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NHKなどで高齢者の貧困問題が取り上げられ、それに対する支援の必要性をマスコミが訴えかけると、一部の人からは「お金持ちのほとんどは高齢者なんだから、これ以上高齢者を優遇する政策なんて必要ないじゃん!」「支援するにも財源はどこよ?」ってもっともらしく言う人がいます。
その根拠として、よく使われるのが下記の総務省統計局の家計調査などです。
総務省統計局家計調査
貯蓄・負債編 二人以上の世帯 世帯主の年齢階級別(2013年度)
これを見る限り、60~70歳と70歳以上の高齢者の貯蓄金額が突出していて、全体の割合でも60歳以上の世帯主がいる二人以上の世帯の貯蓄額は全体の半数を超えています。
ま、ちょうど高齢者の仲間入りをした団塊世代は、長年働いてきたことによる退職金や貯蓄で資産形成ができていること、年代的にも親からの遺産相続を終えて、人生でもっとも多くの資産を保有していると言っても間違いないでしょう。だからと言って現在の高齢者の大半が資産家というわけではありません。
つまり「世帯主の年齢が65歳以上の世帯の貯蓄の分布」を見てみると、2000万円以上の世帯資産を持つ裕福な高齢者世帯が43%あるのに対し、300万円未満の資産しかない二人以上の高齢者世帯も11%以上あります。
さらに「二人以上の高齢者世帯」ではなく、個人(単身世帯含む)で見た場合、60歳以上の高齢者では「2000万円以上」の貯蓄があると答えた人は15.3%、「1000万円以上」で26.1%に対し、「貯蓄なし」が9.9%、「貯蓄なし」を含め「300万円未満」が30.4%にのぼります。
つまり60歳以上高齢者全体でみると約3割が貯蓄は300万円未満という、いわば貧困状態なのです。(出典:内閣府平成23年度高齢者の経済生活に関する意識調査結果)
300万円近くも貯蓄があればいいじゃないと思うのは現役で働いている人だけで、健康の問題等で働けない人や、働きたくてもそうそう仕事が見つからない高齢者の場合、今後得られる収入は年金しかなく、300万円未満の貯金というのは、大きな病気や怪我でもして入院したり、また家の修繕など、ちょっとしたことですぐになくなってしまいかねない実に心許ないものです。
総務省統計局データと内閣府意識調査のデータで結構貯蓄額に差があり「?」と思うところもありますが、これらの調査データというのは、全国民対象の国勢調査以外では何千万人の各世代からせいぜい千人程度のアンケートや調査表のサンプルをとって得られたもので、必ずしも実態を現しているものではありません。
例えば、資産がほとんどない人と、数千万円の資産がある人に「保有資産のアンケート」が送られた場合、どちらのほうが回収率が高いかと言えば、調査と税務署と関係がなく秘密が保持されるのが前提であれば、資産がある人からのほうが回収率が高いのは明かです。
そういう偏りの積み重ねと、極めて少数のサンプル数での統計データですから、内容に大きく食い違いがあっても不思議ではありません。
それはともかく、高齢者、65歳以上と仮定すればおよそ3200万人ですが、貯蓄額が300万円に満たない30%の人数と言えば960万人です。
前述の通り、「恵まれた高齢者にこれ以上手厚くする必要などない!」という人もいますが、二人以上いる世帯の平均貯蓄額平均(1101万円)に遠く及ばない、高齢者の30%、960万人を、国は将来のある若者のために見捨ててしまって構わないというつもりでしょうか。
それともそういう高齢者は家族や親戚が手厚くサポートをするべきだと言うのでしょうか?
この家族(息子や娘)が自分の親など高齢者の生活の面倒を見なくちゃいけないという流れは一見正しそうですが、それが結果的に貧困の連鎖を続けることになります。
つまり、貧しい親を子供が介護や金銭的な支援をしなければならないと、その子供は高等教育を受けたくても、親の介護の世話や医療費を稼ぐために受けられず、そして学歴がなく働ける時間に制限があるため非正規労働しか選べず、いつまでも貧困から脱出できない人を作るということです。
高齢者向けの支援を反対する人って、高齢者向けの費用を削って、あるいは高齢者も負担する消費税をもっと取って、その中から若者向け、少子化対策にもっとお金を使えと言います。
では、現在、若者の支援や、少子化対策に国のお金(税金)は使われていないのでしょうか?
内閣府 行政刷新会議事務局の発表しているデータでは、(主として若者の)就労支援(120億円)、求職者支援(628億円)、非正規から正規社員化支援(194億円)、雇用創出(350億円)、待機児童ゼロ施策(200億円)、35人以下学級の促進(教職員の増員)、高校授業料の無料化、新たな子供手当、学校施設整備などにも使える地域自主戦略交付金(1兆円)などがあります。
被災地支援の復興予算19兆円に比べるとごくわずかですが、それは高齢者向け支援も同じ事で、高齢者が受けられる支援というものは特に目新しいものはなく、逆に高齢者医療費の負担増など負担を増やす方向にあります。
だからNHKなども「高齢者の貧困問題をなんとかしないと」と問題提起しているわけです。
ちなみに国が決めている高齢者向けとされている介護支援(33億円)、地域医療支援(19億円)というのがありますが、介護支援策=介護事業者や介護者への支援、地域医療支援は都市部に集中する高度医療から在宅医療や中小の地域病院の活用ということで、決して貧困層の高齢者のための支援ではありません。
それらを並べて比べてみると、高齢者からは、「若者や現役世代への優遇策ばかりで、もっと切実な貧困にあえぐ高齢者福祉に力を入れてくれよ」という声が出ても不思議ではないのです。
なぜそういう「高齢者支援ばかり優遇されている」と思われるのでしょうか?
もちろん日和見主義の一部マスコミの世論誘導もありますが、ひとつは年金の将来像が見えないので、今の高齢者がもらっている年金を若い人がうらやむ気持ちから。
次に高度成長と終身雇用を生き延びてきた高齢者が得た退職金が、終身雇用と年功序列賃金の崩壊で今後は消えつつあることに対する不安。
3つめに旧厚生省・医学界・医薬業界などにつきまとう規制と既得権益による医療費高騰のツケが回ってきて、税金で負担する医療費支出が膨大になりすぎてしまったこと(それを高齢者に責任転嫁している)。
そして最後に政治に関心の高い団塊世代以上の国民の声が、政治や社会の声に反映しやすいことなどが考えられます。声が大きいと、それだけ目立ちますので、なにか高齢者ばかり優遇されているという錯覚を覚えます。
そんなわけで、高齢者向けの社会福祉コストがかかりすぎ!って言うのなら、若い人達や現役世代への支援コストと比較してものを言えよってことで、単に老い先短いいうだけで、困っている高齢者を切り捨ててしまうような社会保障なんて許せるか!っていうのが私の結論です。
【関連リンク】
834 高齢者向けビジネス(第4部 ボランティア編)
824 高齢者向けビジネス(第3部 仕事編)
820 高齢者ビジネス(第2部 趣味編)
810 高齢者向けビジネス(第1部 居住編)
733 高齢者の地方移住はこれからも進むか
574 仕事を引退する時、貯蓄はいくら必要か
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以前書いた「高齢者ビジネス(第1部 居住編)」の続編で、今回は趣味編です。趣味といっても広いのでいくつかに絞っていきますが、狙いはやはり65歳前後になった800万人を超える団塊世代の人達向けが中心になるでしょう。
新聞広告や挟み込まれているチラシをみると、いまは団塊世代向けの広告ばかりで、霊園、お墓、介護施設、懐かしのメロディのCD、懐かしの映画DVD、ウォーキングシューズ、電動マッサージ機、添乗員付きフルサポートの旅行、自宅リフォーム、二世帯住宅、宅配弁当、組み立て模型、安楽椅子、腰や膝のサポーター、健康食品、シワやお肌の手入れグッズ、スポーツジムなどが中心です。それらがいま旬の(新聞読者向けの)売れ筋商品・サービスと言うことなのでしょう。
ちなみに20年前の新聞チラシで多かったのは、圧倒的に不動産、自動車、家具、スーツ、家電製品、カルチャークラブ、ゴルフ場やリゾート会員権、ホームセンターなどでした。
もとより高齢者と言っても今の60代は元気で、外出する機会も多く、旅行やスポーツの趣味をもっている人もかなりいます。冬山登山や海外の観光地でなにか事故が起きると遭難者や被害者はたいてい60過ぎの高齢者ですし、平日の国内の有名観光地は元気で暇そうな高齢者ばかりと言っても過言ではありません。
そうした観光地や名所旧跡へ行くとよく目にするのは高級カメラをもった高齢者達です。そして昔なら高級カメラは男性の趣味だったものが、最近のCMトレンドを見てもわかるとおり、女性の需要も高まってきています。
写真撮影は他の趣味と比べて体力や資金力は不要で、そしてすぐにでも始められる趣味です。もちろん趣味が高じて高級一眼レフカメラ本体と超望遠レンズなど一式を揃えたり、遠出に備えてワンボックスカーを改造したりすると、それなりにお金はかかりますが、道具よりも撮影する場所とタイミング、ジッとシャッターチャンスを待つ忍耐力、被写体を捉える技術があれば、お金をかけずにいい写真を撮ることができます。
高級一眼レフカメラを買う年齢層は40歳以上が約7割を占めるというデータもあり、40代に入った団塊ジュニア以降は人口減少が甚だしいので、すでにその需要はピークを迎えつつあると思います。
20代の若い人の多くはスマホのカメラで十分という人が多く、わざわざ重くて邪魔になりしかも高い高級一眼カメラを買おうと思う人はマニア以外少ないでしょう。
しかし買った高級カメラも、高齢者の場合には健康上の問題や、買ったはいいけど意外に重くてかさばり、気軽には使えない一眼レフカメラを結局ほとんど使わない人が、これから増えていくでしょうから、当然ながら高級カメラの中古市場が賑わうようになると予想しています。
カメラのような精密機器の場合、オークションなどで個人やカメラ専門業者以外の業者から中古品を買うのは保証がなく、リスクが高いのでできれば避けたいものです。
一番いいのはメーカー直営の子会社かメーカーから認定を受けた専門中古業者が、中古品のリフレッシュと販売(ネット)をおこなってくれるとユーザーも安心して購入できます。
ただし、それだけで稼ごう、儲けようとすると、中間マージンがその分大きくなり「買値は安く・売値は高く」となってしまい、安い個人オークションや型落ちモデルの新古品価格との比較から利用者はあまり増えていきません。
そこでメーカーの新製品の販売強化策として、その販売促進費を中古市場に流用する作戦です。
どういうことかと言うと「当社の新製品を買えば、もし売るときには、高く買い取ります」という保障を新製品購入希望者に与えることで新製品の販売強化をおこない、同時にそこで得られる利益の一部を中古品の買取価格補填や整備費用に回すのです。
それによって中古品売買のマージンを減らすことができ、高く買取り、リーズナブルな価格で販売することが可能となります。
そう仕組みを作れば、裕福な人には新製品を安心して買ってもらい、そして不要になったり買い換えをしたい時には気軽に下取りに出してもらう仕組みを作ります。
なんだったらクルマの残クレローンと同じように、一定期間までなら購入価格の50%で引き取るという制度や買取保障を付けてもいいでしょう。
クルマなどと同じで、老い先短い高齢者が5年後に売りたいと思った時にほとんど無価値ですと言われるとショックを受けますが、ある程度の買取保障があれば、安心して高額な耐久消費財が買えるというものです。
高級一眼レフの新製品は高くて手が出ないけど、中古品ならという人は、メーカー系列の会社が全面的にメンテナンスをしてくれて、品質保障までついた製品が買えるのならば、オークションやハードオフより、多少は高くてもそちらを選ぶでしょうし、もっと本格的にやりたければ、市場やオークションに流れる自社製品が中古で安く出てきたならば片っ端からその関連子会社が買い取って値崩れを起こさないようにすれば、中古品価格の高値安定調整も可能となります。
次に私が狙うべきと考える高齢者向け趣味のマーケットとしては、家庭菜園(貸し農園)です。
今の団塊世代の多くは、元々都会に住んでいた人よりも、地方から都会へやって来た人達が多く、子供の頃は畑や田んぼで家の手伝いをしていたという人がかなりいます。
また都会育ちの人も年齢を重ねるとともに、花を育てたり庭で土いじりがしたいと思う人が自然と増えていきます。
そうした人が暇と体力を持て余している中で、自宅(マンションとか)の近所にそれまでは古いアパートや駐車場があった土地にレンタルの畑ができると大いに喜ばれるでしょう。
人口や世帯数が減っていく中で、これから駅から離れた郊外でアパート経営や駐車場経営をする人は確実に減ってくるでしょう。そうした土地を安く借りて利用するのです。
農林水産省はじめ様々な自治体が市民農園を推進していますが、そうした役所主導の大規模で、予約がいっぱいで、なかなか順番が回ってこなく、融通の利かないものではなく、もっと小回りが効いて小規模で臨機応変なものを想定しています。
家庭菜園用として貸し出す月々費用は格安に設定し、さらに貸し農園に定期的に巡回してくるプロ(農家の人のパート)のアドバイスは無料で受けられるようにします。
そうすれば農園を借りた人は素人でも安心して農作業ができ、さらに自分で作った無農薬野菜や生活に彩りを添える花の収穫など成果も期待でき満足感も上がります。
そしてここが肝心なのですが、上記の通り月々の貸出費用は極力安く抑え、その代わりに作業道具や肥料、手間のかかる雑草取りや代理での水やり作業などのオプションで儲けるビジネスモデルです。
大規模な安い市営駐車場や各地にありながらもなぜコインパーキングが流行ったかと言うと、100円という安価で駐車ができるという錯覚と、小規模ながらあちこちにあって便利だからです。
そしてビジネスモデルとしては、コピー機やプリンター本体のように、本体は個人に安く売ったり貸し出して、トナーや紙、インク代で儲けるというものです。まずはとっかかりやすくて年金生活者でも十分に支払い続けられる安い価格で長期利用者を集めるわけです。
コインパーキングのTime24と競争になりますが、あちこちに点在する空き地の利用を土地の所有者に訴えかけます。なんたってコインパーキングと違い、初期の設備費用はほとんど不要(土盛りだけ)で、もし将来更地に戻す必要があっても大きなコストはかかりません。
最低限の設備として水道(または井戸)設備だけでOKですから土地の持ち主にとってもメリットはあります。
さて次は今後自宅介護が普通になってくると、宅配弁当も流行ってくるでしょうけど、今まで厨房には近づかなかった男性も毎食の料理を作る必然性ができてきます。夫婦ともに健康でも、夕食は交代で作るとか、そういう老夫婦世帯が増えていっても不思議ではありません。
そう、3つめの趣味は料理です。
定年後に料理学校へ通って料理を習う男性が増えてきたというニュースを読んだことがありますし、いつも年賀状だけで欠礼している昔お世話になった80歳を過ぎた元上司も、妻に先立たれてから、料理学校へ通い、毎食自分で食事を作っていると年賀状に書いてありました。
妻に教わろうとすると、「そんなことも知らないの!」「手際が悪い」とかプライドをメチャクチャにされてしまいそうなのと、男性は一流のプロが作った料理を外で食べる機会が多くあって、舌の肥えている人が多くいます。
なのでちょっと凝った料理や、妻の味付けではなく自分が食べたい料理を好みの味で作ってみたいという欲求があります。
で、ここは優しいおネェさんが教えてくれる「簡単」「便利」で「美味しく」「健康にいい」料理を学ぶことができる「男性料理学校」が流行りそうなので、それを住宅地域の駅前に作るのです。小規模なら住宅を少し改造した個人宅でも始められるかもしれません。
することがなく自宅にこもり、妻以外と話す機会がめっきり減った男性高齢者にとって、同じように手つきがたどたどしい男性に混じっての料理学校は、自分好みの料理が作れるという実益も十分に満たし、しかも若い女性の先生と気軽に話しができ、同じような立場の友人も増やせる絶好の趣味と言えます。それで得た知識で夕食を作り、妻や家族に喜ばれたらもう一石四鳥です。
経営する側も、以前なら専業主婦や嫁入り修行中の働いていない娘さん向けに開いていた平日昼間のコースが、少子化と共働きが増えていくにしたがい生徒が減っています。
変わって、働く若い女性向けの平日夜間や土・日曜日に開くことが主流になりつつあり、そこで引退した男性向けに平日の昼間のコースを入れると教室が有効利用でき、もってこいではないでしょうか。
ちょっと思いついただけの3つの高齢者向けビジネス(趣味編)を考えてみました。いずれも現在あるビジネスの延長線上のものばかりですが、あともうひとひねりか、ふたひねりできれば、大きなビジネスとしてチャンスがあるかも知れません。
【関連リンク】
824 高齢者向けビジネス(第3部 仕事編)
810 高齢者ビジネス(第1部 居住編)
754 東京オリンピックとこれから高まるビジネスチャンス
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毎年警察庁から発表されている交通事故死亡者統計を見て、ここ数十年ものあいだ死亡者総数は大きく減ってきているのはたいへん喜ばしいことですが、高齢者が被害に遭う割合が増えてきています。
高齢者人口が増えているのだから当たり前といえばその通りなのですが、これからの社会においては高齢者が被害者、加害者に陥らないように対策をしていくことが求められています。
例えば標識を大きく見やすくしていくとか、混乱しそうな複雑な標識を整理してシンプルにする、クルマの自動ブレーキ装置や暴走防止装置の促進、自動運転まではいかなくても運転補助装置の装着推進、自転車専用レーンの設置と教育、車いすでも通行できるように狭い歩道の拡張などなど。
交通事故の死亡者とは、事故の発生から24時間以内に死亡が確認された場合だけで、数日後に亡くなったケースは、この統計には含まれません。実際は救急医療が発達してきたこの十数年で、重症患者でも即死を免れるケースが増えていると思われますので、単純に交通事故死亡者数が減ったとはいえ、死亡事故につながる大きな事故件数が減ったということは必ずしも言えません。
交通事故で亡くなる人の数は1970年の16,700人を頂点として、その後様々な交通安全への取り組みや、自動車の安全性技術、そして救命医療の進歩などにより年々減少し、2013年は年間で4,373人(1970年比で26.2%)まで下がりました。これは画期的な成果だと言えます。
国際比較してみると人口10万人当たりの交通事故死の割合は、南アフリカで27.9人、マレーシアの24.6人、アラブ首長国連合の23.5人、ロシア18.4人が上位4カ国で、その他主要国では、韓国12.0人、米国11.0人、イタリア7.0人、フランス・オーストラリア各6.8人、中国・ドイツ各5.1人、日本4.5人、英国3.6人となっていて日本は国際平均よりも下位に属しています。
2003年~2013年 交通事故死者数推移(棒グラフ:左目盛り)
65歳以上高齢者死亡率推移(折れ線グラフ:右目盛り)
年代別に見ると、数の多い団塊世代が65歳前後にいることの影響もあり、65歳以上の死亡者が前年よりも大幅に増えている以外は、概ね横ばいか下がっている傾向にあります。
そして、交通事故死亡者の中で、高齢者(65歳以上)の割合(折れ線グラフ)は年々増加傾向にあり、2013年は52.7%に達しています。
高齢者の死亡事故が増えているのは、高齢者数の急増を考えると自然なこととも言えますので、数に影響されない年齢層ごとの10万人当たり交通事故死亡者数を出してみました。
2003年~2013年 年齢層別人口10万人当たり死亡者率推移
グラフを見ると、前年(2012年)よりも増えている年齢層は、15歳以下、25~29歳、60~64歳、65~74歳と若年層と高齢層とに分かれています。
中でも65~74歳は0.3ポイント上昇していて年齢層の中では最大の増加です。これらの年代では増えているものの、その他の年代で下がっているので、トータルでは下がっています。
やはり高齢者(65歳以上)が交通事故で死亡する率は他の年代と比べると圧倒的に高いですね。
それでは、増えつつある高齢者の死亡事故とはどのような状況で起きているのでしょう。大きく、自動車乗車中、二輪(原付・自動二輪)乗車中、自転車乗車中、歩行中、その他で分けてあります。
2003年~2013年 65歳以上高齢者の死亡者状態推移
死亡状況は歩行中が圧倒的に多く、前年と比較すると、自動車乗車中、自転車乗車中、歩行中の3つで増加しています。
10年前の2003年と比較すると、二輪や自転車に乗車中の死亡は約6割まで減少しているものの、歩行中は約7割、自動車は約8割に留まっています。
高齢者死亡事故の特徴として、歩行中、または自動車乗車中というのがポイントとなってきているようです。
クルマの安全装備が充実し、シートベルトの着用も習慣化され、交通インフラも整ってきている中で、こうした流れはちょっと意外です。
高齢者の死亡事故では自転車が増えているというマスコミの報道が目立ち、そうした漠然とした印象を持っていましたが、実はそうではありません。
次はバイクやクルマを運転中に起きた死亡事故の違反原因が、16~24歳の若い人と、65歳以上の高齢者とでどう違うかを現したグラフが下記です。
原付以上運転中の若年層と高齢層の法令違反別死亡事故件数(2013年)
件数自体は若者と高齢者で人口総数が同じではないので、比較の対象となりませんが、若者と高齢者の割合を比較すると明らかに若者の死亡事故が多いのが「最高速度違反」で、高齢者が多いのは「運転操作不適」や「一時不停止」「安全不確認」などです。
高齢になると、運転操作が緩慢になったり、交差点などでの判断力や集中力が衰えたりすることが原因だろうというのがわかります。
最近よく起きるオートマ車でのブレーキとアクセルの踏み間違いが原因と思われる事故も、ニュースを見ていると、ざっくりですが8~9割は60歳以上の高齢者ドライバーが引き起こしています。これからの安全対策は、ますます高齢ドライバーが増えることもあり、これらの原因を減らしていくための施策が必要でしょう。
次は都道府県別に見た交通事故の発生件数と、死亡者数の上位と下位10都道府県です。
都道府県別交通事故数、死亡者数上位下位10
死亡者数だけで見ると、人口やクルマの保有台数が多いところ、死亡事故につながりやすい高速道路が走っているところが多くなるのはやむを得ませんが、その中でも愛知県、兵庫県、千葉県がワースト3です。
ただし愛知県で起きた事故の原因は愛知県民が引き起こしたということでは必ずしもいえないので県民性云々は決められません。
最後のグラフは65歳以上の高齢者が交通事故で死亡した人の数を、それぞれの都道府県の高齢者人口との対比で出したものです。高齢者千人当たりに換算した2013年の死亡者数です。
都道府県別65歳以上高齢者の人口千人当たり高齢者死亡事故上位下位10
高齢者千人あたりの死亡者数のワースト3は福井県、徳島県、茨城県の順となり、福井県では高齢者1000人中、約16人が交通事故で亡くなったという計算になります。これは東京の6倍以上、沖縄の3倍以上となっていて、異常に多いように思えます。
一方、大都市を抱える都道府県は人口千人あたりの死亡事故ワースト10位以内には入らず、逆に死亡者数が少ない都道府県に、東京、大阪、神奈川といった人口の多い大都市が入ります。
ちょっと意外な感じがしますが、地方は都会よりも人口密度が低い分、クルマやバイクの平均速度が高く、一度事故が起きるとそれが死亡事故に直結するためなのか、あるいは都市部のほうが大きな事故が起きても、すぐ近くに病院があったり、救命医療体制が進んでいて生き延びる可能性が高いためか、そのあたりは不明です。
最後に、新聞記事にもなっていましたが、自転車乗車中の死亡者のうち高齢者は63%を占め、その死亡した高齢者の中の70%以上が原付以上の免許を持っていないというデータがあります。
つまりそれは、自転車乗車中の事故で死亡する人で多いのは、「高齢者+運転免許なし」ということになります。
免許がないということは交通法規やマナーの知識が希薄だと考えられ、一時停止や無灯火、左側通行など車両(自転車も立派な車両)が当然遵守すべき法令の重大な違反の結果、大きな事故が起きていると考えられます。
【関連リンク】
751 自動車事故と車種や装備の関係
733 高齢者の地方移住はこれからも進むか
719 道の駅は次の段階へ進めるか
658 自転車のマナー違反が特にひどい
518 7月11日の高齢者の交通事故
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795
最近は個人情報の登録や有料版に移行するネットメディアが多く、無料でしかも登録なしに読める良質なコンテンツが少なくなってきたのは残念なことです。
ビジネスでやっている側からすれば「無料で良質な記事をなんてふざけるな!」ってことでしょうが、有料にしたからといってその中身は混交玉石のはずで、自分にとって社会にとって有益なものばかりとは限りませんので悩ましいところです。
そうした愚痴はともかく、ほとんどの記事が無料で、しかも登録しなくても(今のところ)読めるPRESIDENT Onlineの記事二つから雑感を。
「安心して老後をおくるには貯金が●千万円が必要だ!」という趣旨の記事をよく見かけますが、現在56歳の私には、4年後にやってくる定年の際に、わずかばかりの退職慰労金を合わせても、その必要額とされる1/10があるかどうかも怪しい限りです。
そんな中、『老後の備えは300万の定期預金で十分」のワケ』という記事というかコラムを発見。
多少釣りのようなタイトルだけど「おぉ!年金だけで慎ましく楽しく暮らしていける方法があったのか!」と思いきや、そうではなくて「働き続けることを前提にすれば、多額の老後資金は必要ありません」だと。ガッカリです。働きたくても高齢になると、まともな仕事がなかったり、健康を害して働けないということもあるでしょうにね。
こうした釣り的な内容の話しは得てして「家族含めみんなが健康で、親の介護の必要もなく、自由な生活がおくれる人の話し」ということが前提での話しが多いです。それが今の一般的な高齢者の姿なんでしょうかね。
その中で私が特に注目したのは『老後の資金は、とりあえずは300万円程度で十分。もちろん貯金はあればあるほどいい。しかしそれは「いざというときの備え」。間違っても「お金に働いてもらう」といった考え方はやめましょう。』と書いてあります。
なるほど、「貧乏人は死ぬまで身体が動くあいだは働き続けよ!」と。そして「但し緊急事態に備えて300万円ほどは残しておけ」ということか。さらに気に入ったのは「金持ち父さん貧乏父さん」などに書かれているように「お金に働いてもらう」つまり不動産などへの投資は今の日本では危ないからやめておけと。なんとなくわかります。
ちょうどダイヤモンドオンラインの記事でも『荻原博子直伝! 消費増税に負けない生活防衛術(中) 「まだデフレなのに、なぜ投資に手を出すのか?」』があり、そこに「(マンション投資について)自分で実際にやってみて、「儲かる理論がない」ということがわかったので、人には絶対に勧めない。むしろ、やめなさいとアドバイスしています。」と書かれていました。
ま、いずれにしても投資ができるまとまった資金はあいにく持ち合わせがないので無縁ですが、それよりも「とりあえずの300万円」ですら持ち合わせがないのが自分でも笑えてきます。
総務省調査によると65歳以上世帯の平均貯蓄額は2200万円以上あるということですが、我々今50代の人達も、あと数年でやってくる定年後には、それ相応の預金があるのでしょうか?自分や同世代の友人に当てはめてみると、それがどうも腑に落ちません。
子供を作らず夫婦で正社員として働いてガッチリ貯め込んでいる人や、運良く働いている会社が上場し、その恩恵にあずかれたような人は十分その資格はもっているでしょうけど。
私の場合、20数年前に購入した自宅のローンと、子供3人(二人は高校から私学、ひとりは公立校)の学費等の支払いで、まとまった貯金はほとんどない状態。この十年間は貯金残高の総額は6桁(●十万円)という、まるで綱渡り状態の日々をおくっています。
ようやく子供のうち上の二人が社会に出て、お金はそれほどかからなくなりましたが、まだ住宅ローンが6年ほど残っていて、定年時に多少の退職金が出たとしても、それと貯金を合わせて残債を消して終わりってところです。貯金はまったく残りそうもありません。
結局、複数の子供の学費や、重い住宅ローンを抱えた人は、少なくとも年金がフルにもらえる65歳までは、例え健康を害していてもなにかしら働かないといけないのでしょうね。
もうひとつの記事は、「一生賃貸で暮らすにはどのくらい蓄えが必要か」です。
私の場合は先に書いたように多額のローンを抱えて自宅は購入しましたが、もし買わずに賃貸住宅で暮らしていたとしたら、収入が途絶えてしまう定年頃までに、貯金はいくら必要だったのだろうかと考えました。
つまり今の家を売っぱらって現金化したとすれば手元にいくらあればその後安心して賃貸に住み続けられるかを知りたかったわけです。
そのシュミレーションは、60~90歳(女性の平均寿命は86.4歳)の30年間にかかる賃貸住居費用の大雑把な計算です。
家賃は月額平均10万円(子供が出ていって老夫婦2名)として3600万円、2年に一回の更新料が15回で150万円、10年に一度の引っ越し費用が3回で敷金・礼金・手数料など120万円で総額3870万円になるということです。
もし都市部郊外地域でクルマを持っていて駐車場を借りているとすると、1ヶ月1.5万円とするとプラス540万円です。
賃貸住宅の場合、利用者のニーズやライフスタイルにあった物件(例えば定年で通勤の必要がなければ家賃が安い地域へ移るとか、子供部屋が不要になれば小さな部屋でよくなるとか)をその都度選べるという大きな利点があります。
なのでもし物価が上がって家賃が高騰しても安いところへ引っ越せば負担が増えると言うことはなくなります。それが持ち家派と比べると大きな優位点でしょう。
この住宅関連費用(駐車場代込み)の総額を30年で割ると年間147万円、月間12万2500円ということになります。
均してみると家賃10万円以外にプラス毎月22,500円の負担が発生するということですね。
年金生活に入り他に収入がないと、年金だけでは毎月12万2500円の負担をするのはとうてい無理でしょうから、実質的には貯金を取り崩しながら支払うことになります。
すでに夫婦とも働いていないとすると、この家賃は大家族でない場合、貯金と年金から夫婦二人ともが死ぬまで支払続けることになります。印象的には結構重い気がします。
配偶者が亡くなり、単身の場合ならもっと安いマンションかアパートに移ることができますが、同時にもらえる年金も減るでしょうから負担感は余計に感じるでしょう。
都市部ならクルマは不要な場合も多いでしょうが、病院や店舗、公共機関へのアクセスが悪いと買い物や通院のためクルマが必要な人もいるでしょう。
自宅を持っていて60歳の時点でローンが終わっていれば、年間6~8万円の固定資産税、小規模な修繕費が平均して年間12万円平均発生すると仮定すれば年間総額18~20万円、月に均すと1.5万円~1.7万円ってところです。これなら年金の中から支払うこともできそうです。賃貸との差は毎月8~9万円です。
ただ持ち家の場合、問題は60歳時点では自宅購入後2~30年が経っているケースが多いので、その後30年間使おうとすると、大規模な修繕をするか建て直しをする必要があるということ。
子供が親孝行で、親のためにその費用を負担してくれならなにも問題はありませんが、決して世の中そう甘くありません。
その費用は、30坪程度の一戸建てで、大規模修繕(屋根・外壁修理と塗装、キッチンや浴槽、トイレなど水回り交換、床の張り替え、階段や玄関のバリアフリー化等)で約1千万円、建て直しだと2千万円は必要でしょうから、それを30年で割ると、修繕の場合で年間で33万円、建て替えの場合年間で67万円、月あたりに換算すると修繕で3万円、建て替えで5~6万円が実質的に上乗せされる計算になります。
そしてそれをおこなおうとすると、60歳以上の場合、長期のローンは組めませんので、虎の子の貯蓄をくずすか、それがなければ子供にローンを組んでもらって、月々子供に利子を含めて返済するって形になるでしょう。
それでも修繕の場合の住宅関連費用月額(1.5万+3万円=4.5万円)だと、賃貸派が月々負担する住宅費(12.25万円)の半分以下の負担で済みますから、「やっぱり若いときに無理して買っておいて正解!」と自分を納得させているのですが、さて実際のところはどうなのでしょう。
それに私の場合はずっとマイカーを持っているので、駐車場付きの一戸建ては、マンションや賃貸アパートと違いその費用負担がなくなるだけも大きなメリットを感じています。
あとこの記事の最後に「シニアが借りる賃貸の場合、お金以外の問題として、保証人を確保できるかどうかという問題が大きなネックになります。」「シニアでもOKな物件を見つけて保証人も確保することは非常に切実な問題」と書かれています。
つまり賃貸の場合、ここに住みたくてもお金だけでは済まないケースもあるということで、特に少子化の今は身寄りのない老夫婦や独居老人となると、孤独死や認知症による事故などを怖れ、大家が貸したがらない実態があるようです。
そうなると今後ますます競争率が高まりそうな公的住宅しか選択がないという可能性があります。
【関連リンク】
769 相続税の税率を上げると言うこと
753 ユニットバスへのリフォーム道険し
740 高齢者の犯罪が増加
733 高齢者の地方移住はこれからも進むか
689 自分の終焉をどう演出するか
687 旺盛な高齢者の労働意欲は善か悪か
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内閣府が毎年出している通称「高齢社会白書」正確には「高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告」平成25年度版(2013年中に発表)というものがあります。
暇がある人はここのサイトからダウンロードして(PDFでおよそ30ファイルあります)読んでいただければいいのですが、ざっくりとそれの概略を書いておきます。将来については推定ですが、30年後50年後に見たときになにが当たっていてなにが外れていたということがわかっていいですね。自分はその時にはもう生きてはいないと思いますが。
◆総人口と高齢者人口
平成24(2012)年10月1日現在、総人口は1億2,752万人、そのうち65歳以上の高齢者人口は、過去最高の3,079万人(前年2,975 万人)となり、総人口に占める割合(高齢化率)も24.1%(前年23.3%)となっています。
※最新のデータ2013年9月16日現在では、人口1億2,726万人(前年比-26万人)、65才以上高齢者人口3,186万人(同+107万人)、高齢化率25.0%(同+0.9%)
65歳以上の高齢者人口を男女別にみると、男性は1,318万人、女性は1,762万人で、性比(女性人口100人に対する男性人口)は74.8で、男性対女性の比は約3対4となっています。
高齢者人口のうち、「65~74歳人口(前期高齢者)」は1,560万人(男性738万人、女性823万人)で総人口に占める割合は12.2%、「75歳以上人口(後期高齢者)」は1,519万人(男性580万人、女性939万人)で、総人口に占める割合は11.9%。
1947~1949年に生まれたいわゆる「団塊の世代」が65歳になり始め、65歳以上の高齢者人口は1950年には総人口の5%に満たなかったものの、1970年に7%を超え(国連の報告書において「高齢化社会」と定義された水準)、さらに、1994年にはその倍化水準の14%を超え「高齢社会」と称されました。そしてさらに高齢化率は上昇を続け、現在24.1%に達し「超高齢化社会」と呼ばれています。※2013年9月16日現在高齢化率は25.0%
今後の推計では、12年後の2026年には総人口1億2000万人を下回り、34年後の2048年には1億人を割って9913万人となります。
総人口が減少し続ける中で、団塊世代のほとんどが65才以上となる来年2015年には65才以上の高齢者は3,395万人となり、団塊世代が後期高齢者に入る75才を迎える11年後の2025年には3,657万人に達します。さらに高齢者数は増加し、28年後の2042年に3,878万人のピークを迎えます。これは団塊世代の次に大きな塊、団塊ジュニア世代の多くが65才を超えることによります。
◆高齢化率と対現役世代人口
高齢化率は2013年に25%だったのが、21年後の2035年に33.4%、46年後の2060年には39.9%に達し、国民の2.5人に1人が65才以上の高齢者という社会を迎えることになる。
今から64年前の1950年(昭和25年)には1人の高齢人口に対して12.1人の15~64歳人口(生産年齢人口)だったのに対して、2012年は高齢者1人に対して現役世代2.6人になっています。
今後、高齢化率は上昇を続け、現役世代の割合は低下し、46年後の2060年には、1人の高齢者に対して1.3人の現役世代という比率になります。
高齢化率を都道府県別でみると、2012年現在の高齢化率は、最も高い秋田県で30.7%、最も低い沖縄県で17.7%となっています。26年後の2040年には、最も高い秋田県では43.8%となり、最も低い沖縄県でも、30.3%に達すると見込まれています。
東北など地方の高齢化が深刻と言われ、16年後の2040年の予測では、高齢化率40%を超えているのは、秋田、青森、高知、北海道、徳島の道県ですが、2012年から2040年までの高齢化率の伸びでは神奈川や千葉も上位に入り、都市部においても高齢化が進んできます。
先進諸国の高齢化率と比較をすると、日本は1980年代までは下位、1990年代には中位だったのが、2005年には最も高い水準となり、それ以降、世界のどの国もこれまで経験したことのない高齢社会を迎えています。
◆高齢者世帯と暮らし
65歳以上の高齢者がいる世帯は増え続け、2011年の世帯数は1,942万世帯あり、全世帯(4,668万世帯)の41.6%を占めています。
一人暮らしの高齢者が高齢者人口に占める割合は、1980年には男性4.3%、女性11.2%だったのが、2010年には男性11.1%、女性20.3%とこの30年の間に倍増し、さらに今後も増えていく予想です。
60歳以上の高齢者の暮らし向きについてみると、『心配ない』(「まったく心配ない」と「それほど心配ない」の計)と感じている人の割合は全体で71.0%あり、年齢階級別にみると、「80歳以上」は8割と高い割合となっています。この世代においては、「老後の不安」というものはあまりなさそうです。
高齢者世帯の平均年間所得は307.2万円で、全世帯平均(538.0万円)の半分強です。しかし世帯人員一人当たりでは、高齢者世帯の平均世帯人員が少ないことから、197.4万円となり、全世帯平均(200.4万円)との間に大きな差はみられません。
公的年金・恩給を受給している高齢者世帯の約7割において、公的年金・恩給の総所得に占める割合は80%以上となっています。
世帯主が65歳以上の世帯の平均貯蓄額は2,257万円で、全世帯平均1,664 万円の約1.4倍となっています。このあたり、貯蓄額はすべてかき集めても数十万円の56才の私にとって、まるで信じ難いというか、愕然とするばかりです。
宵越しの金は持たねぇ!の心意気はどうした!ってひがんでしまいます。さらに私の場合13年前に転職をしていますので、4年後に迎える定年時の退職金はほとんどあてにできません。
2011年では65歳以上人口に占める65歳以上の生活保護受給者の割合は2.63%であり、全人口に占める生活保護受給者の割合(1.58%)より高くなっています。正規・非正規労働や若者の収入格差と同様、平均で2000万円以上の貯蓄がある高齢者世帯がある一方で、ここでも格差が広がっているように考えられます。
◆高齢者の健康
日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、2010年時点で男性が70.42年、女性が73.62年です。平均してこの年齢までは自分で日常生活をおくることが可能と言うことです。
平均寿命が男性80歳、女性86歳ですから、日常生活に支障が出るようになってから男性で10年、女性で13年も生きるわけで、そう思うと健康寿命が少し短いような気もします。団塊世代が一斉に70代に突入する5年後には医療・介護業界は大変なことになりそうです。
将来予測では、2020年には男女とも健康寿命は、生活習慣病の改善や医療技術などの進歩により、約1年間延びるとされています。それでも寿命までの10数年間は症状の軽重の差はあれど介護の必要があり、大きな社会問題になりそうです。
高齢者の死因となった疾病をみると、死亡率(高齢者人口10万人当たりの死亡数)は、2011年において、「悪性新生物(がん)」が970.3と最も高く、次いで「心疾患」589.2、「肺炎」406.3の順となっていて、これら3つの疾病で高齢者の死因の半分を占めています。
65歳以上の要介護者等認定者数は2010年度末で490.7万人(高齢者に占める割合16.64%)で、2001年度末から203万人増加しています。75歳以上で要介護認定を受けた人は75歳以上の被保険者のうち22.1%を占めています。
高齢者に占める要介護者の割合を将来の高齢者人口に当てはめてみると、要介護者数は2015年には565万人(2010年と比べ1.15倍)、2025年に609万人(同1.24倍)、2042年には645万人(同1.31倍)となります。さらに団塊世代が健康寿命を超え始める2020年以降は、上記の推定値よりももっと急激に要介護者が増えると考えておかなければならないでしょう。
◆高齢者と雇用
全産業の雇用者数の推移をみると、2012年時点で全労働力人口6,555万人のうち、60~64歳の雇用者は472 万人(7.2%)、65歳以上の雇用者は340万人となっています。
定年到達者の状況をみると、2012年6月1日時点において、過去1年間の定年到達者のうち、継続雇用された人の割合は73.6%、継続雇用を希望しなかった人24.8%、継続雇用の基準を満たさずに離職した人1.6%となっています。
高齢者雇用安定法が改正され、希望者全員が(段階的に)65才まで雇用を義務付けた法律が施行されたのが2013年4月ですので、今後継続雇用される割合は高まるのでしょう。
しかしいつまでも働きたいと思う人がいる一方で、早く引退したいと考える人もいるはずで、年金支給の問題とも関係しますが、その割合が今後どう変わっていくのか興味があるところです。
「早く引退したいという人」=「お金持ちの遊び人」というわけではなく、家人の介護や、自身の健康障害などで、毎日の通勤や勤務に耐えられない人も多くいます。
◆その他
65歳以上の高齢者の交通事故死者数は、2012年は2,264人で前年より減少していますが、交通事故死者数全体に占める割合は51.3%と半数を超えています。
高齢者が被害となる事故が多いのと同時に、今後高齢者ドライバー、ライダーの数が増えることによって、加害者となるケースも増えそうです。それを減らすためには、衝突防止ブレーキ装置や運転補助装置などの普及が急がれます。
地方での顕著な住人の高齢化を象徴することとして、東日本大震災において、岩手県、宮城県、福島県の3県で収容された死亡者の検視等を終えて年齢が判明している15,681人のうち、60歳以上の高齢者が10,360人と死亡者全体の66.1%を占めていました。
交通事故や災害においては、身体が不自由で人の助けがないとひとりで逃げることができなかったり、動作や視力の衰えから素早い判断や行動ができなかったり、反応が鈍く危険を避けることができないという高齢者独特の被害が目立ちます。
次に2011年の65歳以上の高齢者の刑法犯の検挙人員は、2001年と比較すると、この10年間で検挙人員では約2.4倍、犯罪者率では約2倍に高まっています。ちなみに65歳以上の高齢数は、その10年間で約1.25倍になっていますが、検挙人数、犯罪者率はその伸びを遙かにしのぐ高い伸びとなっています。
65才以上の高齢者のひとり暮らし率は全体で15.7%ですが、受刑歴ありの高齢者だけをとってみると、ひとり暮らしの率は77.9%に跳ね上がり、ひとり暮らしと犯罪を犯す率とは無関係ではないと言えます。
逆にみると、今後ひとり暮らしの高齢者が増えていくということは、それにともない犯罪発生も増えていく可能性がありその対策が急がれます。
犯罪の被害者としてみた場合、一般刑法犯の割合は、他の年代とあまり変わりはないものの、重犯罪の被害者として65才以上高齢者の数は増加傾向にあり、2009年では殺人は全体の21.9%、傷害致死も28.9%と各年代と比較しても高くなっています。
激しく抵抗されない高齢者に対しての強盗や、ひったくりなど通り魔的犯行が増えそうです。また高齢者が各年代層の中では一番お金を持っているという背景があり狙われやすいためかもしれません。
孤独死とか孤立死と言われている問題ですが、東京23 区内における一人暮らしで65歳以上の人が自宅で亡くなった数は、2012年に2,729人でした。(
独)都市再生機構が運営管理する賃貸住宅約76 万戸において、単身の居住者で死亡から1週間を超えて発見された孤独死の件数(自殺や他殺などを除く)は、2011年度に200件あり、そのうち65 歳以上に限ると131件(66%)となります。これは2008年度と比べ全体で約3割増、65歳以上では約5割の増加となっています。
ここまでざっくりと高齢社会白書の中身を見てきました。様々な考え方や、いやそうはならんだろう?という楽観的な考えもあるでしょうけど、過去の国や政府が発表した推計数値を見ると、少子化の勢いや、経済成長、年金の不足、医療費負担の伸びなど多くは推計や予想を裏切る、悪いほうへふれる傾向があったことを考えると、これらの推計値よりもっと悪化することも予想されます。
悲観論ではないですが、やがて国民の3人に1人が65歳以上の高齢者となり、さらにその高齢者の4人に1人が認知症を患っているという社会はもうすぐ現実となります。
日本はこの現実と向き合って、世界に先駆けた超高齢化社会に則した世界最高の医療、福祉国家を目指し、遅れて超高齢化社会を迎える他の先進国にその仕組みやシステムを輸出できる国作りをすぐにやっていくべきではないでしょうか。
国の英知を結集し、医療、バイオ、薬品、リハビリ、介護の各技術に予算を投資し、医療や介護の現場を担うロボット(アンドロイド)開発、高齢者が安全快適に暮らせる住宅やインフラ整備、元気な高齢者が余生を楽しめるレジャーやスポーツ振興、世界中のお金持ちが、豊かな自然と世界一の医療と介護を求めて押し寄せてくる環境作りなど、目指すべきはそこだと思うのですがいかがでしょう。もちろん自国民には安価で提供してもらわなければなりませんが。
【関連リンク】
769 相続税の税率を上げると言うこと
763 認知症患者の増大で国は衰退する?
740 高齢者の犯罪が増加
733 高齢者の地方移住はこれからも進むか
706 高齢化社会の行方
689 自分の終焉をどう演出するか
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