者から隠されたアイヌの金塊のことを教えられます。

山の中で羆に襲われたところでアイヌの少女に助けられ、事情を話したところ元々アイヌのものだった金塊探しに協力してくれることになります。アイヌ言葉や生活習慣などもちょくちょく出てくるので、そうしたアイヌの歴史や風習も知ることもできます。

函館で戦死したはずの土方歳三や、屯田兵を母体とする北海道の第7師団などもその隠された金塊を探していて、それぞれが集めると隠し場所がわかるという入れ墨を入れた網走監獄からの脱走犯たちを探し回ります。

すでに漫画本を読んでいて、映画の内容も基本はそれに忠実になぞった作りとなっていますが、やはり映像化するとイメージがわかりやすくて迫力も断然得られます。また羆やエゾオオカミなども出てきますが、CGでうまく作られていて違和感はありません。

漫画ではすでにずっと先の話へ進んでいるので、中途半端に終わった今回の映画ですが、当然今後続編が作られるのだろうと思われます。それにも期待したいです。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ダンディー少佐(原題:Major Dundee) 1965年 米
監督 サム・ペキンパー
出演 チャールトン・ヘストン、リチャード・ハリス、ジェームズ・コバーン

ダンディー少佐大物監督に、大物俳優陣を揃えた絢爛豪華な西部劇です。タイトルから想像したのは「イケてるチョイ悪オヤジ映画?」って思ってしまいましたが、原題を見ると伊達者を意味する「dandy」ではないので違うことがわかりました。

そう言えば「イケオジ映画」で、似たタイトルの堺雅人主演「クヒオ大佐」っていう結婚詐欺師の実話を元にした日本映画がありましたがそれともまったく関係ありません。

映画の舞台背景は、1864年から65年にかけて、アメリカ南北戦争中のアメリカとフランス軍が侵攻しているメキシコに渡るややこしい時代と地域で、その中に、悪者役としての先住民(アパッチ族)や、ヒロインのメキシコ独立運動家の女性などが関わってきます。

タイトルは主人公の名前で、南軍の捕虜を収容している砦と騎兵隊の責任者を務めているアメリカ北軍の将校です。ただ単に格好いいだけでなく、女性関係で悩み酒浸りになってしまう情けないところも見せてくれます。

近くの北軍の砦と町が武装した先住民に襲われ子供たちが誘拐されます。その子供たちを救い、武装した先住民グループを壊滅すべく、軍の命令がないまま本来の仕事でもない討伐を計画し、捕虜の南軍兵士を含めた討伐隊の志願兵を募ります。

北軍の兵士と南軍の捕虜との険悪な関係、北軍の黒人兵士と奴隷制がまだ残っている南部の白人兵士とのいがみ合い、メキシコに進駐し横暴な振る舞いをしているフランス軍との対立、そして子供をさらっていったアパッチ族との戦いと、とにかくあれこれ盛り込みすぎです。

その盛り込みすぎの影響で、時間や日にちが次々と先へ飛んでいき、タイトルに意味を込めたであろう主人公を中心とする男の友情や人間模様を描くのが難しく、どちらかというと派手なエンタメっぽい内容となっています。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

kapiw(カピウ)とapappo(アパッポ) アイヌの姉妹の物語 2016年 配給:オリオフィルムズ
監督:佐藤隆之
出演者:kapiw(カピウ:アイヌ語でカモメ)床絵美、apappo(アパッポ:アイヌ語で花・福寿草)郷右近富貴子

アイヌの姉妹の物語東京で暮らしている姉と、阿寒湖のアイヌコタンで働く妹の二人のアイヌ民族の姉妹が、お互いにぶつかり合いながら、また家族との日々の暮らしの中で、アイヌの伝統的な歌を披露するため釧路のライブ会場でデビューするまでを追ったドキュメンタリー映画です。

したがって、俳優やプロの演奏家などは登場せず、東京と阿寒でそれぞれの仕事をしながら子育てをしている普通のアイヌ民族の母親が主人公です。

撮影もプロのカメラマンが固定カメラで決められた演技を撮影するのではなく、手ぶれするポータブルビデオカメラで動きながら主人公たちや周囲の人たちの日常が撮影されていて、画面が盛んにブレるのでちょっと見づらいです。

アイヌ民族の歴史は深いものがあり簡単には書けませんが、無知な政治家が「日本人は単一民族で・・・」などアホなことを過去に発言したことがあるほど和人(本州系日本人)には認知度が低いものです。

そうした反省もあってか、国は2020年にはウポポイ(民族共生象徴空間)に「国立アイヌ民族博物館」を設置したりアイヌ民族の保護や文化の継承などを進めています。 

ただそうした役人が籏を振る国のハコモノよりも、野田サトル作の大ヒットコミックで、アニメや実写映画にもなった「ゴールデンカムイ」の中で、主人公とともにアイヌの金塊探しをするアイヌの少女の振る舞いや説明のほうがずっとわかりやすく理解度が進みそうです。

映画は、美しい北海道の自然や、2011年の原発事故で放射能から子供を遠ざけたい一心で東京から大阪へ行き、その後、実家のある北海道へ向けて深夜にクルマでひた走る母親の姿など、ドラマにはないリアリティな映像が見られます。

そして、長く別々で暮らしていた姉妹が、様々な葛藤を乗り越え、ライブ会場でディオとしてまた伝統的な楽器を弾きながら美しい歌を披露していくラストは感動的です。

★★☆

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PERFECT DAYS 2023年 独・日本 製作 Master Mind他
監督 ヴィム・ヴェンダース 出演者 役所広司、柄本時生

PERFECT DAYSドイツ人監督を招いて、日本の新しい現代文化と、過去に流行った風習などを淡々とした目で追った2024年の米アカデミー賞にノミネート(結果は落選)された秀逸な作品です。

独身の主人公はスカイツリーに近い下町のボロアパートにひとり住み、極端に口数が少ない孤独な中年です。

仕事は都内の公衆トイレの清掃員で、外国人の目から見ると風変わりな最新のデザイナー公衆トイレで作業をおこなっています。

実際には映画に出てくるデザイナーズトイレは極めて少なく、ほとんどは昭和時代からさして変わらない3K(汚い、暗い、臭い)トイレですが、そういうところは出てきません。

ま、それは良いとして、主人公がなぜ今の仕事をしているのか、実の妹は運転手付きの高級車に乗っているほど裕福なのにどうして極貧生活を送っているのか、などハッキリとは示唆されませんが、仕事で移動するクルマの中ではコレクションしているカセットテープで古い洋楽を好んで聴き、毎晩寝る前にはフォークナーや幸田文などの文学をたしなむなど、なにか過去に訳ありって印象を植え付けます。

風変わりなデザイナーズトイレとともに、トイレ掃除の徹底した職人的気質や、毎日寸分の違いもなくルーチン化した規則正しい生活など、外国人が特に興味がわいた部分を強調しているなぁと感じました。

これは、リドリー・スコット監督で日本の犯罪組織を描いた「ブラック・レイン」(1989年)でも、派手な漢字のネオン、デコトラなど外国人が見て異様に思えたシーンがやたらと入っていました。

また石川さゆりが、主人公が馴染みにしているスナックのママをしていて、カラオケで歌を披露したりとサービスも満点です。

しかし、結局主人公の正体はわからずじまいで、なにが言いたかったのだろう?とスッキリしない終わり方は最近の流行なのかも知れませんが、個人的にはモヤモヤが残ったままで残念です。

★★☆

【関連リンク】
2024年3~4月に見た映画 敦煌(1988年)、旅立ちの時(1988年)、ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書(2017年)、リーサル・ウェポン4(1998年)、アルゴ(2012年)、長い灰色の線(1955年)

2024年1~2月 東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~(2007年)、ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008年)、ジョー、満月の島へ行く(1990年)、カウボーイ(1958年)、かもめ食堂(2006年)、ビューティフル・マインド(2001年)、騙し絵の牙(2021年)

2023年11~12月 暴力脱獄(1967年)、ゴジラ -1.0(2023年)、ブロンコ・ビリー(1980年)、ティアーズ・オブ・ザ・サン(2003年)、ゼロの焦点(2009年)、バグダッド・カフェ(1987年)

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鍵のない夢を見る(文春文庫) 辻村深月

鍵のない夢を見る2012年に単行本、2015年に文庫化された短篇集ですが、この作品のトピックスとして一番なのは2012年の直木賞を受賞したことでしょう。

物語はそれぞれに独立した内容で、「仁志野町の泥棒」、「石蕗南地区の放火」、「美弥谷団地の逃亡者」、「芹葉大学の夢と殺人」、「君本家の誘拐」の5編からなり、それぞれ泥棒や放火、殺人(逃亡と自殺)、誘拐など、新聞の三面記事に取り上げられそうな犯罪がテーマとなっています。

日常的な風景と、同時にドキドキするミステリー的な要素もあり、なかなか楽しめます。ただ一般的に女性作家さんが書く男女間や女性間の会話が、私的にはストーリーと関係がない無意味なものが多いように感じられ、ざっくりすっ飛ばして読めるのは良いですが、なにかページ数だけが増えて無駄に感じてしまいます。

5編の中で「これが一番!」というのを取り上げようと思ったものの、実はどれもほどほどに面白く、かつ退屈でつまらなく、「これは!」というものがありませんでした。短篇集では「これが一番!」という、強く記憶に残る作品がいくつかあるのですが、それは残念に思いました。

★★☆

著者別読書感想(辻村深月)

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悪しき正義をつかまえろ ロンドン警視庁内務監察特別捜査班(ハーパーBOOKS) ジェフリー・アーチャー

悪しき正義をつかまえろ著者の小説を読むのは今回が32作目となります。そのうち半分以上の作品が上下巻で一つの作品となっているので冊数でいうと50冊は超えていそうです。

今回の作品は、「ロンドン警視庁美術骨董捜査班」シリーズの第3作目で、本国では2019年(日本語翻訳版は2020年刊)に出版されています。

そのシリーズ第1作目の「レンブラントをとり返せ-ロンドン警視庁美術骨董捜査班-」は2022年に読んでいて、第2作目の「まだ見ぬ敵はそこにいる-ロンドン警視庁麻薬取締独立捜査班-」はまだ未読です。

2022年12月前半の読書と感想、書評(レンブラントをとり返せ)

内容的にはそれぞれ独自の展開なので、前作を読まないとまったく意味不明というわけではありませんが、物語の登場人物が連続しているので、順番に読んでいくのが正解です。しかし今回は2作目は飛ばして3作目を先に読むことになりました。

第1作目以来ずっと刑事の主人公を悩ます悪人は今回は脇役で、本作では麻薬の大物ディーラーと、主人公の刑事と同期で華々しい実績を上げている裏で私腹を肥やしている腐敗警官の二人との戦いがメインとなります。

主人公は日本では滅多に見られないおとり捜査を専門とする部署で、麻薬王を捕まえ、また腐敗警官の所業の証拠をつかみ二人とも裁判にかけられます。

しかし裁判では悪役に味方し、証拠をねつ造することもいとわない辣腕弁護士が今回も登場し、裁判所での法廷ドラマが物語の半分を占めます。

著者の小説の多くは、ミステリー的な要素はなく、善悪をハッキリと分けた上で、頭脳戦や偶然の運・不運により裁判の結果が二転三転して読者をドキドキさせるというスタイルを取っています。

そういう意味では、最後は黄門様が登場して解決する勧善懲悪ドラマと同じで、安心して読めますが、ちょっとその展開にも飽きてきたのが実感です。

そして一番の悪人は逃げ切って、次回作以降にも主人公を悩ますことになりそうです。引き続きこのシリーズを読むかどうかはちょっと微妙です。

★★☆

著者別読書感想(ジェフリー・アーチャー)

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ふなうた 短篇集モザイクII(新潮文庫) 三浦哲郎

ふなうた過去に掲載された短篇作品をまとめて1991年に「みちずれ短篇モザイク集I」が出版され、それから3年後の1994年に単行本、1998年に文庫化されたのがこのモザイク集第2弾の本作品集です。

著者は元々短編小説やエッセイの名手ですが、文庫ベースで、1篇あたり10数ページという短篇の中でも短い作品の中で、それぞれが起承転結、ひとつの物語が情緒豊かに成り立っていることに驚きます。

最近の小説家には短篇が得意な人でも連作短篇という形式が多く、その場合は前に出てきた登場人物の性格や説明を省け、一種中編や長編小説的に物語が展開できます。

しかしこのモザイク集のように、ひとつひとつがまったく違った形状の物語をしっかりと読ませるテクニックは見事としか言いようがありません。短篇集なのに、なにか違った長編作品を一気に数本読んだような気分にさせられます。

収録されているのは、「ふなうた」、「こえ」「あわたけ」「たきび」「でんせつ」「やぶいり」「よなき」「さくらがい」「てざわり」「かえりのげた」「ブレックファ-スト」「はな・三しゅ」「ひばしら」「いれば」「ぜにまくら」「かお」「メダカ」「みのむし」の18篇で、初出はそれぞれ違いますが、文芸雑誌などに1991年(平成3年)から1994年(平成6年)に掲載された作品です。

あまりにも簡単にサクッと読めてしまうだけに、しっかりと余韻に浸る間もなく次の作品へと移ってしまい、もったいないですが、さらにまた次を読みたくなってきます。

★★★

著者別読書感想(三浦哲郎)

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大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実(光文社新書) 仲村和代/藤田さつき

大量廃棄社会自他とも認めている巨大新聞社所属のエリートビジネスウーマンの二人が、SDGsをテーマに新聞記事を書いている中で、特に現状では日本のあまり知られていない不都合な真実にスポットをあて、やや上から目線で問題提起とその解決策を模索した内容となっています。

私自身、親の時代からずっと朝日新聞を購読して(学生時代に数年間他紙へ浮気したことはある)いますので、どちらかと言えば朝日新聞ファンでもありますが、どんな組織にも変テコなのが必ず混ざってきて、それが時に問題を起こしたりするので、敵も多いのが大手メディアの宿命でしょう。

先日読んだ、「朝日新聞の黙示録 歴史的大赤字の内幕(宝島社新書)」でも、散々な書き方がされていました。

それはさておき、本著ではアパレル業界と食品業界、特にコンビニなどの大量廃棄問題に注力した取材が行われています。

アパレルにしても食料品にしても割と国民はみな薄々とは知っていながらも、便利で安ければいいやとばかりに目をつぶってしまっているパターンではないかと思います。

私自身を振り返っても、衣料品を買ったりもらったりしても気に入らなければ簡単にゴミとして捨ててしまいますし、スーパーやコンビニで飲食品を購入するときには少しでも賞味期限の長いものを奥のほうから取り出します。

それらの陰で、本来は再利用できる衣料品や、賞味期限切れが近づいて捨てられる食料品が大量にあり、そうなってしまう仕組みの解説と、それに一石を投じる新しい仕組みや考え方が紹介されています。

ただ、高額所得のエリート社員とは違い、どうしてもお金のやりくりに苦心しながら日々の生活に汲々している庶民にとっては、安い衣料品がどこで誰の犠牲によって作られているとか、縁起物の恵方巻きや豪華なおせち料理が売れ残れば大量に廃棄されていることなどに関心がないのは当たり前のことで、それらは販売側や製造側の問題でしかありません。

高くて良いものより、安くて良いものを買うのは当たり前の心理で、賞味期限の近い食料品に関してはいくら勧められても余計なものまで買おうと思いません。

一般の人に訴求できるとしたら、値段が安くても海外製の安いEVに飛びつかず、高くても信頼が置ける国内メーカーのクルマを買ったり、安い外国製のタオルではなく、肌触りが良い国内生産のタオルが贈答用で大ヒットしたりする国内(生産)ブランド信仰をもっと浸透、普及させていくことで、食品も新鮮な地産地消が進められていくのではないでしょうか?

本文中に、衣料品が海外生産され「顔の見えない製造者」という言葉がよく出てきますが、元々消費する製品で製造者の顔が見えるものなど都会にあるはずもなく、なにか自分の言葉に酔っている?という感想も持ちました。すぐ手元にある赤鉛筆やボールペン、はさみ、パソコンなどの製造者の顔が見えますか?

本書の中には「広島のパン屋さんが、北海道の有機栽培の小麦農家から直接購入した小麦でパンを作って成功した」云々が書かれていましたが、その小口の小麦を遠く北海道から広島まで輸送する手間とエネルギー消費は相当なもので、「パンを破棄しないからそれですべてよし」というのはどうなのかなと思ってしまいました。

SDGsを言うなら、広島から世界へ輸出されている自動車の運搬船に、帰りの便ではそれぞれの地域の特産品をどっさり積み込み、広島やその周辺でそれらを使った料理や食品を作っているというのならわかりやすかったでしょう。

★☆☆

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硝子の葦(新潮文庫) 桜木紫乃

硝子の葦2010年に単行本、2014年に文庫化された長編小説で、2013年に直木賞を受賞した「ホテルローヤル」のホテルが主な舞台となっている完全に別作品です。

主人公は、「ホテルローヤル」の経営者と結婚した女性で、その女性の母親と経営者は愛人関係にあり、また主人公はホテルの会計業務を請け負っている会計事務所の所長とずっと関係を持っているというややこしい関係があります。

言うまでもなく、著者の実家は釧路にあった「ホテルローヤル」に隣接する家で、ホテルの経営者の娘として生まれ育っていて、そうしたよく知っているラブホテルの経営などをモチーフとして使っているだけで、自伝的小説というわけではありません。

ジャンルとしてはミステリー小説と言えるもので、プロローグで主人公の女性が、厚岸(あっけし)の実家に自ら火を付け自殺したところから始まり、その主人公女性の周囲にいる様々な人とともに、なぜ女性がいきなり焼身自殺をしなければならなかったのか?どういう意味があったのか?などがクライマックスに向かって一気に露わになっていきます。

タイトルは、主人公女性が結婚後に通っていた短歌会で学んで創作した短歌をまとめ、自費出版で歌集を出すことになり、その自作の短歌に使われていたのが硝子の葦で、夫の意見でその言葉を歌集のタイトルにしたことから来ています。

同時期に読んだ辻村深月著「鍵のない夢を見る」の一部がそうでしたが、女性の暗くずる賢い計画的な犯罪が描かれていてゾッとしました。あまり現実的ではありませんが、あわれな周囲の男たちは、物語の中では単に刺身のツマに過ぎません。

★★☆

著者別読書感想(桜木紫乃)

【関連リンク】
 6月前半の読書 四つの署名、牛の首、残酷な進化論、盤上の夜
 5月後半の読書 火の壁、追想の探偵、70歳の正解、囚われの山
 5月前半の読書 護られなかった者たちへ、日本史の内幕、新章 神様のカルテ、ベロニカは死ぬことにした

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1792
家族 少し前の話になりますが、子供を持たない人から、子供がいる人への非難がSNSで炎上し、社会問題にまでなっていました。

ま、最初のうちは、身の回りにあるよくある不満や愚痴を述べただけだろうと思いますが、「そうそう同じこと経験している」や「その思いわかる!」という肯定派と、「その不満や考え方は間違っている!」という否定派がガチでぶつかってしまったようです。

そういうのは、漫画家がギャグとして風刺的に描いたなら問題にもならないと思いますが(それでも生真面目な人が問題視するかも)、SNSという様々な意見が自由に言える中でのことで、以前SNSで炎上したことがあるバスや電車にベビーカーを折りたたまずに乗ってくるとか、住民の苦情で子供の遊び場が閉鎖されたとか、昔からある保育園の子供の声がうるさいので高い防音壁を設置させるとか、それぞれの立場の違いでの対立があります。

またコロナ禍で起きたマスク警察、池袋暴走事故での被害者遺族への嫌がらせ、キャンプ場での女児行方不明事件の母親への誹謗中傷など、「正しいのは自分で目立つ他人を糾弾するのは使命!」みたいな極端な勘違い人など社会の闇を見ることもあります。

大手マスメディアでもこの「子持ち様論争」がしばしば取り上げられていました。

「『お子が高熱』とか言って、また急に仕事休んでる」SNSで広がる「子持ち様」論争 育休取得社員の同僚に“一時金”を支払う企業も(TBS NEWS DIG)
子どもを持つ親を「子持ち様」と批判するような書き込みが、SNSで広がり、議論を呼んでいます。背景には何があるのでしょうか。(中略)
厚労省が2022年に行った国民生活基礎調査によると、“子持ち世帯”が1986年は46.2%だったのに対し、2022年は18.3%になっているそうです。東京大学大学院の藤田准教授は「自分だけではなく、親戚にも子どもがいないという人も珍しくない」としています。子どもがいるというのは当たり前の環境ではなく、少数派になってきているという現状があります。

〈子持ち様論争〉「子どもをもたなかった人の老後を負担」するのは誰? “子持ち様”を一概に批判できない社会保障に関わる“勘違い”とは(集英社オンライン)
日本で子どもを持つ親に対する、“子持ち様”批判が社会問題になりつつある。子どもを持つ女性が、子どもの体調不良や学校行事などを理由に仕事を休んだり、早退することに対して、SNSなどで不満を漏らす人が続出しているのだ。
また、たとえ身近に“子持ち様”がいなくとも、児童手当、高校無償化など、子育て世帯を援助する政策が打ち出されると、〈なんでよその子どもの負担を俺が…〉〈子育て世帯ばかり優遇されるのは不平等だ!〉という不満が巻き起こったりする。(中略)
社会全体の中では、子どもを作らなかった人の老後の負担を、子どもを作った人の子どもが負っているわけで、お互いさまでもあると思います。むしろ今の子どもたちのほうが将来的には大きな負担になるかもしれません。

書いてあることはもっともな内容です。ただ、立場や状況が違えば当然対立するのが当たり前で、それをどのように解釈し許容していくのか?というのが最終的な落ち着き先でしょう。

お金で済む問題もあればそうでないこともあります。そしてそれでもすべてクリアになるとも思えません。

私には3人の子供がいますが、40代で転職したあとにこういうことがありました。転職先は面接でかなり長い時間ジックリ話をした経営者の資質や考え方に共感してその人の元で働くことを決めました。

その再就職先の会社では、7~9月の3ヶ月間の中で土日を含め5日間連続した夏休みをとれるルールがありました。独身の人などは、混まなくて旅費が安い7月とか9月に夏休みを取れるので社員にとっては好評な制度です。

私のところにはまだ小学生や中学生の子供がいたため、7月下旬から8月の学校の夏休みに入ってからしか家族旅行には行けません。

そこで、なかなか当たらないものの抽選で1ヶ月に1度しか申し込めない格安で使える健保組合のリゾート宿泊施設に7月下旬と8月上旬に申し込んでおいたところ、たまたま7月下旬に当選しました。

7月下旬に施設の予約ができたため、ルール通りに会社に申請したところ、その社長から「他のメンバーより先に休みを取るなんて非常識」と嫌みを言われました。確かにリーダー的な役割があったことは確かですが、入社してから1年近くが経ち、その時期に急ぎの重要な業務があったわけではありません。

ルール通りなのに、どうしてそういうこと言うかな?と不思議でしたが、その社長は50代で既婚ですが子供がいない夫婦二人だけの家庭だったことに思い当たりました。

つまり一度も育児をしたことがないと、普段は毎日夜遅くまで働いて子供と話をする機会がまったくなくても、せめて夏休みぐらいは親として一緒に思い出作りが必要だということがまったく理解できないのです。

いくらビジネスや経営者として優秀な人でも、子育ての経験がないというだけで、従業員の子育て世帯の親の立場や行動が理解ができないんだなぁと思った次第です。

政治の世界でも、乳幼児を自ら育てた経験があったり、子育てしながら議員として活動する人が増えて、それが日常的にならないと、本当の意味で子育て重視の政治や法律改正は期待できないでしょうし、頭が古く子育ては専業主婦の妻に任せっきりの高級官僚などが行政のトップにはびこっている限り、少子化はいつまでも食い止められないでしょう。

【関連リンク】
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1585 専業主婦志向と共働き志向推移
1129 子供の教育費にはいくらかかる?2017年度版

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四つの署名(角川文庫) コナン・ドイル

四つの署名「シャーロック・ホームズシリーズ」の推理小説で有名な著者の作品ですが、このシリーズ全60作品の中で長編作品は、最初の「緋色の研究(A Study in Scarlet) 1887年」などわずか4作品しかなく、あとはすべて短篇というのはあまり知られていません。

2013年9月前半の読書と感想、書評(緋色の研究)

今回の「四つの署名(The Sign of Four)」は、長編として上記「緋色の研究」に続く2作目で、初出は1890年頃と言われています。また日本語翻訳版では複数の出版社から出版されていてそのいずれもタイトルが少しずつ違っています。

ストーリーは、暇を持て余してコカインなどを吸引してぶらぶらしていたホームズの元へ、若い女性が「軍人でインドに駐在していた父親が所用で英国に帰ってきたらそのまま行方不明になったので探して欲しい」と相談を受けます。

しかも行方不明になって以降、不思議なことが次々と依頼人の身の回りで起き、「それらについて説明をするから来て欲しい」と、謎の相手から手紙が送られてきます。

そこで、ホームズと助手のワトソンが女性の付き添いとして出掛けていきますが、その先では不思議な殺人が起きているというストーリーです。

長編と言っても文庫本でわずか216ページという短さなのであっという間に事件は解決してしまいますが、1880年当時の東インド会社やセポイの反乱など、英国がインドなどを実効支配していた頃の話なども出てきて、歴史のお勉強にもなりそうです。

★★☆

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牛の首 厳選恐怖小説集(角川ホラー文庫) 小松左京

牛の首サブタイトルに「厳選恐怖小説集」と銘打ってありますが、思ったほど怖くはないです。というのも、著者お得意の科学的なSFと、その対極にありそうな古典的な妖怪など怪談とのミックスですので、意外性はあるものの、あまり身近でベタな恐怖ではないだけに怖さを感じません。

短篇とそれより短いショートショートが計15編で構成されていて、それぞれのタイトルは 「ツウ・ペア」「安置所の碁打ち」「十一人」「怨霊の国」「飢えた宇宙」「白い部屋」「猫の首」「黒いクレジット・カード」「空飛ぶ窓」「牛の首」「ハイネックの女」「夢からの脱走」「沼」「葎生の宿」「生きている穴」です。

各作品の初出は、1964年(昭和39年)から、一番新しいものでも1978年(昭和53年)で、小説雑誌やスポーツ新聞などに掲載されていたものです。本著文庫本は2022年に発刊されています。

印象に残った作品として「飢えた宇宙」と「夢からの脱走」の2作を挙げておきます。

「飢えた宇宙」は太陽系を超え、あと10年はかかるアルファ・ケンタウリを目指している宇宙船の中で搭乗員がひとりずつ消えていなくなる事件が発生します。また積み込まれていたはずの食糧がほとんどないことも発覚し、残った搭乗員はこのままでは餓死すると絶望感に陥ります。

食糧がほとんど積み込まれなかったのは。実は人間だと寿命があり、さらに大量の食糧を積み込む必要があるので、それを一気に解決する策として、少しの血漿さえあれば不老不死のドラキュラを眠らせて密かに乗せておき、目覚めてからは搭乗員の血を吸って、、、

「夢からの脱走」は、2つのパラレルワールドを行ったり来たりする男の物語で、平和な世界で妻と子供がいるサラリーマンが、あるとき、最初は夢の中と思っていた現代の戦争に巻き込まれていて、戦闘員として戦っている自分が交互に現れてきます。それを夢と思っていたら、、、

と、まぁ、ユニークな発想が素晴らしいというか、今から50~60年ほど前に書かれた作品ですけど、十分に楽しめます。

★★☆

著者別読書感想(小松左京)

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残酷な進化論 なぜ「私たち」は「不完全」なのか(NHK出版新書) 更科功

残酷な進化論著者は分子古生物学者の大学講師で、他にも多くの著書があります。時にはこうした専門雑学というか知的好奇心を満たす書物も読んで刺激を与えておかないと脳が怠けてしまいそうです。本著は2019年に発刊された新書です。

個人的にはあまり関心がない「進化論」や「人類史」「人体」の話ですが、常識と思っていたようなことが次々と覆される快感は捨てがたいです。

例えば、人の眼は生物の中ではもっとも進んだ視覚装置と思っている人が多いと思いますが、人が「鳥目」と夜盲症を揶揄しますが、実は鳥の中でも鷹や鷲の目は人間のそれよりも優れているとか、チンパンジーの手よりも人間の手の方が原始的で進化していない形状だったりします。

結果的にはそれが小さな物をつかむときなどでは有利で道具をうまく使いこなせたわけですが、比較的安全な森の中の木の上で生活するために類人猿の手からチンパンジーの手は進化してきたようです。

話は生物の進化だけではなく、原始的な細菌の話や、心臓や肺の進化の様子など面白く読めます。

数万年後には、どんな進化した生物(人間とは限らない)が地球上で繁栄しているのかをぼんやりと考え、創造力たくましくなります。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

盤上の夜(創元SF文庫) 宮内悠介

盤上の夜著者の小説は初めて読みましたが、SF小説を得意とする1979年生まれの著者が、2010年から2012年にかけて書いた短篇作品をまとめた単行本が2012年に発刊され文壇デビューとなりました。

そして今回読んだ実質デビュー作が、直木賞候補(落選、その時受賞したのは辻村深月著『鍵のない夢を見る』)になり、日本SF大賞を受賞しました。

収録されている短篇のタイトルは、「盤上の夜」「人間の王」「清められた卓」「象を飛ばした王子」「千年の虚空」「原爆の局」の6篇で、最初の「盤上の夜」と最後の「原爆の局」の2作は連作で囲碁がテーマ、「人間の王」はチェッカー、「清められた卓」は麻雀、「象を飛ばした王子」は古代インド発祥で将棋やチェスの起源と言われているチャトランガ、「千年の虚空」は将棋をそれぞれテーマとしています。

盤上ゲームをテーマにした作品は数多くありますが、それは将棋なら将棋、麻雀なら麻雀だけで、この短篇集のように、時代や場所がそれぞれ違う中で、扱うテーマも違っているというのは珍しいです。

しかしなぜか盤上ゲームの中でも世界の競技人口が多いトップ3のトランプやチェス、オセロがこの中には入っていません。ま、どのゲームを入れるかは著者の自由ですけど。

個人的にはギャンブル性のあるゲームは苦手で、遊ぶことはあっても強くはないので、あまり詳しくもなければ興味もありません。

それだけになにか読んでいても、ゲーム独自の専門用語などがビシビシと出てきて、それらは意味不明で、読み飛ばすしかありません。なにか「わかるヤツだけわかればいいのさ」というような身勝手さが感じられます。

こうした盤上ゲームは元々が賭け事から発展していることから仕方がないですが、内容的にはアングラ的というか暗いものが多く、登場人物が熱くなっていくのと反比例して、読者(私個人のこと)は冷めていくような感じでした。

でもいろいろと知らなかった知識や雑学が得られたのは良かったです。

★★☆

【関連リンク】
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 5月前半の読書 護られなかった者たちへ、日本史の内幕、新章 神様のカルテ、ベロニカは死ぬことにした
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1790
ウォーキング 2016年から人工股関節置換手術のリハビリのために始めた毎日のウォーキングですが、無理をしない範囲で1日6千歩を目標として8年経った現在も継続しています。

歩数をスマホの歩数計でカウントをとるようになったのは2017年2月頃から7年間で、その歩数の合計は約1700万歩(月間平均約20万歩)で、1歩あたりの歩幅を70cmとすると、ウォーキングで歩いた総距離は1万1700km、東京から直線距離でインド洋を越え、中央アフリカのタンザニアやマダガスカルあたりを歩いていることになります。

いや~遠くまで来たもんだ(来てない)。

東京からもっとも遠い(つまり東京の裏側)ブラジルまではあと6千kmほどあります。まともに歩けるうちにブラジルから戻ってくる地球1周が目標ですがちょっと厳しいかも。

1日6千歩の目標は当初からなにかエビデンスがあったわけではなく、ウォーキングの途中に15分程度のストレッチをおこない、それを含み合計1時間歩くとだいたい6千歩だったので、それを基準としました。

当時はまだ会社へ出社することもあったり、終日雨模様でウォーキングができない日もあったので、月間単位で1日平均6千歩以上を目標としていました。30日の小の月で18万歩以上歩くのが目標です。

それをしばらく続けていると、「1日6千歩を歩けば寿命を延ばすことができ、それ以上歩いても寿命はあまり変わらない」という研究発表がありました。

長寿効果、1日5000~7000歩で十分?=歩数と死亡リスクの関連分析―早大など(2023年02月20日時事エクイティ)
歩くことで得られる長寿効果は、高齢者では1日5000~7000歩で頭打ちになるとの調査結果を、早稲田大の渡辺大輝助教らの研究チームが20日までにまとめた。1日1時間程度の歩行に該当するが、これが最適な長さという。研究成果は2月上旬、米科学誌の電子版に掲載された。

私が勝手に決めていた6千歩がドンピシャだ!と先見の明を喜んでいましたが、喜びもつかの間、最新の研究では6千歩では不十分のようです。

1日9000歩で健康寿命延伸 AI指標で分析 京都府立医科大(2024年5月1日時事通信)
「健康寿命」を延ばすには1日9000歩が目標。京都府立医科大の研究グループが1日の歩数と健康状態との関係を、人工知能(AI)を使って開発した指標などから分析したところ、こんな結果が出た。「自分は健康だ」と自覚するには1日1万1000歩となった。いずれも年齢や性別による違いは見られなかったという。論文は1日、英医学誌電子版に掲載された。

長寿効果(死亡リスク)と、健康寿命の違いがあるとは言え、二つの研究結果に戸惑います。

それに1日6千歩と9千歩では3千歩という大きな差です。歩くスピードや歩幅などに個人差がありますが、だいたい千歩を歩くには7~8分が必要です。3千歩をプラスするにはおよそ20数分余計にかかります。わずか20分、されど20分、、、暇なリタイア生活とは言え、毎日20分の追加は結構負担です。メジャーの試合も見たいし。

もちろん、日々歩く距離は違っていて、日によっては1万歩以上歩く日もあるので、毎日9千歩以上を歩くのがいかに大変かというのはよく知っています。慣れの問題かも知れませんが。

しかも毎日のことで飽きないように、またその日の体調や予定などに応じて様々な歩くコース(1万歩コース、8千歩コース、6千歩コース、4千歩コース、山道コースなど)を設定していて、その中には長い坂道や急な山道などを歩くときもあり、平坦な歩きやすい場所だけではありません。

しかもウォーキングは気分転換の散歩とは違い、インターバルで早足で歩いたり、時には軽く走ったりして身体に負荷をかけながら、運動としておこなっています。そんなわけで今のところ毎日プラス3千歩は厳しそうです。できない言い訳に過ぎませんが。

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1668 私の健康習慣 その2(ウォーキングとストレッチ)
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