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1704
大いなる遺産(上)(下)(新潮文庫) ディケンズ

チャールズ・ディケンズ(Charles John Huffam Dickens)は19世紀中盤(1812年~1870年)に多くの小説を書いた英国の作家です。代表作には本作とともに、『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』『二都物語』などがあり、本作を含め、その多くが映画化されています。

本作「大いなる遺産」(原題:Great Expectations)は、1860年から1861年にかけて初版が出版された著者の後期にあたる作品です。原題を直訳すると「大きな期待」です。

日本語版は複数の出版社から出ていますが、私が買ったのは1951年(昭和26年)に初版が発刊された新潮文庫版の再版です。

大まかなあらすじは、時代は18世紀の中盤頃、まだ赤ちゃんの頃に両親を亡くし、下層労働者の鍛冶職人と結婚した年が離れた姉の元で育てられていた主人公に、匿名の大富豪から、巨額の遺産を相続できる可能性があることを突然家にやってきた弁護士から通知を受けます。「相続できる可能性」がつまりタイトルの「大きな期待」となるわけです。

まだ富豪は存命していて相続するには至ってないものの、下層労働者階級から紳士になるために必要なお金や教育を受けるため、家を出てロンドンに住むようになります。

ロンドンでは、様々なことを学ぶために寄宿する紳士の家で、その家の息子と仲良くなりやがて親友となり家を出て一緒にシェアハウスを借りて住むようになります。

下層労働者の居候だった子供時代に謎だらけの富豪の家に連れていかれますが、そこで知り合った富豪の養女への憧れ、子供の時に沼地で出くわした脱獄囚との関係など、複雑に絡み合いながら、年齢を重ねていくにつれ物語は佳境へと進んでいく一種のミステリー小説です。

ただ、数多くのミステリーを読んできた身としては、その遺産の持ち主が誰かは容易に想像がつき、結果は正解でした。

なにぶん時代背景も執筆されたのも古い小説ですが、テーマのひとつになっている人間性は今も昔も共通した複雑で重要なもので、読んでいても違和感は感じません。

そしてなんと言ってもこの本が長く名作として語り継がれる理由のひとつには、人が生きていくための教訓、友情、親子愛、恋愛、格差、お金の使い道、怨恨などがいくつも散りばめられていて、それぞれの読者の頭の片隅に残るものがあるからだと気がつきました。

あと、まったく本書と直接的に関係はありませんが、最近読んだ「一八八八切り裂きジャック」(服部まゆみ著)と、「ボートの三人男」(ジェローム・K・ジェローム)の小説が、ほぼ同時代で、後に産業革命と名付けられた中のロンドンを舞台とした小説だったので、その頃の世界で最も豊かで洗練され、良くも悪くも話題性に事欠かない都市に住む人達のイメージがダブって見えました。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

人生にはやらなくていいことがある(ベスト新書) 柳美里

著者の作品は20年以上前に2作品を読んでいますが、どのような背景のある方かは一切知りませんでした。

今回この2016年に出版された新著では、韓国から渡ってきた両親のことや、何度も家出や自殺未遂を繰り返し、名門高校から退学を迫られ中退したこと、10代で劇団に加わりそこで知り合って一緒に住んでいた恋人との死別、シングルマザーとなり、新しい離れた年下のパートナー、購入した鎌倉の家から震災後に福島南相馬市へ引っ越しをした事情など、本人の半生記が何度も同じ事が繰り返して書かれていました。

もちろん、著者にはそういう気はさらさらないでしょうけど、読んでいてこれほどの不幸自慢、貧乏自慢、社会貢献自慢を読まされても気の毒とも思えないし、きっと自己主張が強烈で我の強い人なんだろうなぁというのが感想です。随筆というより自分が波瀾万丈な小説の主人公のようです。

ま、それはともかく、過去に読んだ「家族シネマ」と「フルハウス」は、あまり記憶には残っていないですが、悪い印象はなく(よい印象がなければ2作品目は読まなかった)、作家という特殊な創造性をもった方には、なにか突き抜けた経験と、自信、才能があるものなのでしょう。

この新書を読んだことで、作家のバックボーンが良くも悪くも頭の中に残り、今度著者の小説を読むときには、それらが頭の中を横切り、普通とは違った感想になってしまいそうです。

もちろん著者の大ファンであれば、必読書であることは間違いありません。

★☆☆

著者別読書感想(柳美里)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

闇の底(講談社文庫) 薬丸岳

著者の作家デビューは2005年の江戸川乱歩賞を受賞した「天使のナイフ」でしたが、それに次ぎ2006年に出版されたのが本書で、2009年には文庫化されました。

著者の警察小説には「刑事・夏目信人シリーズ」が有名ですが、今回の作品はそれらよりもずっと前に書かれた独立した作品です。

少し前に読んだ柚月裕子著「慈雨」と同じく、幼女誘拐殺人事件が主たるテーマになっていて、この同じようなテーマがたまたま続いたことで心苦しくなってしまいました。

主人公は、少年時代に幼い妹が誘拐され殺害された過去を持つ刑事で、同様の事件が起きて捜査をおこないます。

また並行して、過去に幼女を暴行し殺害し、10数年の刑を終えて社会復帰している前科者を、同様の事件が起きる度にその事件と関係があるなしにかかわらず、制裁として凄惨に惨殺していく謎の男性が準主人公となっています。

したがって、警察は、幼女殺害事件とともに、幼女殺害の過去を持つ出所者に対する私的リンチ事件の二つを追うことになります。

果たして幼い妹を殺され、それが自分の責任でもあると思っている刑事に、幼女を殺しておきながら社会復帰してのうのうと暮らしている出所者をリンチから守ることはできるのか?というジレンマがあり、、、というような流れです。

未来と無限の可能性がある子供をターゲットとした犯罪は特に凶悪で許されるべきことではありませんが、日本では死刑制度があるものの、原則として複数名の殺害でないとまず死刑には該当せず、さらになんらかの精神疾患等が認められると意外と軽い刑で社会復帰してくるという問題があります。

さらにこの小説でも問題となっていますが、ペドフィリアは罰せられても再犯の可能性が高く、海外では出所後も居場所を公開されていたり、GPS装置を身につけさせられるという強硬な手段も使われています。

個人的には、刑として敷居が高く、世界の主流(G7の中では日本とアメリカだけが死刑あり)となっている死刑制度は廃止(休止)し、その代わりに、完全に社会とは切り離された住人のいない島に長期受刑者用の刑務所を作り、そこで受刑者自らが農業や畜産をおこない自給自足を原則としながら、長期刑(30年とか50年とか)や終身刑という制度を作ってはどうかと思っています。

★★☆

著者別読書感想(薬丸岳)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

空中庭園(文春文庫) 角田光代

2002年に単行本、2005年に文庫化された連作短編小説で、2002年下期の直木賞の候補になりましたが落選しました(直木賞該当作品なし)。増刷されていないのか、Amazonではなぜか販売されていません(2023/3/12時点)。読みたい人はBOOK-OFFへGo!

収録されている作品は、「ラブリー・ホーム」「チョロQ」「空中庭園」「キルト」「鍵つきドア」「光の、闇の」の6篇です。

東京郊外の団地(本文中はダンチ)に住む夫婦と子供二人の一家と、その近くに住む祖母、夫の若い愛人が、それぞれ語り手となって1話ずつ展開していきます。

こうした東京郊外の巨大団地を舞台にした小説は重松清氏や垣谷美雨氏の小説でもよく出てきますが、世代も施設も画一化された人工都市にすむ似たもの同士で、休日には家族でバスやマイカーに乗って近くの巨大ショッピングセンターへ行くのが家族のレジャーという姿は容易に想像ができます。

一家の夫婦は、若いときにできちゃった婚をし、妻は早く母親から離れたかった理由や、ダンチを購入したことで自分の両親とは違った家族を作ろうと奮闘、夫は職を転々としながらも複数の愛人がいるというダメ夫、子供達もそれぞれのストレスや問題を抱えながら、表向きは一切の秘密がない家族を演じています。

そういう意味では、意外性はない普通の家族ドラマとも言えるかも知れませんが、夫の若い愛人が、子供の家庭教師として家に乗り込んでくると言うのは、ちょっとやり過ぎな感じも。

★★☆

著者別読書感想(角田光代)

【関連リンク】
 2月後半の読書 未来を見る力、カタストロフ・マニア、慈雨、ブルーアウト
 2月前半の読書 幽界森娘異聞、保険ぎらい、ホテル・ニューハンプシャー、A2Z
 1月後半の読書 ボートの三人男、叫びと祈り、帰れないヨッパライたちへ、親鸞 完結篇

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1703
移住ナビ 過去に移住について何度か書いたことがありましたが、それは主に「高齢者が老後を過ごす移住」についてでした。

つまり、仕事を引退してからゴルフや釣りの趣味のためや、静かな環境を求め、広い庭(農園)があり、あこがれの薪ストーブでと、別荘のような地方の一軒家で、仕事や子育てから手が離れた夫婦が悠々自適の生活を求めて移住するというイメージです。

しかし、コロナ禍が始まってからは、近くに大きな病院がないと困る高齢者に変わり、リモートワークが可能となった若い人や、都会の生活や仕事に嫌気を感じた人が地方への移住という選択をするようになってきました。

国も、地方再生をテーマに挙げて、これは大きな災害時のことを考えると人口の一極集中ではなくできるだけ分散しておきたいという狙いと、やがて都市部に住む高齢者がピークに近づくと、介護や看護人材、介護施設が圧倒的に不足する問題があるのでしょうけど、地方移住へ積極的に支援をしています。

もちろん移住者は高齢者ばかりではないのでしょうけど、都会の生活費が高く、生活圏に自然が少ない都会から離れて老後はゆっくりと好きなことをしたいという思いから、高齢者の一部では流行っていましたし、会社で私の先輩だった人も、川崎市の自宅を売り払い、伊豆高原の別荘地に居を移しました。

特に現在75歳前後になる団塊世代は、比較的お元気で(元気すぎて暴走する人も多く)、かつ退職金もたんまりもらえたクチですから、満額もらえる年金を合わせると、都会で生活するよりずっと安く暮らせる地方なら、かなりリッチな生活ができるということで、競って高齢者の移住が進んでいました。

しかし実際のところは、都市部と比べると文化度が低く、話しの合う人がまわりにいないし、ゆっくりしたいのに、しょっちゅう地元のイベントにかり出され、勝手に庭や家の中まで他人が入ってきてプライバシーはなく、寄り合いに出ないと町内中に不満と苦情が行き渡り、次第にいたたまれなくなって逃げ出すという結果になります。

そうしたことが多かったのか、福井県池田町が広報誌に掲載した「池田暮らしの七か条」が先日大きな話題となっていました。

都会風吹かすな…「正直すぎる」移住案内はアリ?福井・池田町「七か条」がネットで炎上(東京新聞)
福井県池田町が1月の広報誌に載せた「池田暮らしの七か条」が波紋を広げている。「都会風を吹かさないよう」「品定めされることは自然」といった表現が批判を集めた。もともとは移住後のトラブルを避けるための親切心が出発点のようだ。

ま、よく考えれば当然とも言えることですが、地方へ行けば80代や90代でも普通に働いている人が多い中、60代や70代の人が「引退したから趣味以外はなにもせずゆっくりしたい」と言い張っても、古くからそこに住んでいる地域の住民に理解してもらえるはずがありません。

以前読んだ丸山健二著の「田舎暮らしに殺されない法」はそうした地方への移住希望者に対する警告本ですが、確かに都会と比べると治安が良さそうに思いますが、実は事件が起きても遠くにある警察の到着には時間がかかり、銀行が遠いので自宅に現金があり、周辺に防犯カメラの設置もなく、と考えれば田舎は強盗天国なのかも知れません。

それゆえに、上記の本には、物騒な話ですが玄関近くにはナイフを先につけた棒(つまり槍のようなもの)を備えて自衛するのが当たり前とも書いてありました。

また、上記よりはもう少し穏やかですが、玉村豊男著の「田舎暮らしができる人 できない人」も、地方というか田舎独特の慣習や人間関係を理解し、それに合う人以外はお勧めしない旨の話が書かれていました。

上記に書いたとおり最近は若い人の移住も増えてきているそうで、それはそれで滅び行くだけだった限界集落やその予備軍には明るい希望ですが、やはり地方に住む上での様々な壁は移住高齢者とそう変わりません。

そこで若い人の地方移住について面白い提案が書かれた記事を発見しました。

都会生活者が本当に移住しやすい地方って、こういうものじゃないの?(Books&Apps)
都会生活者が地方に移住する際に私がオススメしたいのは、大きめの地方都市とその周辺に絶えずつくられている、できたてのニュータウンだ。もちろんニュータウンならどこでも良いわけではない。昭和や平成に分譲したニュータウンは駄目で、分譲が始まって間もないところが狙い目だ。
(ザクッと中略)
都会生活者が心配する排他性や閉鎖性やローカルルールをできるだけかわし、地方生活の利便性を享受し、通勤や通学の利便性も手放さない選択肢は新しいニュータウンのなかにある。「都会風を吹かせるな」などと注文をつける町村や、猪や猿が定期的におりてくるような過疎地より、よほど現実的な選択肢ではないだろうか。

ニュータウンって聞くと多摩ニュータウンや千里ニュータウンを思い出して、若い人が気に入りそうには思わなかったのですが、地方独特の「排他性や閉鎖性やローカルルール」、知らない人がズカズカと家の中に入ってくる人間関係のわずらわしさを回避するには面白いアイデアだと思います。

こうした地方にニュータウンってあるの?って思いがちですが、地方ではどこもコンパクトシティ構想が進められていて、むやみに広がってきた住宅地や過疎が進む地域をできるだけコンパクトにまとめて、道路や橋、水道など社会インフラの維持を容易にし、災害対策に生かそうとしています。それがこのような地方のニュータウンとなって次々と作られているのでしょう。

広い庭と薪ストーブという団塊世代以上の田舎住まいに憧れを持つ人には向きませんが、若い人や子供を自然の中で生き生きと育てたいという向きには良いかも知れません。

【関連リンク】
1154 地方の可能性と限界
1089 プチ移住という選択
999  覚悟の地方移住か都市部で介護難民か


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1702
ガントレット(The Gauntlet) 1977年 米
監督:クリント・イーストウッド
出演者:クリント・イーストウッド、ソンドラ・ロック

主人公はアリゾナ州フェニックス市警察のぐーたら刑事で、市警幹部からラスベガスに拘置されている裁判の証人を連れてくるように命令されます。

しかしマフィアとつながっている市警幹部は、その証人を移送中に殺すためにぐーたら刑事を送り込み、マフィアにその動向を知らせていました。

何度か襲撃を受けたことで、この移送計画が漏れていることに気がつき、それでも難を逃れてアリゾナまでたどり着きます。

警察からも凶悪犯として手配され攻撃されることを見越し、バスを乗っ取り、鉄板で補強してそれで裁判所へ向かいますが、道路の左右から一斉に銃弾を浴びることになります。この左右からボコボコにされるクライマックスのリンチシーンがタイトルの「ガントレット」を指しているようです。

こうした一人の刑事が証人を連れてそれを阻止する敵と対峙する映画はよくありますが、1977年当時ならまだ珍しかったかも知れません。それにしても現実が同化はともかく、アメリカの警察官って漫画みたいにバンバン撃ちまくって怖い!って感じです。

またC・イーストウッドの出世作ダーティハリーシリーズ(1971年~1988年)はサンフランシスコ市警刑事ですが、やたら拳銃を撃ちまくるなど、似たような設定もあった気がしますので、それからヒントを得ているものと思われます。

★★☆

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折れた矢(Broken Arrow) 1950年(日本公開1951年) 米
監督:デルマー・デイヴィス
出演者:ジェームズ・スチュアート、ジェフ・チャンドラー

1850年頃のアリゾナが舞台の西部劇で、移民の白人と先住民のインディアン(劇中にこの名称が使われている)との対立と殺し合いが続く中、人道的な主人公の白人がインディアンのリーダーと親しくなり、対立するアメリカ軍を動かして平和的に居住地と平和をもたらすという「白人素晴らしい!」的な文部省が推奨しそうな教育的?映画です。

主人公が金を探しにひとりで旅していた時、インディアンの子供が怪我をしているところを助けます。その子供の助けがあり、インディアンの集落へ客として迎えられ、そこでリーダーと話しをすることで親しくなっていきます。

まずは郵便の配達人を襲撃せず安全に通して欲しいと頼むところから始まり、そのあと軍とインディアン部族との戦いを3ヶ月間だけ様子を見るために休戦をすることに双方が同意させます。

しかしインディアン側にはその休戦協定に納得せず離脱して白人を襲う者が出てきます。また白人側にも同様にインディアンを襲撃する者達も出てきます。

そうした中、主人公とリーダーが奔走し、休戦期間中の諍いを無事収めていくという昔の善きアメリカ人を描いています。

この時代に作られた映画にしては、ロケ中心で中身が濃くてうまく作られた映画だと思います。

★★☆

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メンフィス・ベル(Memphis Belle) 1990年(日本公開1991年) 米
監督:マイケル・ケイトン=ジョーンズ
出演者:マシュー・モディーン、エリック・ストルツ

第二次大戦中に、英国の基地からドイツへ向けて爆撃をする航空部隊に実際に存在したメンフィス・ベルと愛称がつけられた爆撃機とその搭乗員達の物語です。

爆撃機はB-17で、このメンフィス・ベルはドイツへの攻撃を25回おこなって無事に戻ってきた唯一の爆撃機と言われています。そして搭乗員達は、この25回を最後にして英雄として故郷に錦を飾ることになります。

戦意高揚のためか、このメンフィス・ベルを扱ったドキュメント映画がまだ戦争中の1944年に作られています。

物語は、24回まで無事に戻ってきて、25回目のブレーメンにある軍需工場への攻撃が中心で、一緒に攻撃に出た友軍機が次々とメッサーシュミットや対空砲火で撃墜されていく中で、軍需工場を探し出して爆弾を投下し作戦は成功します。

しかし帰投中メンフィス・ベルのエンジンが4機のうち2機がやられて壊れ、無線士が重傷を負い、さらに片方の車輪が出ないというトラブルに巻き込まれながら、無事に基地まで戻ってくるというアメリカ人にとってはハッピーエンドな映画です。

出演した俳優陣に有名人はいなくて他の映画ではチョイ役の人ばかりを集めた感じなので演技や人間ドラマは薄っぺらですが、映画自体の主役は爆撃機ということを考えれば仕方なしかなと思います。

映画では20数機の編隊飛行などが出てきますが、よくこれほど多くのB-17が集められたものだと思いましたが、1機だけは博物館にあった本物で、あとはCGや合成で作られているようです。

結果がわかっている内容を見る映画ですから、ドキドキ感はありませんが、それなりに楽しめました。

★★☆

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どら平太 2000年 「どら平太」製作委員会、東宝
監督 市川崑、脚本 四騎の会(黒澤明、木下惠介、市川崑、小林正樹)
出演者 役所広司、浅野ゆう子、宇崎竜童、片岡鶴太郎、菅原文太

江戸時代、地方の小藩で、博打、女郎部屋、酒造などを取り仕切る三人の親分から賄賂をもらって見逃していた藩の幹部を一掃しようと新しく町奉行(どら平太)がやってきます。

遊び人だと知られたどら平太は、どうせすぐに尻尾巻いて逃げるだろうと油断させておき、次々と三人の親分に近づき、一気に死罪を申しつけます。当然子分達が一斉にかかってきますが、次々と峰打ちに果たすというのが最大の見どころです。

わかりやすい、勧善懲悪もので、ドラマの水戸黄門や大岡越前などとも共通します。藩の幹部から、町奉行ごときになにができると言われると、江戸詰の藩主から渡されたお墨付きを見せ、全権委任されていることを知らしめ(あとで偽物とわかる)、悪人が巣くい、役人の立ち入りが禁止され治外法権となっている壕外の町へ、自らが遊び人として豪遊し、一気に掃除をするところなど、胸がすく活躍をします。

1969年に結成された映画企画・製作グループ「四騎の会」メンバー(黒澤明、木下惠介、市川崑、小林正樹)は、2023年現在はいずれも鬼籍に入っていますが、映画が製作された2000年当時は監督を務めた市川崑氏だけが存命中で、他のメンバーの思いをこめた作品を作ったということなのでしょう。

★★☆

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ブロークンシティ(Broken City) 2013年 米
監督 アレン・ヒューズ
出演者 マーク・ウォールバーグ、ラッセル・クロウ

NY市警の刑事だった主人公は7年前に正当防衛で不審者を射殺した件で、市長から辞職することを指示され、納得はできなかったもののその後は私立探偵として過ごしていました。

そこへ次の選挙が近い市長から連絡があり、自分の妻が浮気をしているようなので、相手とその証拠をつかんで欲しいと頼まれます。

調べると浮気相手は市長選挙で争っているライバル候補の選挙参謀だということがわかり、その写真を市長に渡して調査完了かと思ったら、その選挙参謀が何者かに射殺されてしまいます。

市長のバックには再開発地区での大きな利権が絡んでいたり、実は主人公は正当防衛ではなく一方的な射殺だったことなどが判明していき、やがて主人公は大きな選択を迫られることとなります。

なにか、教訓的なものがあるわけではなく、過去のNYが舞台の事件もの映画の良いところを低予算でコンパクトにまとめた映画って感じのものでした。ちょっと物足りない感じです。

★☆☆

【関連リンク】
2022年11~12月 るろうに剣心 最終章 The Final、 The Beginning(2021年)、マイ・インターン(2015年)、蜂蜜と遠雷(2019年)、ブリット(1968年)、シェフ 三ツ星フードトラック始めました(2014年)

2022年9~10月 バニラ・スカイ(2001年)、千利休 本覺坊遺文(1989年)、パリは燃えているか(1966年)、御法度(1999年)、墨攻(2007年)

2022年7~8月 グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(1997年)、トムホーン(1980年)、わが谷は緑なりき(1941年)、ダイ・ハード/ラスト・デイ(2013年)、赤毛(1969年)



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1701
サイドブレーキ自動車の運転免許を取ったのは18歳になってすぐなので47年ほど前ですが、その後しばらくして知人に譲ってもらったり、新聞の3行広告に載っていた激安中古車を買ったりして何台か乗り継ぎました。

当時の乗用車や商用車の変速機はおよそ9割がMT(マニュアル)で、安い中古車は当然MTでした。

AT車は高級車で新車の価格表を見てもAT車はMT車より数万円高でした。車両本体価格が100万円程度で、ミッションの違いで2~3万円違うというのは結構大きな違いでした。

AT(オートマチック)とMTで運転時の違いは、いくつかあるでしょうけど、役割が違うなと思ったのは、サイドブレーキ(ハンドブレーキという場合もあり)の違いです。

MTの場合、赤信号などで停止するときには、クラッチを踏んでシフトダウンをしていき(しないときもあり)、停止する前にニュートラルの状態にし、停止すれば動かないようサイドブレーキを引くというのが普通でした。

もちろん右足でフットブレーキを踏み続けてもいいのですが、停止時はサイドブレーキ、右足は休めるか次に走り出すためアクセルを踏む準備をするというのが慣例でした。

そして走り出すときに、クラッチを踏んで1速に入れ、アクセルを踏みながらクラッチをゆっくりつなぐと同時にサイドブレーキを下ろします。その一連の動きが身についています。

で、ATが90%以上を占める現在はというと、いつの間にかサイドブレーキがパーキングブレーキと呼ばれることが多くなり、ワイヤーを手で引くのではなく、足踏み式のパーキングブレーキや、電気式のスイッチで指で切り替えるタイプが増えてきました。電動の場合はアクセルを踏むと自動的に解除されるものが多いようです。

パーキングブレーキペダル以前、軽自動車に乗っていたときには足踏み式のパーキングブレーキが付いていましたが、個人的にはそのパーキングブレーキペダルのため、左足の置き場がなくて困ったものでした。腕の力があまりない人にとっては足で踏むブレーキは効果的でしょうが、それ以外のメリットは感じませんでした。

私より20歳ほど若い人が横に乗ったとき、私が信号で停まる度にサイドブレーキを引くのを不思議に思って聞かれたことで、そのことが現在では異例なことになるのだと気がつきました。

最近のサイドブレーキ(パーキングブレーキも)は、信号待ちなどちょっとした停車時に使うものではなく、パーキング(駐車)するときに使うものとされているようです。名称もサイドブレーキ(ハンドブレーキともいう)から各社ともパーキングブレーキと変わっていました。

信号待ち等では、通常のフットブレーキを踏み続けるというのが、現在の使い方のようです。それは信号などで停車している時にはほぼすべてのクルマのブレーキランプが点灯し続けていることからもわかります。夜の信号待ち等で、前のクルマのブレーキランプがずっと点いていると眩しく邪魔以外の何物でもありません。

これに違和感があって、私は信号などで数秒以上停車する場合は、必ずサイドブレーキを引いてフットブレーキから足を離して待ちます。サイドブレーキとフットブレーキを併用するのは下記の事情によります。

・坂道でサイドブレーキだけでは動く可能性がある場合
・後方から来るクルマに対し停止していることを知らせる必要がある時
・踏切の先頭で待つ場合や大きな交差点で右折待ちをする時など、追突されて飛び出すと大きな事故につながる場合

上記以外の場合は、サイドブレーキを引いて、右足はフットブレーキからおろして休めています。したがってブレーキランプは点きません。

時々、交通事故のニュースで、後ろから追突されたクルマが暴走し、歩道に乗り上げ歩行者を巻き込むというようなことが起こります。

最初、どうして追突されたクルマが何十メートルも動くの?と理解不能でしたが、考えてみると、サイドブレーキをかけずにフットブレーキだけだと、追突された衝撃でブレーキから足が離れてしまいクルマが動き出すということなのかと気がつきました。またその衝撃で、ブレーキから足が外れ、その後ブレーキとアクセルを踏み間違え暴走することもあるのでしょう。

サイドブレーキをしっかり引いていれば、衝撃で少し飛ばされても、それ以上動くことはまずありません。もしパニックになってアクセルを踏んでしまっても、動きはしますがノロノロ進む程度で済むでしょう。少なくとも勢いよく歩道や路肩に飛び出すというようなことはありません。

そうした二次被害を出さないためにも停止中にはサイドブレーキをかけておくことを私はお勧めします。

サイドブレーキ(パーキングブレーキ)の構造ですが、基本はドラムブレーキです。というのも高速からの減速ではディスクブレーキが一番効率が良いのですが、低速時や停止時にブレーキ効果が高いのは実はドラムブレーキなのです。

そのため、4輪ディスクブレーキのクルマでも、後輪2輪のディスクブレーキの中にドラムブレーキを内蔵し、パーキングブレーキとして使うことがほとんどでした。

しかしディスクブレーキの中にドラムブレーキを内蔵するにはそれだけコストがかかるので、内蔵のドラムブレーキを省略し、後輪のディスクブレーキでパーキングブレーキを代用するケースが増えてきました。

このドラム式が省略されたパーキングブレーキは停止時にはあまり効かないので、手動のサイドブレーキの場合は力一杯引っ張る必要があり、それゆえ、足踏み式や電気式に代わってきたのかも知れません。

ところで、電気式パーキングブレーキの場合、アクセルを踏むと自動的に解除されます。これはつまり動かないようパーキングブレーキをかけていたのに、なにかの拍子でアクセルペダルを強く踏んでしまう(後ろの荷物をとろうとして身体がひねったときに足がアクセルに乗っかってしまったり、足がつってアクセルペダルを踏むとか起こりえます)とクルマは飛び出してしまうということです。こんなのは本当の意味でパーキングブレーキとは言えません。

またバッテリーがあがると当然解除もできなくなります。他のクルマとブースターケーブルをつないで始動しようと思ってケーブルが届く位置まで押して動かそうとしても動かないということです。ま、そういう機会は滅多にないでしょうけど。あと、砂利道でのサイドターンもできませんしね。

【関連リンク】
1629 クルマの運転でわかるドライバーの文明度
1605 年齢層別交通事故数と運転免許取得者数
1560 ドライバーの交通ルールとマナー


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1700
祝!1700回 2002年から21年で日記(ブログ)が1700回に達しました。地味ながら続けています。
リストラ日記 過去INDEX


未来を見る力 人口減少に負けない思考法(PHP新書) 河合雅司

著者は「未来の年表」がベストセラーになり、その後「未来」を銘打ったシリーズ新書が柳の下のドジョウというか雨後の竹の子というか、次々と矢継ぎ早に出版しているジャーナリストです。

本著はその未来シリーズ5作目となる作品で2020年に出版されています。

こうした出生率や生産人口などのデータを元にした新書は、藻谷浩介著「デフレの正体 経済は「人口の波」で動く」など、数多くありますが、こうした話しはほとんどの日本人にとって「不都合な真実」であり、記憶に残したくない、議論のテーマにもしたくない一過性の話題にしかなりません。

というのも、政治家でも重鎮と言われる人達は概ね60歳以上で、さらにそうした政治家を選ぶ最大勢力の団塊世代が75歳以上ということもあり、せいぜいあと20年が無事に過ごせれば良いので、その先の未来がどうなろうと関係なく、考えたくもないというのが実態だからでしょう。

ちなみに現在の衆議院議員の平均年齢は55.5歳、昨年の参議院選挙の当選者の平均年齢は56.6歳ということです。いずれにしても30年後にはほとんどいなくなる人ばかりです。そう言う人達に50年後、100年後を考えた政治ができるとも思えません。

それはさておき、本著はコロナ禍が始まったあとに書かれたもので、そうした未曾有の厄災をきっかけに日本の社会構造や働き方などを変化させるアイデアなども書かれています。

ただ日本人というのは外圧によって変化する(させられる)のは得意ですが、厄災ごときで変化できるか?ってことは懸念するところです。

仕事や市場、老後、地域などの未来について、おおまかな想像図を示してくれていて、それに対してどうすれば良いかというヒントを与えてくれます。

しかし先に書いたように、こうした悩ましい不都合な真実の問題が、グルグルと頭の中に留まっているのがせいぜい1ヶ月ぐらいというのが残念なところです。

★★☆

著者別読書感想(河合雅司)

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カタストロフ・マニア(新潮文庫) 島田雅彦

2017年に単行本、2020年に文庫化された予言的なSF小説です。

予言的と書いたのは、その中に出てきた世界中を襲った殺人新型ウイルスの出現と非常事態宣言などは、まだコロナ禍の2年前に書かれた本著で見事に予言をしていたからです。

さらにこの小説では、太陽フレアの爆発により電磁波が発生し地球上の電気通信がすべて異常をきたし使えなくなり、電気が使えなくなると、水道のポンプも動かなくなりインフラが壊滅、原発も冷却できずにメルトダウンし、東京も放射能に侵されていきます。

その太陽フレアの爆発で太陽コロナのプラズマ噴出などの話も出てきますが、太陽コロナと、2019年12月に発生し始めたコロナウイルスとも直接は関係ないですが、コロナという名称が妙に合致していて予言的と言えます。

小説で描かれる時代と舞台は2036年、今から13年後の関東です。

主人公はある医療薬の治験モニターになり、治験中に人工冬眠で眠らされていましたが、目が覚めたら周囲には誰もいなくなっているという異常事態に遭遇します。人工冬眠技術は現在もすでに実用化まで来ていて火星有人探査時に飛行士に施されるという話があります。

その眠らされているあいだに、太陽フレアの爆発で都市機能が完全に失われ、さらに新型ウイルスの流行で、都市部はガラリと変わってしまい、主人公はそうした絶望状態の中でどう生き抜くのか!?という感じ。

昔から無人島への漂流物語とか、ひとり取り残されて生き抜くというスタイルの小説が好きですから、この小説もたいへん面白く読めました。

そう言えば小松左京著の「復活の日」(1964年)とも似ています。あれは核戦争と殺人ウイルスの二重苦でした。主人公はたまたま南極の昭和基地にいて低温に弱いウイルスには罹りませんが、アメリカの核ミサイルが地震に反応して自動発射されると、ソ連の自動反撃核ミサイルが南極にも飛んでくる?ということで、アメリカの核ミサイルの発射を無効化するため生き延びていたアメリカの原子力潜水艦に乗り込みアメリカへ渡るという話でした。

そうした悲劇的な話ですが、主人公が軽く明るく前向きなので、読んでいても暗さはあまり感じません。

著者の小説は12年前に現代の若者を描いた「自由死刑」を、昨年には戦後のドサクサ時代を描いた「退廃姉妹」を読んでいて、そちらもとっても面白かったですが、今回のこの作品とは全く趣の違う内容で、同じ作家さんが書いたと思えないほどでした。有能というか万能な方です。

★★★

著者別読書感想(島田雅彦)

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慈雨(集英社文庫) 柚月裕子

著者の小説は3作目となりますが、今回は前回読んだ「朽ちないサクラ」と同様に警察ものというか、正確には定年退職した元捜査一課の刑事が主人公のシリーズものではない独立した長編小説です。2016年に単行本、2019年に文庫化されています。

主人公は群馬県警に入りますが希望とは違い僻地の村民との関係が難しい駐在所に移動となりますが、そこで起きた事件を苦労して解決したことが認められ、県警本部に異動となって刑事になります。

そこで、幼女殺害事件が起き、容疑者を見つけますが、当時のあまり正確ではないDNA検査でクロとなり、本人はずっと否認したまま逮捕され裁判でも有罪が決まります。

しかし事件直後から長く留守にしていた容疑者の隣人が、その事件のあった日時に容疑者が自宅にいたことを目撃したことが判明し、えん罪の可能性があると上司に報告しますが、DNA検査の信憑性に疑義が出ると他の事件にも影響が出るので再捜査は握りつぶされることになります。

組織を守るため、また自分を守るために上司に抵抗できず、えん罪を見逃した16年前のことをずっと後悔していますが、退職後にその16年前の幼女殺害事件と非常によく似た事件が起きたことで、もしかすると当時見逃した真犯人が起こしたのではないかと苦悩します。

退職後は、仕事で向き合った死者の霊を収めるために妻とともに四国八十八か所霊場めぐりに出掛けますが、現職当時の部下からこの新しい事件捜査に協力して欲しいと頼まれ、お遍路を続けながら電話で連絡をとり続けます。

この小説では、犯人を除いて嫌な人は出てこず、また家庭も順調で、すごく恵まれた主人公です。世の中の半分ぐらいは嫌なヤツと思っているので、これほどいい人ばかりが登場すると、ちょっと真実味が薄れて感じます。

あと、四国お遍路のことも詳しく書かれていて、おそらく実際に現地に赴いて距離感や風景などを身を以て感じられたのでしょう。

★★★

著者別読書感想(柚月裕子)

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ブルーアウト(小学館文庫) 鈴木光司

著者の小説は、1990年代に「リング」や「らせん」などホラー小説が大ヒットした頃にたくさん読みましたが、2008年に「アイズ」を読んでから15年間ご無沙汰していました。この小説は、2015年に単行本、2019年に文庫化されています。

昨年、和歌山の潮岬へ行きましたが、そのすぐ近くの紀伊大島にあるトルコ記念館や、トルコ軍艦(エルトゥールル号)遭難慰霊碑があることは知っていました。時間の関係で通り過ぎましたが、もし先にこの小説を読んでいたら、きっと寄っていたでしょう。

著者とホラー小説は望むと望まないとに関わらず、ほぼそうしたイメージが定着していますが、この小説にはホラー要素はなく、現代と台風でエルトゥールル号が串本沖で沈んだ1890年と二つの時代が並行して進行していきます。

主人公は、現代は串本のダイビングショップでインストラクターとして働く若い女性、1890年はエルトゥールル号に乗り込むトルコ海軍のアッメフット大尉です。

エルトゥールル号が串本沖で沈んだという歴史は動かないので、旧式の蒸気と帆船の両方を動力とする大型船が、なぜ台風がやってくることを知りながら、難所である潮岬付近を航行し、遭難することになったのかを忠実に書いてありよく理解できました。

その一方、現代のほうで、トルコから来たダイビング客が実は祖父がエルトゥールル号の生き残りで、その祖父が預かった仲間の遺品(ガラスの小瓶)を探すために潜っているという話は、ちょっと無理矢理のこじつけな感じがしますが、ロマンは感じられます。

もう少し、違ったカタチ、例えばホラーでもファンタジーでも、時代を超えた壮大なロマンスなどを期待しただけに、あまりにもささやかなファンタジーで終わってしまい、そこのところだけはちょっと残念でした。

★★☆

著者別読書感想(鈴木光司)


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