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映画「風と共に去りぬ 」(原題:Gone with the Wind)を見ました。以前NHK BSで放送されたのを録画しておいたのですが、なんと言っても1本で222分もある超大作、普通の映画の2.5本分もあるだけに、なかなか見る機会がありませんでした。


画像:PIA Corporation

アメリカでの公開は第二次世界大戦が始まった1939年という世界中がきな臭くなってきた頃で、まだ日本との太平洋戦争は始まっていません。この映画を公開時に海外で見た日本人エリート軍人が「こんな映画を作る国と戦争しても勝てない」と衝撃を受けたとか(wikipedia)。

日本で最初に公開されたのは終戦から7年も経った1952年ですから、当時映画館へ駆けつけた20歳前後の若者は、現在は80代半ばになっています。その頃に最初に見たときの感想を聞いてみたいものです。

その後何度かリバイバル上映がされていて、特に私がまだ小中学生だった1970年代にはおそらく団塊世代向けに好評で、長い期間上映していたのを子供心に覚えています。

この映画については有名すぎて解説の余地も残されていないのでしょうけど、せっかく見て感動と記憶が残っているうちに、その備忘録的感想を書いておきます。

原作はマーガレット・ミッチェル、監督は「オズの魔法使 」(1939年)などを監督したヴィクター・フレミングで、この映画でアカデミー賞の作品賞・監督賞・主演女優賞など9部門を獲得しました。

主演でヒロインのスカーレット・オハラに抜擢されたのはこの映画までは無名だったヴィヴィアン・リー、その相手役のレット・バトラーにはすでに確固たる名声を築いていたクラーク・ゲーブルで、夕日に染まる丘でスカーレットを抱き留めているバトラーのシーンのポスターがあまりにも有名です。

映画の内容は、1960年代の裕福で華々しかったアメリカ南部の白人上流階級の生活が、戦争(アメリカ南北戦争)によってすべて失ってしまい、二度とあのような華麗で美しい日々は戻ってこないという意味を「風と共に去っていった」と表したものです。

そう言えば、日本で「戦争」といえばほぼ「太平洋戦争」を指しますが、アメリカで「戦争」というとこの「南北戦争」を指すと言われています。それだけアメリカ国民にとっては意味のある大きな出来事だったのでしょう。

ちなみに南北戦争ではエイブラハム・リンカーンやユリシーズ・グラントが率いるアメリカ北軍に、この映画の舞台となる南部(南軍)はこてんぱんにやっつけられ、美しかった南部の主要都市アトランタも火の海と化します。

この負けた南部の過去の栄光と、そこから必死にはい上がっていこうとする美しきヒロインという構図が、太平洋戦争でアメリカにこてんぱんにやられ、そこから立ち直ろうともがいていた敗戦直後の日本の姿がダブって、当時の日本人にはこの映画が琴線に触れて特に大ヒットしたようです。

ヒロインのスカーレット・オハラは、日本人の感覚で言えば大金持ちのわがまま娘によくいる自分勝手ですぐにヒステリーを起こすあばずれで、友人の夫をずっと狙っている嫌なヤツです。しかしこの映画の中では可愛くて自立心が旺盛で憎めないから不思議です。

結局ヒロインは意中の人を射止められず、ヤケクソ気味で手近にいた男と結婚をしますが、その相手は結婚後すぐに南北戦争中に病気で死んでしまいます。

戦争に敗れ南部で手広く農場をやっていたヒロイン一家はなにもかも失ってしまい、お金欲しさで好きでもない金持ちの妹の恋人を奪って二度目の結婚、その2番目の夫も銃弾に倒れてまもなく死亡、そしてようやくヒロインに意中の人がいるのを知りながらもひたすら求愛をしてくれていたレット・バトラーと結ばれます。

二人の間には娘が産まれ、ハッピーエンドで終わるかと思いきや、ここでまた悲劇が起こります。その悲劇が引き金となって、もう我慢の限界とばかり夫のレット・バトラーが荷物をまとめて家を出て行ってしまいます。

そこで初めてヒロインは意中の人ではなくレット・バトラーを本当に愛していたことにようやく気がつき、生まれ育ったタラの農園に戻り、そこをずっと守っていくことで、きっとレットは戻ってきてくれると信じるところで長いドラマが終わります。

時間にすると3時間40分、確かに長いですが、次々と場面が変わり、また動きも激しいので、集中してみているとその長さはあまり感じられません。また古い映画によくあるスタジオのセットの中だけで終始するのではなく、広大な牧場や農園、巨大な街のセットを使った展開で客を飽きさせません。

私が過去に見た1本の映画の中で一番長かった「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 」は香港の映画館で観ましたが、途中でトイレ休憩時間を挟む上映時間が205分(3時間35分)あり、この映画より5分だけ短いものでした。

さてこの映画の主題は、強くて美しい南部女の愛と人生というべきものでしょうか、現代においても男性を蹴散らしてでも強くなりたい女性の共感は得られそうなところが多々あるように思えます。

親友の彼氏や夫に横恋慕したり、金持ちの妹の彼氏を奪い取ったり、ダメな男を見下して自分が采配を奮いビジネスをを成功させたりと、現代のドラマに焼き直しても十分通用しそうです。

そんな自信過剰でわがままな女性でも、ひたすらに思ってくれる頼れるイケメン男子がいつもそばにいて、お金のために結婚して、たいして好きでもなかった夫は次々と亡くなり、三度目でようやく本懐を遂げ結ばれるという話しなど、現代女性にとっては願ったりかなったりの展開かも。さすがに女性作家の作品だけあります。

女性が描く「波瀾万丈だけど結果オーライに近い人生」っていうのが見終わった後の感想です。

アメリカの近代史の勉強にもなりますし、日本がまだ白黒の無声チャンバラ映画で弁士が活躍していた時代に、アメリカではこのようなフルカラーの大スペクタル感動巨編を作っていたということを考えると、どう考えても宣戦布告したのは無謀な過ちだったと言わざるを得ません。

ゴールデンウィークも近いし、このような長時間じっくり映画に浸れるなんてなかなかないでしょうから、もしまだ見ていない人がいればレンタル屋さんへGo!。買ってもAmazonで送料込みで千円もしません

最後に余談ですが、この小説に登場する架空のイケメン男子レット・バトラーは、後に円城塔との共著となる伊藤計劃著「屍者の帝国 」に登場していて、スカーレットと別れたあと、アメリカの民間軍事会社に所属し、英国人主人公と絡むなかなか重要な役割を果たしています。そのようにして、架空の登場人物が、後世に書かれた小説などに取り上げられたりするのって、それを知っているとなおさら楽しいものです。


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885
曜日の関係からこの年末年始は9連休という長い休みになりました。子供達も大きくなったので、もはや家族揃って温泉旅行へ出掛けたり、スキーへ連れて行ったりという親としての役目からは解放され、昨年と同様のんびりと家で過ごしました。

お正月休みにはぬくぬくしたふとんに入ってのんびりと読書をするのが最高の贅沢ですが、同時にDVDを借りてきたり録画しておいた映画を見るのもまた楽しからずやです。

昨年のお正月には「永遠の0」を見に行きました。もちろん今年も映画館へ足を運んでとも考えましたが、ちょうどいまかかっている映画でぜひ観たいって思えるものがないので、ちょっと前の映画をDVDレンタルしての鑑賞です。


神様のカルテ2
現役医師、夏川草介氏の小説「神様のカルテ2」を映画化したもので昨年2014年3月に公開されました。前作「神様のカルテ」も小説を読んでから映画を見ましたが、原作に沿っていてたいへんいい出来でした。

監督は深川栄洋、主演は櫻井翔、宮崎あおいという前作同様の布陣です。舞台はもちろん松本。そして主人公栗原一止の医学生時代同期生だったエリート医師進藤辰也役に藤原竜也です。

個人的な意見を言えば、アイドル歌手が本業の櫻井翔はともかく、一応俳優専業の藤原竜也の演技と役がどうもしっくりいっていない感じがします。小説の進藤辰也のイメージと違いすぎ、藤原竜也にエリート然としたところがありません。私のイメージで言えば玉山鉄二か玉木宏がやるべき役だったような気がします。

映画の中で常念岳の想い出話しが何度か登場しますが、常念岳ってどこだっけ?恥ずかしながら知りませんでした。調べると「飛騨山脈(北アルプス)南部の常念山脈にある標高2,857 mの山」とのことで、長野県松本市・安曇野市にまたがる山で日本百名山に指定され有名らしいですね。

小説で読んでいたので、場面が先々わかってしまうだけに、余命少ない先輩医師と妻を病院のルールを破って屋上のヘリポートへ連れ出すシーンでは不覚にもその後の展開が先に思い浮かんで思わず涙ぐんでしまいました。いや~映画っていいもんですねぇ~


選挙
2007年公開のドキュメンタリー映画で想田和弘監督作品です。2005年9月に行われた川崎市議会選挙というローカルな選挙がテーマですが、私が以前に長く住んでいた地域ということもあり、懐かしさもあってこれは見ないといけないなと前から思っていました。

映画は政治は全くの素人で公募で決まった40歳の山内和彦氏が、川崎市議の補欠選挙に落下傘候補として自民党から出馬し、他の民主党候補や神奈川ネットワーク運動や共産党候補と激戦を繰り広げる始終が描かれます。

ドキュメンタリーですからすべて実名、やらせなしで、選挙に出るというのはこういうものなんだとあらためて感心させられます。

山内候補と奥様のやりとりや、即席で作った後援会事務局、一癖もふた癖もありそうな自民党川崎支部の面々、さらに同日投票日の参議院選挙に神奈川から立候補していた川口順子、その応援にやってくる客寄せパンダの小泉首相(当時)、石原伸晃、橋本聖子など有名人。

市議会選挙の他党候補は、政治家としては実績のあるベテラン揃いで、山内氏はまったくの素人、ジバン(地盤:支持者組織)もカバン(鞄:選挙資金)もカンバン(看板:知名度)がなにもない中で、駅前で「自民党」「小泉純一郎」と自分の名前を連呼するドブ板選挙をおこないますが、党の重鎮達からは素人候補に遠慮なく厳しい叱責が飛びます。

誰でも新人というのはそういうものなのでしょうね。最大の自民党ですら知名度や実績がないと苦戦するわけですから、大政党に所属せず素人が選挙に出ても勝てる可能性はほとんどないっていうのが今の現状なのでしょう。

その4年後、東日本大震災直後の2011年4月におこなわれた同じ川崎市会議員選挙では自民党からの公認は得られず、「脱原発」を訴えて無所属で挑戦した時のドキュメンタリー映画「選挙2」も楽しみです。


トリック劇場版 ラストステージ
2014年公開の映画で、トリックシリーズの完結編と言われています。監督は劇場版前3作と同じく堤幸彦で、トリック初の海外ロケ映画です。

偉大なりマンネリと言えばその通りで、それがこのシリーズの魅力でもあるのでしょうけど、さすがにもう飽きてきたって感じです。以前のように何が出てくるか?っていうワクワク感がありません。

トリックがテレビの深夜枠でひっそり始まったのが2000年。当時は仲間由紀恵はまだ主役級の女優ではなく、ちょい役や声優などで活躍していましたが、このトリックで火が付きその後一気にブレークしました。なので仲間由紀恵にとっては女優の原点とも言える作品です。

当時の仲間由紀恵にはハングリー精神があり、演技の上手下手ではなく、たかが深夜のテレビドラマでも、その役に対する必死さがよく感じられました。しかしその後は多くの映画で主役をこなし、テレビやCMで引っ張りダコの人気が出てからは、余裕というか貫禄というものが年齢相応に備わってしまい、それが貧乏でどん欲なトリックの主人公役には相応しくなくなってきたのかなと思います。

ま、いずれにしても、これがシリーズ最後と言うことで、いい潮時かも知れません。


夜叉
昨年亡くなった高倉健主演の1985年に公開された映画で、監督は降旗康男、共演者は妻にいしだあゆみ、主人公と同様大阪みなみから流れてきた魔性の女螢子役に田中裕子、その他には漁師仲間の田中邦衛、螢子のヒモでチンピラ役のビートたけし、大滝秀治など、いつもの降旗組メンバーが揃っています。

他の作品との関係で言うと、「南極物語 」と「居酒屋兆治」が1983年の公開で、この作品がその後に撮影・公開されました。高倉健出演の映画はこのあと3年ほど間が開き、1988年に「海へ-See You-」、1989年に「ブラック・レイン」へと続きます。

1981年に高倉健と共演した「駅 STATION」(監督降旗康男)での評判がよかったのか、この映画でも高倉健の妻役で重要な役柄をいしだあゆみが演じています。

ポキリと折れそうなほど細く、スマートで洋風な顔立ちのいしだあゆみが、働き者の漁師の妻を演じるにはちょっと無理があるように思いますが、なんとかこなしていました。でもやっぱりいしだあゆみは横浜のようなお洒落な大都会向きの女優さんで、寒村の漁港には向いていない感じです。

映画の舞台というかロケ地は福井県三方郡美浜町近くの漁村で、厳しい冬の感じがよく出ていました。近年は周囲にできた原発のおかげで様々な施設や補償金などで、綺麗な道路が整備され、大きな公共施設なども次々と建ち潤ってきた地域なのでしょうけど、原発が停まってしまっている昨今は景気はどうなっているのかわかりません。

この作品を含め、高倉健主演のまだ観ていない作品がいくつかあるので、また機会を見つけて鑑賞したいと思っています。


ドクトル・ジバゴ
1965年のアメリカとイタリアによる合作映画で、監督は「戦場にかける橋」(1957年)や「アラビアのロレンス」(1962年)の監督を務めたデイヴィッド・リーン、主演は「アラビアのロレンス」で重要な脇役として出演していたオマー・シャリフです。

映画は米アカデミー賞の脚色、撮影賞、作曲賞、美術監督・装置賞、衣裳デザイン賞の5部門を受賞した名作ですが、映画以上に挿入曲「ラーラのテーマ」が強く印象に残っていて、その曲を聴くと「どこかで聞いたことがある」と思う人が多いのではないでしょうか。

作品はロシアの作家、ボリス・パステルナークによる同名の小説で、1914年に始まった第1次世界大戦での敗北から始まったロシア帝国内部への不満、1917年にはロシア革命が起きて皇帝が殺害され、共産主義がジワジワと台頭してくる激動のロシアを描いたものです。

子供の頃に両親を亡くし、知り合いに育てられた主人公のジバコは、医者として仕事をしながらも趣味で書いていた詩が「個人的すぎる」ことで反革命的と決めつけられ、家を追われ家族と共にシベリアのウラル地方へ移住することになります。

そこで運命的出会いをするのが医者をやっているときに何度か会ったことがあるラーラという子供もいる人妻です。

男というもの、先の高倉健主演の「夜叉」と同様、幸せな家庭を持ちつつも、魔性の女と出会ってしまうとついふらふらとそっちへのめり込んでしまうという性(さが)は、時代も国も違うのに似たようなストーリーで笑ってしまいました。ストレートに言えば不倫をなんだかんだと理由を付けて美化しているわけなんですけどね。

とにかく長い映画で本編だけで200分ほどありますが、場面展開が速いのでちゃんと集中して見ていないと途中でわからなくなりますので注意が必要です。寝転がって見ていると途中何度か考え事をしたりして意識が外れ、もう一度巻き戻して見直す羽目になりました。

母親が亡くなりひとりぼっちになった少年時代のジバコが親の遺産として渡されるロシアの楽器バラライカが、その世代交代を表す小物としてうまく使われていたのがとても印象的でした。

架空の人物ドクトル・ジバコの生涯の話しと言うよりも、第一次大戦、そしてロシア革命と内戦、共産主義国家成立までの大スペクタル政治ドラマって見方もできるかなと思います。







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880
先月亡くなられた高倉健さんと言えば、団塊世代にとってはあこがれのヒーローで、自分たちの兄貴分として映画全盛時代の1960年代に颯爽と現れた英雄、つまり訳あってのヤクザ者だが、心意気はまっすぐで無口で格好いい男の代表というイメージでした。

団塊世代より10年遅れて生まれた私の年代では、高倉健は着流しのヤクザ者からすっかりイメチェンした「新幹線大爆破」(1975年)、「君よ憤怒の河を渉れ」(1976年)、「八甲田山」「幸福の黄色いハンカチ」(1977年)、「野性の証明」(1978年)、「動乱」(1980年)と言ったアクションヒーローや実直な旧日本陸軍軍人、クールなタフガイのイメージです。

私が最初に高倉健主演映画を街の映画館で観たのは大学生の頃で、1977年の「八甲田山」、そして1978年の「野生の証明」でしたが、考えたら小中学生で任侠ヤクザ映画ってまず見ませんものね。

1978年に公開された「野生の証明」にはちょっとした思い出があります。

大学生だった頃、バイト先の先輩に誘われて、この映画のエキストラ役に応募し、書類審査は通過して、実技テスト(運動能力テスト)と角川春樹社長(当時)との面談に臨みました。

募集していた役というのは、寒村で起きた大量殺人事件の秘密を握る健さん扮する元自衛官と、一緒に逃げる唯一生き残った住人役の薬師丸ひろ子(当時14歳)を亡き者とするために追い詰める自衛隊員の役で、アメリカでロケがおこなわれ、戦車やヘリを使った大規模なクライマックスシーンに登場します。

しかし恥ずかしながら一緒に行った先輩は見事合格し、私は落ちてしまいました。実技テストの中に私がもっとも苦手とする持久走があり、真夏の炎天下で気力を振り絞ったものの、中位に低迷したことが敗因でした。先輩は持久走で上位5人(50人ぐらい参加)に入っていました。もし受かっていたら健さんや薬師丸ひろ子と一緒に記念撮影ができたのに無念です。

閑話休題、私が観た映画の中で好きなものは、

新幹線大爆破(1975年)
八甲田山(1977年)
動乱(1980年)
海峡(1982年)
南極物語(1983年)
ブラック・レイン(1989年)
あ・うん(1989年)
あなたへ(2012年)




その中でもブラック・レインは主役ではなく脇役的な立場で、しかも当時末期の癌と闘病中だった松田優作の怪演に押され気味でしたが、はちゃめちゃなアメリカ人から見た変な日本と大阪の描写をピリッと引き締めていたのが健さんだったなぁと。

「新幹線大爆破」は当時の国鉄(現JR)がまだお役所でしたので、融通が利かず、「世界一安全な新幹線を転覆させるような映画に協力できるか!」ということで、国鉄の協力なしに撮影されました。もちろん実物大の模型も作られましたが、実際の走行シーンはともかく、実物の車内映像は隠し撮りをしたそうです。そんな映画に出ていた根暗な犯人役の健さんは信じられないぐらいに若いです。40年近く前ですから当たり前です。

二・二六事件がクライマックスの「動乱」でも、竜飛岬で遠くを眺める「海峡」でも、函館が舞台の「居酒屋兆治」でも、道央のローカル線駅長だった「鉄道員(ぽっぽや)」でも、雪中行軍演習を描いた「八甲田山」でも、もちろんタロとジロの「南極物語」でも、高倉健はものすごく寒い場所にいるというイメージが強くあり、それが特徴的だった気がします。

その「寒い場所=高倉健」のイメージは、もしかすると、デビュー時代から長く馴染んでいた「網走番外地」から連想させるものからなのか、どうかは定かではありません。

逆に同年代の俳優だった石原裕次郎は「太陽の季節」(1956年)、「嵐を呼ぶ男」(1957年)、「銀座の恋の物語」(1962年)、「太平洋ひとりぼっち」(1963年)など、暑いとか汗、あるいはスマートなイメージが強く、二人の出演作は対称をなしていました。

よく考えたら二人ともこれほど多くの映画作品に出演しながら、結局共演することはありませんでした。「陽の裕次郎、陰の健さん」、「夏の裕次郎、冬の健さん」、「ホットな裕ちゃん、クールな健さん」「動の裕次郎、静の健さん」と、二人が対照的な主役を演じれば面白そうな映画が作れたでしょうに残念ですね。当時の映画会社には力があり、自社が発掘して売り出した俳優を他社の作品には出さなかったという理由もあるのでしょう。健さんは東映で、裕次郎は日活です。

遺作となった映画は「あなたへ」(2012年、降旗康男監督、東宝)ですが、すでにテレビで何度も放映されているので見た方も多いと思います。

主人公の健さんは富山の刑務官として勤務していた時に、慰問によく来ていた女性と知り合って結婚していました。定年後も嘱託の教官として働いていましたが、長年連れ添った妻が病気で亡くなってしまいます。亡くなった後、健さんの元に妻からの感謝の手紙が届けられます。そしてその手紙には生まれ故郷の海に散骨をしてほしいと書かれていました。

それまで知らなかった妻の故郷へ行くため、キャンピングカーを自分で作り、それに乗って長崎平戸までを旅するいわゆるロードムービーです。途中で詐欺師の国語教師(北野武)や、熱烈な阪神タイガースファン(岡村隆史)、移動物産店員(草なぎ剛)などと知り合いながら、長崎にたどり着きます。

途中映画には各地の観光名所がいくつか出てきますが、その中でも特に光ったのが、兵庫県朝来市和田山町にある天空の城と呼ばれる竹田城。ストーリーとは関係ありませんが、竹田城跡を見学するシーンが長く挿入されていました。この映画をきっかけにこの城は全国的に有名となり、今では入場が規制されるほどの人気です。

またこの映画では老け役で名役者だった大滝秀治さんも出演していましたが、映画が完成した直後の2012年に亡くなりました。つまりこの作品は健さんとともに大滝秀治さん、二人の名優の遺作となってしまいました。

お正月には、健さんを偲び「網走番外地」や「ザ・ヤクザ」(1974年)でもDVDを借りてきてゆっくり見るとするかな。




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877
録画しておいた古い映画「浮草」を見ました。

 
この映画は1959年に制作され上映された小津安二郎監督の作品ですが、元々は同じ小津安二郎が戦前の1934年に監督した「浮草物語」のリメーク版で、多くの名作を作ってきた小津監督の晩年の作品となります。

小津監督はずっと長くモノクロ映画を撮ってきましたが、この作品はカラー作品(カラーになって3作目)で、ちょうどこの頃からモノクロからカラーへ切り替わっていった時代です。小津作品ではもっとも評判が高い1953年制作の「東京物語」も先日見ましたが、こちらはモノクロでした。

出演は中村鴈治郎、京マチ子、川口浩、若尾文子(当時26歳)、杉村春子、笠智衆などで、その中の多くの俳優さんはすでに鬼籍入りされています。

小津監督といえば「東京物語」など多くの作品に主演した原節子を抜擢したことが有名ですが、この映画ではあえて使わず、当時の大スター中村鴈治郎や京マチ子、円熟味あふれる杉村春子、それに小津作品には欠かせない笠智衆など、今では考えられない豪華演技派の俳優・女優達の競演です。

ストーリーは、旅芸人一家(劇団)が地方の町にやってきますが、その座長が昔馴染みとしていた飲み屋の女将との間にできた子供が立派に成長し、町の郵便局で働いています。当時は郵便局勤めといえば公務員でもあり、地方においてはもっとも信頼が置けるいい働き口とされていました。

公演中に座長がいつもこの女将の店に入り浸りしているのを若い妻が怪しみ、嫉妬が高じてその子供を誘惑するように劇団の若い子にお金を渡して頼みます。

すると誘惑するだけのはずが、二人は恋仲となってしまい、仕事も放り出して駆け落ちすることになってしまいます。それと同時に劇団の経営も落ち込み、とうとう一座は解散することになります。

座長と妻の関係は元に戻ったものの、郵便局勤めの男と踊り子だった女の仲は深まり、新たな旅立ちをすることとなり、大きななにかを失ってしまったという喪失感を感じるような終わり方です。

こうした旅回り芸人の大衆演劇は、今ではなかなか見られない特殊なものですが、この映画が作られた1950年代頃までは、レジャーが少ない地方の楽しみのひとつがこうした旅回り劇団の公演でした。演目は「忠臣蔵」「国定忠治」「清水次郎長」が鉄板です。

映画がモノクロからカラーへと変わり、こうした大衆演劇も映画や新しく普及し始めたテレビに取って代わられていく時代の象徴的な物語なのかも知れません。

個人的にはいい子ちゃん役の原節子と、どこにでもありそうな冷ややかな現代の核家族の絆を描いた「東京物語」よりも、廃れていく大衆演劇と、嫉妬や愛に目覚めた男と女を描いたこちらの「浮草」のほうが、楽しめました。

あと映画の場面で、団扇であおぐシーンが繰り返し登場します。男が外から帰ってきて汗を拭き拭きバタバタとあおぐこともあれば、杉村春子演じる女将が、久しぶりに戻ってきた座長にお酒を勧めながら静かにあおぐシーンまで、効果的に使われます。

現代の社会ではどこでもエアコンがあり、こうした団扇であおぐシーンは皆無になってきているので、なおさらそうした小道具的に使われるシーンが印象的に映ります。座長の若妻を演じるちょっと怖そうな現代的美人の京マチ子が、苛立ちを表現するためかタバコを何度もプカプカとふかすシーンもこの時代ならではで、今同じ事をやるといろんなところから苦情がいっぱい来そうです。

映画といえば、派手なアクションとCGを使った動きが激しく、正義と悪がハッキリしていて、見る人に考える暇を与えないものばかりとなってきましたが、「東京物語」もそうでしたが、普通の人の普通の生活が登場し、些細なことをきっかけに物事が少し動くという、見ながらあれこれ考えさせられる映画をジックリとみるのもいいなぁっていうのが感想です。


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ゴールデンウィークも近いので、私が過去に観た映画でお勧めのもの10本を書いておきます。人それぞれ価値観や人生観は違いますので、私がよかったと思ったからと言って誰もにいいとは限りませんが、似たような感性の持ち主であれば同意してもらえるのではないかと自信を持ってお勧めします。それにこれらの古いレンタルDVDなら1週間借りても1本100円(私がよく行くTSUTAYAの場合)ですから失敗してもいいじゃないですか!hahaha

今回紹介するほとんどの作品は有名な映画ばかりなので、何度もテレビで放送されていますし、ビデオやDVDを借りてもう見たよという人も多いのではないでしょうか。ただ、テレビでやっていたので、途中から見たとか、なにか用事をしながらで眺めていたというのと、最初から最後まで集中してしっかり見たというのでは受ける感動は全然違うものです。

映画館ではそれしか見るものがなく、意識をそれだけに集中できますが、テレビだと視聴中に電話やCMで中断されたりしてながら的にみてしまうことがよくあります。あとレンタルDVDや録画した映画の場合、夜に少し部屋を暗くして他の雑音を避けて集中して見れば映画館と同様の印象を味わうことが可能です。

また今回選んだのは人間ドラマが中心で、楽しみながら感動できるものです。アクションや、シリアス、ミステリー、ホラー、SF、コメディ等のジャンルに入る作品からは選んでいませんので、これらが私の映画ベスト10ではありません。またアメリカ映画が10作中9作を占めてしまいましたが特に他意はありません。

 ◆素晴らしき哉、人生!
 ◆3人のゴースト
 ◆ショーシャンクの空に
 ◆キャスト・アウェイ
 ◆最高の人生の見つけ方
 ◆プライベート・ライアン
 ◆生きてこそ
 ◆ニューシネマパラダイス
 ◆スティング
 ◆グラン・トリノ


素晴らしき哉、人生! (It's a Wonderful Life)
 
太平洋戦争終戦直後の1946年のちょっと古いアメリカ映画で、モノクロ映画です。監督は「或る夜の出来事」「スミス都へ行く」のフランク・キャプラ、主演は数多くの作品を残す名優ジェームズ・ステュアートです。この時代(太平洋戦争終結の翌年)の映画にしてはとてもよくできているのがただただ感心します。

そしてこの映画は、全米映画協会(AFI:American Film Institute)が、映画製作100年を記念して実施した「感動の映画ベスト100」で堂々の1位を獲得しています。つまり映画の歴史100年を代表する作品と言えますが、クリスマス映画だけあって、内容は家族愛と正義は勝つという世界共通の道徳と宗教観を、仕事の挫折や悪徳業者との戦い、すべてお見通しの(意外にも天使がオヤジの)天使などを通して描かれ、最後は大逆転のハッピーエンドとなる心温まる映画です。

二匹目のドジョウを狙ったのか知れませんが、クリスマス映画として翌年の1947年に製作された「三十四丁目の奇蹟」(1994年にもリメーク版あり)も同様に名作映画のひとつとして語り継がれています。


3人のゴースト(Scrooged)
1988年のアメリカ映画でチャールズ・ディケンズの小説「クリスマス・キャロル」を現代風にアレンジした作品です。監督は「スーパーマン」や「グーニーズ」「リーサル・ウェポン」などのリチャード・ドナー。主演は「ゴーストバスターズ」「ロスト・イン・トランスレーション」などに出演したビル・マーレイ。幽霊が出てくるのならこれはホラーのジャンルじゃないのか?と言われそうですが、怖い幽霊ではなく一種ひねくれ曲がった主人公を正そうとする神様仏様のような幽霊なので善としましょう。

上記の「素晴らしき哉、人生!」や「三十四丁目の奇跡」などと同じく、家族で楽しむアメリカ冬の定番のクリスマス映画ですが、見所が満載で、楽しく、面白く、そして最後にはホッと心が温められること確実です。日本では来客者が多くなる夏休み映画と正月映画に力を入れる傾向にありますが、アメリカではクリスマス映画にもっとも力が入っているというのはお国柄と言えるでしょう。


ショーシャンクの空に(The Shawshank Redemption)
私の中では好きな映画ベスト3の中に位置づけられる作品で、映画館で観たのは1回ですが、録画したテレビですでに3回は見ている映画です。

1994年のアメリカ映画で、監督は「グリーンマイル」などのフランク・ダラボン、主演は「トップ・ガン」や「ザ・プレイヤー」などに出演していたティム・ロビンスです。この映画の原作はスティーヴン・キング著の「刑務所のリタ・ヘイワース」です。

物語の前半部分は妻を殺したと無実の罪に問われて凶暴な囚人が多い刑務所に収監されるひ弱な銀行員の運命やいかに!というドキドキハラハラの連続で心が痛みますが、それを補っても余りあるどんでん返しが中盤以降に待っていますので、ジッと我慢して最後まで注意して見なければなりません。

この映画を見ると自分や会社の中では知っていて当たり前、できて当たり前と思っている業務知識や専門職能でも、例えば刑務所の中のようにまったく違う世界へいけば、その特技が思わぬ利用法があり、「芸は身を助く」ではないですが、普段から専門知識や技能を磨いておくのは生きていく上で重要なことだなぁと感心するばかりです。

ジェフリー・アーチャーが収監されたときには、著名な作家ということから比較的楽な図書委員をまかされたようですが、ホリエモンさんは刑務所の中で、果たして自分の知識や技能を発揮することができたのかしらん?と考えてしまいました。


キャスト・アウェイ(Cast Away)
2000年のアメリカ映画で、監督は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「フォレスト・ガンプ/一期一会」で有名なロバート・ゼメキス、主演はトム・ハンクスというゴールデンコンビの作品です。このコンビの作品では「フォレスト・ガンプ/一期一会」を一番に推す人が多いことは知っていますが、私は合成映像を多用したあの作品よりは、体当たりの演技とリアルさでこちらの作品のほうが好きです。

簡単に言えば過去にも数多く作られてきた無人島映画ですが、他の無人島映画では、恋愛やSF、ミステリー的な要素が含まれることが多いのですが、これほど現実的で洗練され、しかも無人島に流された孤独と絶望感、そして生きるのだという人間の強い本性が真に迫ってくるものはありません。孤島映画としては間違いなく最優秀作品だと思います。

例えば主人公役のトム・ハンクス。最初に登場するときはお腹の周りの脂肪がかなりだぶついているどこにでもいる中年ビジネスマンの姿ですが、無人島でサバイバル生活をして数年後には、男なら誰でもうらやむようなムキムキの筋肉質で、引き締まった野生の肉体に変わっています。この主人公の役者魂を見るだけでも大いに価値があるというものです。

そしてなにげなく身近に存在する宅配のFedEx(フェデックス)や、スポーツ用品のウイルソン(Wilson)のボールなど、文明的なものと、絶海の孤島での原始的な生活との対比がとてもうまく表現されています。


最高の人生の見つけ方(The Bucket List)
2007年のアメリカ映画で、監督は「スタンド・バイ・ミー」「ミザリー」などのロブ・ライナー、主演は円熟した演技を見せるジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの両雄です。

原題の「The Bucket List」は直訳すれば「棺桶リスト」で、死ぬまでにやっておきたいことをリストにして紙に書いたものの意です。その内容が若くて元気な人ならばそれほど夢でもないことでしょうが、死を目前にした高齢者にはとうてい不可能と思われる、例えば「スカイダイビングをする」とか「ピラミッドの頂上に登る」「アフリカで狩りをする」など世界遺産を巡る旅の数々がユニークです。

とにかく主役の二人の掛け合いが面白い。金儲けしか興味がなく仕事一筋で裕福で傲慢で人種差別主義者の白人(これ以上ニコルソンに相応しい役があるでしょうか)と、家族思いで裕福とは言えないが真面目な黒人の自動車修理工(これ以上フリーマンに相応しい役があるでしょうか)が同じ病室で同じ病で死期も同じぐらいという設定があまりにも出来すぎのところはご愛敬でしょう。

死期を知らされたときの日本人とアメリカ人の感覚の違いがよくわかります。お祭り好きのアメリカ人の感覚は、この映画の主人公達と同様に、死期が知らされると最後に思いっきりバカ騒ぎをしたいと考える人が結構多そうです。それに対して日本人だと、ガックリきてグジグジと無為な日々をおくるか、せいぜい古い友人を訪ねるとか、家族と一緒に過ごすことしか思い浮かびません。

そして、ラストシーンでは、二人とも亡くなった後の宴の後の静けさ、祭りの後の静寂の中でのワンシーンがとても印象的で感動させられます。


プライベート・ライアン(Saving Private Ryan)
 
1998年のアメリカ映画で、監督はスティーヴン・スピルバーグ、主演はトム・ハンクスです。戦争映画は残虐だし、またアメリカが常に正義で勝利するというストーリーばかりで好きじゃないという人にも、この映画は別格として見てもらえると思います。

私はこの原作本を先に読んでいたので、ロードショーを観に行って映画の冒頭で兵士の墓が映し出されたときにウルウルきてしまいました。いえ、決して泣かせようという映画ではないのですが、結末まで知っていたのと、なぜ冒頭に兵士の墓が出てきたのかがわかっていただけに感涙してしまったわけです。それほど原作に忠実に映画は作られていました。

いわばこの映画はスピルバーグが心酔していた黒澤監督の「七人の侍」の第二次大戦版で、七人の侍のうち一番腕のたつ浪人剣士(モデルは宮本武蔵)の久蔵(宮口精二)を含め4人が村を救うために山賊と戦い、そして殺されてしまうことをあらかじめ知った上で、冒頭でリーダーの志村喬扮する勘兵衛に頼まれ、自分にとってはなんの益もない戦いに加わるシーンや、エンディング近くに映し出される4人の粗末な墓を見るかのようでした。

もちろん「七人の侍」や「七人の侍」をウエスタン映画にリメークした「荒野の七人」をまだ見ていない人はそちらもぜひどうぞ。


生きてこそ(Alive)
1993年のアメリカ映画で、監督は「アラクノフォビア」「コンゴ」などのフランク・マーシャル、主演は「恋人までの距離」「ガタカ」などに出演したイーサン・ホークです。決して心温まるという映画ではありませんが、実際に起きた航空機事故とその後苦難を乗り越えて救助されるまでの事実を元に製作された感動ものの映画です。

私がこの映画を見たのはある夏の日の二本立て上映の名画座でしたが、決して効き過ぎたクーラーのせいではなくずっと背筋が凍った状態でした。航空機事故で生存者がいるというのは珍しいことではありませんが、それが見渡す限り、険しい山々が連なる南米アンデス山脈の山中で、エンジンの故障で不時着した後、頼みの捜索隊にも発見されず、自力で生き延びるしかないという極限状態の人間の本能が垣間見ることができます。

そして食べられるものがまったくない荒れ野の山中で、生存者が生き延びるために決断したこととは?っていう重いテーマと、このまま待っていても救助される見込みはないと判断した主人公達がとった行動とは!?という死を覚悟して未来に向かっていく強い意志に勇気づけられます。

上記の「キャスト・アウェイ」のように食べ物はあるけれど、無人島にひとり残されるのと、誰にも発見されない場所で食べ物はないものの多くの仲間が周りにいるのとではどっちがいいか?って究極の選択でちょっと真剣に考えてみました。


ニュー・シネマ・パラダイス(Nuovo Cinema Paradiso)
1988年のイタリア映画で、監督は「海の上のピアニスト」などのジュゼッペ・トルナトーレ、主演は「エスピオナージ」「追想」などに出演したフィリップ・ノワレです。かなり有名な映画ですから映画ファンなら必ず一度は見ていると思われます。

第二次大戦中、イタリアのシチリア島にある村の教会と兼用の映画館で働いている映写技師と、映画に興味をもった少年とのふれあいと別れを情緒豊かに描いた映画で、バックに流れるエンニオ・モリコーネの音楽も一躍有名になりました。

教会に場所を借りて映画を上映している関係から、映画の中に出てくるラブシーンについては、時代背景を考えるとやむを得ないのでしょうが、教会の牧師たちの猛反対もあり、映写技師はやむなくそのシーンをカットをして上映をしています(ここ大事)。もちろん映画を見に来た村民からは、カットされた場面で大ブーイングがわき起こります。

やがて少年は成長して映画に関わる仕事をするようになり、映写技師の勧めでローマに出て、やがては映画監督として成功します。その間、映写技師との約束で一度も故郷には戻らずに必死で仕事を頑張ります。

そしてある日、映写技師が亡くなったことを知らされ、葬儀に参列するため何十年かぶりの故郷に帰ります。そこで映写技師の遺品として渡されたものは、、、と、映画好きなら二度三度とセリフを覚えるぐらいに見ておいて損はない映画なのです。


スティング(The Sting)
1973年のアメリカ映画で、監督は「明日に向って撃て!」や「ガープの世界」のジョージ・ロイ・ヒル、主演はポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのコンビです。

この映画は私が高校生の時にロードショーを見ましたが、映画の中に登場した、なぜか印象に残る古くて由緒がありそうなメリーゴーランドを、それから10数年後にアメリカのサンタモニカの桟橋で見るとは思いもしませんでした(今もあるかは不明)。

「古い映画はちょっと」と敬遠している人も、この映画をみると、この時代の映画を見直すきっかけになるのではないでしょうか。若い頃のポール・ニューマン(当時48歳)とロバート・レッドフォード(当時36歳)が、格好良くてほれぼれします。

いま日本ではジャニーズ系アイドルが主演する映画ばかりですが、これも見方によれば当時のアメリカの人気アイドル二人(ちょっと歳はいっていますが)のための映画だったのかも知れません。


グラン・トリノ(Gran Torino)
2008年のアメリカ映画で、監督、主演はクリント・イーストウッドです。クリント・イーストウッドが監督や主演する映画は初期の頃のウェスタンものから警察、恋愛、戦争ものまで概ね好意的にとらえていますが、中でもこの映画がグサッときました。

タイトルのグラン・トリノとはフォード製の1970年代の名車のことですが、日本車で例えると、箱スカGTR(PCG10)ってところでしょうか。マニアックで高価で、しかも乗る人を選ぶ伝説のクルマです。

しかしクルマのマニアが見て楽しめるという映画ではなく、仕事を引退して、時代に取り残され、家族にも敬遠される偏屈で頑固なジジイが主人公です。

この古いクルマだけには愛情を注ぎ込み、アメリカのクルマ産業が世界一華やかだった時代に青春を過ごした主人公が、廃れていく町や、近所の住人が東洋人や南米人に変貌していく状態を苦々しく思う日々を過ごしています。

そして高齢の白人アメリカ人としてはごく一般的な白人優位の人種差別主義で、周囲に増えつつある有色人種を忌み嫌う主人公も、ある事件をきっかけとして、そうした白人以外の人間としてのつながりの大切さに気づいていくというシンプルなストーリーです。

でもそれってあと10年もすれば、日本の全国各地どこにでも見られる風景かも知れませんね。そこの住人には、この映画の主人公ほどの許容力や正義感はないとしても。


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