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放浪記 (新潮文庫) 林芙美子

著者は明治、大正、昭和とめまぐるしく変化する日本を生きて、多くの詩や小説を残してきました。その中の代表作とも言える本書は最初1930年(昭和5年)に単行本が発刊され、その後何度か改版、新装され続け、現在に至っています。

発刊当時は第1次世界大戦後で軍事国家が支配しつつある日本で、婚約者に裏切られながら、貧困の中で、必死にもがいて生きていく筆者の日記を元としています。

2012年に亡くなった森光子が亡くなる寸前まで帝劇等の舞台で演じていたのがこの作品の演劇で、2015年からは仲間由紀恵が跡を継ぎ主人公役を演じています。ちなみに演劇の中で注目される「でんぐり返し」の場面は、本書では出てきません。

本作品は小説ではなく、日記を本にしていますので、日付とその時々の様子や筆者の考えなどが赤裸々と言うか遠慮会釈なく、この時代の女性にしてはいたって明るく奔放な様子が書かれていて、読む者を引きつけていきます。

ただ、時代が時代だけに、この頃の女性の労働環境や、貧しい地方から東京へ出てきた苦労などは、今からは想像できないぐらいに違っていて、そうしたことを理解しながら読むのにはちょっとした想像力なども必要です。

こうした明治から大正時代の実録職業婦人の記録は、ほとんどないでしょうから、歴史的な価値はもちろんのこと、研究論文の参考図書としても十分利用できそうです。

ただ、一読者として読むのには、日記が書かれている日が飛び飛びで、次々出てくる内容の関連性がわかりにくく、また小説ではないのでストーリーが一気通貫してはなく、その当時の時代背景の説明もないので、それを理解して読み進めていくのは結構つらいものがありました。

自分で日記を書いてもたぶんそうなるでしょうけど、「旅をした」とか「就職した」とか、大きな変化があったときは細かに書いても、日々淡々と過ぎてしまうと何ヶ月もすっぽりその部分は抜け落ちることになります。

あの大きな関東大震災が起きた時も、本書では震災の数日後にちょっと触れられているだけで、それよりも日々の生活がたいへんって感じの書き方でした。ちょっと肩すかしをされたような感じです。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

しない生活 煩悩を静める108のお稽古 (幻冬舎新書) 小池 龍之介

2014年に刊行された新書で、30代の現役の若いご住職が書いた仏教的生き方の知恵みたいな感じの本です。

章立ては5つからなり、合計108つの「しない」が書かれています。というか108つのエッセイと言ったほうがいいかも知れません。その5つの章は、「つながりすぎない」、「イライラしない」「言い訳しない」、「せかさない」、「比べない」です。

以前読んだことがある仏教の教えについてわかりやすく解説したひろさちや氏の「仏教に学ぶ八十八の智恵」(1983年刊)とも共通するところがあるなぁと思いながら108つの煩悩?を一気に読み進めました。

中では53番の「ネットを断って一人に立ち返ることこそ、最高の安息」はちまたでもよく言われていることですが、現代のネット依存に対してあらためて考えさせられる内容です。

「つながり過剰に情が縛られたら己を見失う。つながり過剰にその恐れを感じて、犀の角のように孤独に歩むように」は経集の自由訳からですが、名言です

若い著者ですので仕方がないのですが、文章の中に「トホホ・・・」とか「にっこり」というネットでよく使われているスラングががやたらと使われていたりして、ちょっと幻滅。

そこまでして若い人の流行に合わせなくてもいいのではないかな。読んでいてなんだか痛々しく感じてしまいます。本来なら編集者が遠慮なくスパッとつまらない意味のない言葉はカットしてしかるべきことですが、編集者の毅然とした力も最近は弱まっているのでしょうかね。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

名もなき毒 (文春文庫) 宮部みゆき

誰か―Somebody」の続編にあたる「杉村三郎シリーズ」第2弾の長編小説で、元々は新聞で連載されていた小説で、2006年に単行本が発刊されています。

2013年には前作とともに連続テレビドラマ化がされて放映されました。主人公役には著者の指名で小泉孝太郎だったそうです。

宮部氏ぐらいの大物にもなるとドラマの主人公役が指名できるのですね。そういうのはプロに任せておいたほうがいいと思うのですが、映画「模倣犯 」でも不満を表したとか、なかなか自我の強い人なのでしょう。

そしてこのシリーズは、すでに第3弾として「ペテロの葬列」が2013年に発刊されています。また読まなくっちゃ。

2013年6月前半の読書 「誰か―Somebody (文春文庫)」 宮部みゆき


主人公の杉村三郎は弱小出版社で児童書などの編集の仕事をしていましたが、その時に偶然知り合い恋仲になった女性が大企業オーナーの娘で、結婚をする条件に父親の大企業へ転職することを約束させられ、オーナーの義父直轄の広報室勤務という、いわゆる世間的には逆玉の男という変わった設定になっています。

今回の活躍の場は、大きくふたつあり、ひとつは主人公が勤めている広報室でバイトとして働いていたエキセントリックな女性を解雇したことで起きる様々な問題。

もうひとつが、上記の解雇した女性の職歴等を調べている中で、偶然知り合った女子高生とその母親が、当時世間を騒がしている連続青酸カリ毒物事件の被害者遺族だったことから、その事件の真相にも関わっていくことになります。

また並行して住宅地の土壌汚染や建築材のシックハウス問題も出てきたりしてお腹いっぱいになりそうな盛りだくさんの内容です。

そしてクライマックスでは主人公の子供が危機一髪のスリリングな展開が待ち受けていますが、安っぽいテレビドラマじゃあるまいし、原作で果たしてここまでする必要があったのかはちょっと不自然な感じもします。

★★☆

著者別読書感想(宮部みゆき)

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青春の彷徨 高橋 寛治

2012年に発刊された「青春の彷徨」「幻想の断崖」「めぐり来る春」の3編の中編小説が収録された単行本です。発刊から4年が経ちましたが、文庫化はされないのかな?

「青春の彷徨」の主人公は東大へ通う大学生で、学生運動が盛んで、普通の家に下宿をするという時代ですから1960代後半頃の話しでしょうか。

その下宿先というのが、家の1階で書店を営む、夫を病気で亡くした女性と、その子供の女子高生の二人住まいの家です。

主人公は女子高生に勉強を教えたり、映画を見に行ったりと仲良くなっていきますが、夏休みを終えて下宿に戻ると娘は軽井沢の友人の別荘へ出掛けていて、艶めかしい夫人と一線を越えてしまいます。

ま、それだけの話しなのですが、やがてはその関係が娘にも気づかれてしまい、、、とよくあるパターンで、それが「青春の彷徨」かと言えば、えらく時代的で大げさなと思わなくもありません。

「幻想の断崖」は小学校の教員の主人公が、夏休みの嵐の夜に上野発の夜行列車で金沢、能登半島へ向かいます。そこで知り合った訳ありの女子大生と高校生の姉妹。

旅から戻ってから話しを聞くと、姉妹は大金持ちの事業家の娘で、父親が愛人を作ったことで母親が自殺し、それを許さない女子高生の妹が登校拒否となってしまったことを知ります。

教師の端くれとということで、その一家というか妹を立ち直らせるために、様々な協力をすることになりますが、特に盛り上がることもなく、不幸中の幸いでハッピーエンドっていう感じ。どうもまとも過ぎて、あと一癖二癖の工夫が足りないような気がします。

「めぐり来る春」では国語の高校教師が公園で知り合った子連れの女性の離婚騒動に巻き込まれていくという話しで、その離婚係争中の旦那の暴力的性格と、女性が経営している飲み屋の客で女性に横恋慕する男がストーカーさながらで、薄気味悪いったらありません。

私の夢にまで出てきてうなされましたので(笑)、たぶんその異常的行動が真に迫っていたのではないかと思っています。

あとがきを読むと、65歳になって初めて書いた小説ということで、なるほど、ベテラン小説家のように、いかにも読者を引きつけるテクニックや緻密なプロットはないものの、素人は素人らしく、素直に淡々と書かれた話しだなって感じは受けました。このまま文庫化もされずに埋もれてしまうのはなにか惜しい気もします。

★☆☆


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